こだわりの紫 (益井千絵子)
結局、私は何やっているんだろ?
「だって、益井さん以外はみんなあの神社出禁にされたんだよ!だから、益井さんがいく以外で誰があの神社でお守り買いに行くっていうのよ?」
そんなこと知ったことか!お前らが悪いんだろうが!
ときっぱり言ってやりたい!
がここでそれ言うと由利が何を言ってくるか判らんので、ここは断るならもう少し穏便に断りたい。
もしくは何等か条件を加えないとこの先ずっとなめられることになる。
「あのさ、人にものを頼むいうのにさ、お題もまず払わずに買ってこい言うのはなくない?」
「何よー!?先に金払えっての!?」
「そんなの後でもいいじゃない!」
「そうよー!私たちがそんなにも信じられないとでもいうの!?」
あーもう、思いっきり信じられません!
由利なんか、もうこの時点でお守り代踏み倒す気満々な態度がにじみ出てるし、多分、下手したら気分屋の香寿美だって払ってもないくせに「私、もう払ったもん!」とか全力で言い切りそうだ!
ホント、クラスの意地悪グループの闇は半端なく深い。
それに私の家の事情知っててそれ言ってるかしら?
ただでさえ大家族で、そんな他人のお守りをおごってあげれるほど裕福じゃないんですけどね。
「信じる信じないの前にそれは人としてのマナーなんじゃないの?
それすらできないから神社から出禁くらうんだよ!」
「なんですってぇー!!!?」
「千絵子のくせに生意気よっ!!」
「そうよそうよ!」
由利は私につかみかかってきた。
それでもやっぱり、由利たちだ。
普通の常識が通じない。
「そんなにも金ないなら、映理奈にでも頼んで貸してもらったら?あの子ならお金はいっぱい持っているだろうし、お守り代ぐらい余裕で貸してくれるんじゃない?」
といってみた。
「え?映理奈??」
「それはちょっと…。」
何この二人?大家族で貧乏な私には借金を踏み倒そうとするくせに、なぜか金だけは持っている映理奈には金を借りることすらできないわけだ。
まぁ、友人から金を借りるとなると友情が壊れるとかいうからね。友達に借りたくはないのだろう。私なら、映理奈みたいなわがままで面倒くさい女なんか友達でいたいとも思わんけどね。
「全部が全部、私に任せにしないで!」
「してないじゃん」
「警察にしてもそっくりさんにしても神子さんとこのおばあちゃんにしても全部が全部私が対応してたよね!!?あんたたちがまともに対応したことなんてあった!!?ないよね!!?」
「そんなこと…。」
そりゃ、一番ピンチだった時に由利が、急遽生贄に先生を差し出して何とか事なきを得たかもしれない。
でも、それもなんか違う気がする。
人一人殺しているのだ。
それで少しも心が痛まないのであれば、由利は人間じゃない。
「ないなんて言える!?由利!結局あんたがやらかしたことも全部丸く収めたのも私!何なら、あのままあんたを突き出してもよかったけど、今からまた言い直してくるか?」
「え…?」
「ちなみに私は警察には、嘘はいってはいないよ。」
「やめてよ…」
「もし、それで逆にあんたがこれ以上警察に嘘言ったら、私もあんたのことを売り返すからそのつもりで!」
そこまでいいきった。
その先どうなるかなんてわからないけど、もしここで由利が警察に余計なことを言った場合は今の言葉のまま、由利のことも警察に離すまでだ。
「ちょっとまってよ!」
私が行こうとした時に引き留めたのは香寿美だった。
「ごめん。何もやらなかったことも認めるし、お金も先に払うから、お守りだけは買ってきてくれないかな?」
だった。
「あのできれば二つ分で…。あ、もちろん二つ分のお金は払う。」
ん?二つ?
「まさかと思うけど…。」
「あ、あの…できれば…。」
「そこにいるあんたの連れの分とは言わないでしょうね?」
「え?」
「私、あんたならともかく、さんざん人を振り回しておいて、一言も謝罪もない奴の分までは買う気はないので。」
「ちがう。」
「じゃあ、リーダーの美知子にとか?私、美知子にも謝られてないよ。あくまで自分だけ毎回リーダーに媚びてまで恩売って、自分だけ立ち位置を良くしようという魂胆なら、私はあんたの分も買ってこないけど…。」
そうだ、だいたい香寿美はいろいろ要領よく立ち回ることがうまい。だから、このクラスの女子全体を牛耳っている美知子や雅とか強い者には半端なく媚びる。私は香寿美のこういうところが大嫌いなのである。
「違うよ。一応千絵子も納得いく人物だから、安心して。」
「誰よそれ?」
「星川君にも渡しておきたいの。」
「ん?」
「そこで私はお金を出す。そしてあなたが買ってくるということで、活躍は半々いう事にするから。悪い話ではないでしょ?」
「なるほど。OK。それなら納得。」
さすがに私も星川君の分までも考えてなかった。
まぁ私はどちらにしても経済的な面では、はなから見りなのでそういう余裕がある考えはできない。
「千絵子。ごめん。私も謝るから助けてほしい。」
ここで由利までもが謝ってきた。
「さすがにもう限界…」
だろうね。私もここまで気を確かにしていられるのも不思議なぐらいだ。
「判った」
まぁとりあえず私も今はお金はもっていないので。
「じゃあ、私もここで帰るよ。」
事にした。
「私が待てるのは明日まで。明日お昼ご飯食べて13時30分に買いに行く予定だから、それまでに何とかお守り代を用意してここに集合。お守り代一つにつき500円。それ以上ほしい場合はその数の値段分を持ってくること。それ以降は一切受け入れない。いいね。」
「うん」
一応、契約は成立した。
案の定、めんどくさい事になりそうだと思っていたけど、ホントに文句言ってきて、お守り代までふんだくろうと思っていたかもと考えると、この二人らしいなとも思えてしまう。
そして翌日――――――
私はお守りを買いに行くことになり…
売っていたのは神子さんのおばあちゃんだった。
だから多分、あの子たちは今日中に飼うのはまず無理だったであろう。
「お守り5つ」
結局由利の方も自分の好きな子を守りたいとかで、もう一つ増えてしまった。まぁお金だけはきちんと持ってきてくれたから、買うだけは買うけど。
と言ったら、神子さんのおばあちゃんはいろんな色のお守りとまんべんなく詰めようとするので。
「あ、すみません。全部紫でお願いできますか?」
おばあちゃんは訝し目な顔をして
「ん?おまえさんも紫かね?」
「え?」
「それも全部…。」
そりゃそうだよな。あまりにも色が偏り過ぎている。
それも他にピンクやオレンジや黄色や水色といった女の子が好みそうなかわいい色もあるのに若い女の子が全部紫を選ぶのはやっぱり不自然かもしれない。
それも心なしか、紫のお守りの列だけが少ない気がする。
「どういうことですか?」
「いや今日はなぜか知らないけど、お前さんと同じぐらいの年の女の子が午前中に3人ほど来てな。なぜかその子らも紫のお守りを買って行ったんだよ。」
「え?」
「確か一人で来た子と友達同士の二人連れが一組で、最初に来た一人で来た子は一つだけ
買って言ってな。二人連れの子は妙なことに、二人で二つずつ買っていったんだがな。」
それを聞いて私は頭の中は「なんだそれ!?」な状態だった。
「なんか妙な偶然もあるもんだの。」
神子さんのおばあちゃんは一つ一つお守りを包みながら、いろいろ言っていた。
「はいよ。あんたのおばあちゃんとの仲だ、おまけに清め塩も入れといたでな。」
「あ、ありがとうございます。」
うわ、いろいろ得したかもしれない。
おばあちゃんに感謝だ。
「…まぁそのお守りも気休めにしかならんだろうけど、まぁ大事になー。」
「あ、はい。」
神子さんのおばあちゃんの最期の言葉は引っかかったけど、とりあえず無事、お守りだけは手に入れたので良しとしよう。
鳥居を出た向こうには由利と香寿美が待っている。




