生贄と残されし者… (益井千絵子)
翌日
緊急的にうちのクラスは週末まで、学級閉鎖となった。
昨日のこともあり、私たち3人は事情徴収を受けることとなった。
結論を先に言うと担任の堀が死んだ。
それもいきなり教室で倒れてだ。
そこにいたのは私たち3人。
意識があった堀と最後に会話した者として。警察に呼ばれていた。
さすがに「そっくりさんをしてました」なんてこと言えなかった…。
言うまでもなく、「そっくりさんに生贄として堀先生を差し出しました」とも言えない…。
そんなこんなで何も言えない…。
私以外の二人の様子も見た感じだが、どちらも「だれかなんとかしてよ」とか「あんたが言ってよ」とな感じだった。
結局、誰も何も口を開かないでいた。
そのせいで何も進まない。
でもなんも話すことがないんだよなー。
あったとしても非現実的な事ばかりで、誰も信じないだろう。
「君たちは、遅くまで残っていたとのことだが、いったい教室で何をしていたのかね?」
問題はそこだ。
別に私が行ってもいいが他の子と話の辻褄が合わなかったら…
「…おしゃべりしてました。」
ようやく一歩進んだ。
まぁお喋りしていたなら、どうにかなりそうだ。
「おしゃべりねー・・・。」
警察も微妙な反応だった。
「じゃあ、堀先生と最後にお話しした内容って、何だったの?」
そこだ。
堀先生の最期は、はっきり言って正気ではなかった。
それも最後に由利が先生をさんざん煽ったせいで狂ったあげく死んでいったなんてこと言ったら、大変なことになるだろう。
私はもう全部由利のせいにして逃げたかったんだけど、もし仮にこのまま由利のせいにだけにしたとしても、あの口達者で嘘つきな由利だ。おそらく、私たちのどちらかのせいにするであろう。そしてそれはおそらくおおよそな確率で、普段仲がいい香寿美ではなく私になる可能性がかなりデカい。
そこを考えると安易にそんなことはできない。
そしてこの質問にもこの二人はなかなか何も答えない。
由利も由利でいつもなら、あることない事ポンポンと言葉が出てくるはずなのに、警察を目の前にするとさすがに黙ったままだ。
ホントこいつあてにならない!
かといってこのまま黙ったままだと、由利が先にまたあることない子と口走ってしまってもまた、こっちの立場がやばくなる。
仕方ない。
「私たちがおしゃべりに夢中になっていて、帰るのを忘れていた私たちに堀先生が呆れて怒ってしまってその…」
「堀先生と最後に会話した内容を聞いているんだが…。」
「ごめんなさい。堀先生怒っていたので、いろいろ言っていて、あまり覚えていないです。」
「あぁそういう意味か。」
そうです。親とか先生とか親とかが感情的になって怒るとやたらと長いセリフ言っているので、そんな説教のことなど一字一句全部覚えていられるほど、頭のいいガキなどほとんど稀です。
「そしたら、堀先生は倒れてしまって…。」
もう、ほとんどやけくそな感じで喋っていた。
由利はこんな時ばかりはうつむいて黙ったままだった。
なんなんだこの女!
自分より強い相手だとなんも言えなくなるのな!最低だ!
「まぁだいたい分かった。君たちもこれからは先生に怒られる前に早く帰るように。」
ようやく解放されることとなって私たちが部屋を出ようとしたとたん。
「主任、いいのですか?」
「まぁ、あの先生も昨日はいろいろあり過ぎて疲れていて、ああなったかもしれん…。」
「しかし…」
「まぁ、相手は子供だ…。」
という話が私の耳には最後に聞こえた。
この声が私よりも少し先に部屋を出た由利の耳にも入ってやしないか?もし、この会話を由利みたいな悪ガキが聞いたら、この先由利は警察までもなめてかかるという意味にもつながる。
私は、もうこれ以上由利とは関わりたくないなと思っていた。
でも、もう遅かった。
すべてが遅かったのだろうか?
私はすでに由利の世界にどっぷりつかっていた。
私はまた、由利に面倒くさい事を言い渡されることになるのであった…。




