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そっくりさんは怒ってます。 (神子三果)

私は情けないことにしばらく、泣いていた。


柳生君もしばらく黙って見守ってくれていた。

彼は常に奥宮さんの面倒まで見ているせいか、そういう見守り方もまた、うまかった。



「柳生君は時間大丈夫なの?」


「ああそのことなんだけど、もう少ししたら親が迎えに来るから、悪いけどそれまでここでかくまってくれないか?」


「え?いいけど?なんで?」


「実は俺、ここの近くの4軒茶屋のおばちゃんに目をつけられてしまってな。あまり、関わりたくないというか、その…。」


「ああ」



この事はすぐにわかった。

そういえば今日は朝早くから、なぜか柳生君のことで近所のご婦人たちの話題が大盛り上がりだったこと。

そりゃそんな中で見つかったら大変なことになるわ。


「本来なら、しばらくここに来なければいいと思っていたのだが、家に帰って風呂入ろうとしたら、いきなりお守りが黒くなりかけていてな。」


まぁそんなとこだろう。



「でも今一番の問題は、そこで寝ているあれのことだが…。」


あれ呼ばわりか…


「仕方ない、俺が親に頼んで一緒に連れてくわ。」


「ほんと?お願いできる?」


「あと悪いんだが、こいつが乗ってきた自転車も預かってくれるとありがたい。さすがに自転車まではもっていけない。」


「ああうん。」


「ほんとに最近こいつ、この時間になるといつもいきなり眠りだすのだよなー。」


ん?


「起こさないの?」


「ああ前に一度、起こして連れて帰ろうとしたのだが、それだと余計にめんどくさい事が起きてな。なんか人格が変わってしまったかのように、いきなり下品に笑いだしたり、無駄に悲鳴上げたり、いつもなら絶対言わない様な暴言はきまくりだったりで、こいつ抑えるのにホントに苦労したから、なるべく起こさないようにしてるんだ。」


「えぇ!それって!?」


「心配するな。奥宮ぐらいの体形なら、余裕で担げるからよ。」



「いやそうじゃなくてさ、まさかと思うけど、昨日もこの子と一緒にいてこんな状態じゃなかった?」


「ん?なんでそれを!?」


まぁそりゃそうだ。

昨日のことをいきなり言い当てられたのだから、この反応は妥当だ。


「確かに昨日千賀の家に行ったとき、知らん間に奥宮が寝てしまったがそれがどうした?」


「やっぱりそうなの!?それ多分、そっくりさんのせいだわ!」



「はぁ!?」


あ、まずい。

多分この男、私みたいな存在を知らなければ、そういうの全く信じないタイプだっけ?


「そっくりさんって、あの占いみたいな奴か!?」


「そう。」


「なんかよく知らんが、女子からそんな話チラホラ聞くよな。確かちょっと前、近松もそれ教室で自習時間にやってたあれか?」


「そそ、そのそっくりさん。」


ああ救いようがあるようで一応、この話もまともに聞いてくれそうだ。


「実は多分なんだけど、奥宮さんが眠ってしまった頃に、昨日ここでクラスの女子の半分ぐらいが集まってそっくりさんしていたのね。」



「なんだって?」



「それで昨日益井さん曰く、奥宮さんのそっくりさんを呼び出したら、ここで大パニックになってしまってたいへんだったのよ。」


「って、益井また懲りもせず、奥宮のこと突いたのかよ!?

それに昨日、いきなりこの辺にワープしてしまって、結構大人数の女子がこの辺で悲鳴上げながら走っていたけど、原因それかよ!」


彼は滅茶苦茶怒っていた。


「いや、益井さんはあの中でも一生懸命止めていたんだよ。他の子はどうであれ、あの子の事だけは責めないであげて。」


このままだと柳生君は益井さんのことを滅茶苦茶責めそうな気がしたので、それは一応阻止しておいてだ。


問題は


「あと、それを見たのなら話は早い。まさか、ここにいた人間と場所が入れ替わっていたなんてな…。


まぁとにかく、昨日のそっくりさんの会場はここだったんだよ。それで、パニックになった時に呼び出されていたのは奥宮さん。


それで、その時間帯には奥宮さんが眠っていた時間と一致してるとなると、奥宮さん相当やばいよ。」


「言ってることが意味判らないのだが?」


「そっくりさんとして呼ばれている間、意識が飛んでるいう事だよ。だから、奥宮さんはいきなり眠っていることが多くなっているわけ」


「それホントなんか?」


「多分だけど、奥宮さん。いろんな人から呼ばれっぱなしだったんだろうね。だからもう、疲れちゃって、いきなり眠ってしまうんだろうね。」


「確かに以前は、いきなり寝てしまう言う事はなかったな。」


そうなるとナルコレプシーとかいう眠りの病気でもなさそうだ。


「おそらく、この子自分がそっくりさんで呼び出されることだけで、かなり怒っているよ。何より誰かに占われている間、正気を保っていられないとなると、この子の命もやばいよ。


はっきり言うが、あのクラスほぼ全員呪われているようなものだ。」


「なぬ?」


さすがに柳生君でも、驚きは隠せれなかったようだ。

まぁそうだわな。

いくら自分は、その中でも微妙に守られてる存在であっても、やっぱりいい気分はしないだろうな。


「どうすればいいんだ!?」


まぁそう聞くだろうことは想定してはいたが…、


「どうすることもできないね」


「!!!」


「みんなが奥宮さんのそっくりさんを呼び出さないようにするしかないだろうね。


そして、どうしても奥宮さんのことで知りたいことがあるなら、それは奥宮さん本人に直接聞くしかないと思う。」


「つまりは、クラスの連中にはもうそっくりさんはやめろと説得すればいいのか?」



「まぁ一番簡単なのはそれだけど、無理だろうね。

この先も絶対に誰かが破ると思っていい。」


「そんなことないだろ…」


「通常の人間は君とは違って、強い精神力を身に着けている者ばかりではない。決まりさえ破らなければいいと決めても人間言う生き物は決まりを破ってしまう生き物だ。」




「いったいお前ら女子は、そうまでして奥宮の何が知りたい言うんだ!?」



そう、その謎こそが彼女を怒らせている原因なのであった。

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