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大暴走だ!そっくりさん! (益井千絵子)

「なんてことしてくれるのよ!!?」


結局そっくりさんを怒らせてしまった。


「えーだってさー、他におもしろい話題ないしー。」



今回おもしろいとかそういう理由でしているわけではない。

あくまで昨日のそっくりさんの暴走を止めるためにしているのだ。


それも私は巻き込まれた身でほとんど関係ないのに、無理やり参加しているだけなのだ。


ホントにこの連中と付き合っていると自分のことしか考えていない事ばかりで疲れてくる。

だから関わりたくないんだ。


なんで私の帰宅通学班はまともなメンツがいないんだろ?


まぁその答えは、帰宅班の一番学区外れにあるスラム街というか、いかがわしい風俗街が原因なのだけど、それにしてもひどいのを超えている。

ついでいうと、そこ付近を囲んでいる町内に住む者もそちらに影響されて、そこの町内もおかしくなっているのは確かだ。


由利もまさにそこの住民だったりする。本人曰く一番学校よりに住んでいるから、映理奈よりかはほとんど関係ないとのことだが、一般市民目線やっぱり納得がいかないものある。



仕方がない。



「もう由利は余計なこと言わないで!」


「え?なによ!?」


「私がやる!」


もう由利も知らん。


「そっくりさん大変失礼なことを質問してしまって申し訳ございませんでした。これからはまじめにやりますので私だけでもお許しください。」


とまで言ってしまったが後悔はない。



そしたら



「ちょっと!私だって一応協力してるのよ!私もお願いします!」



と香寿美も私に続いてそういいだした。



「何よ!?あんたたちずるい!!私のことはどうでもいいわけ!?」」


由利は身勝手にも、自分がしたことなど全く反省もせず、まだ自分だけでも助かろうと図々しいこと言っている。


まぁそんなことを無視して私は質問を続ける。



「そっくりさんそっくりさん。あなたはなぜ怒っているのですか?」



そう。まずそれだ。


そこから話を聞かない事には、おそらくそっくりさんは「許さない」を連発するだけで、何も進まないだろう。


人を落ち着かせるにはまず、話を聞くこと。


これは私が大家族にいる中から、学んだこと。

まともに話すら聞かないで放置していると、いろいろこじれてしまって余計に面倒くさくなる。



「さ き の し つ も ん を に ど と す る な」



「…えと……さっきの質問を二度とするなと読めばいいのかな?」


香寿美も私もそう解釈した。


そしたらそっくりさんは香寿美の声に感応したのか「はい」と書いてあるほうに指が動いた。



「え――――っ!つまんないのー。」




また由利が余計なことを言ったから、


「シッ!由利はもう黙ってっ!」


これ以上由利が原因で振り回されるのはごめんだ。




そう思っていた時だった。



「じゃあ今日はいてるパンツの色は?」



「由利っ!!やっめてっ!!」


といった時には遅かった。

すでに指が動いていた。



「し ろ」



と…。


「へぇーおもしろいー。好きな人の質問はNGでもパンツの色の質問はOKなんだぁー。ぎゃははははは―――っ!!」


この質問には香寿美までが笑っていた。

これに関しては…香理…あんたさ……と逆にかおりのことを呆れてしまった。



「まぁさ、そう重く考えずにさ。いつも通り気を楽にしておこうよ。」


「由利…」


「なんかそうでないとやってられなくてさ。」



まぁ私もさっきまで失敗したら後はないとばかり考えていた。

ものは考えようだったか…


今日はずっとピリピリしてたけど、由利のこの一言で救われた。



「そっくりさん、そっくりさん。私たちを許してくれますか?」


コインは「いいえ」の方に動いた。



「なんか、やっぱり変なこと聞くべきではなかったみたいね…。」


さすがに今度ばかりは由利まで反省していた。

「そっくりさん、そっくりさん。なにが気にいらなかったのですか?」


また指は動く


「ぜ ん ぶ そ ろ つ て な い」



とのことだ。



「つまり、あの時のメンツ全員揃えないとだめ言うこと?」


「三日以内は無理やん…。」


そうなると、やはり無理がある。


里奈は病院に搬送されてしまってしばらくは退院できないだろうし、それに今日休んだメンツはまさに昨日の今日に裏切りしてズル休みした信用できない奴ばかりだし…。

昨日のメンツを全員揃えるとなると到底無理がある…。



「そっくりさんそっくりさん。昨日いた仲間が、しばらくそろいそうもありません。それなら期限をもう少し延長してくれませんか?」


そのといにはあっさり「はい」とでた。


どれだけかまってもらいたいんだ?お前?と内心思っていたが、余計なことを言わず、


でもこのままだと、いつ全員そろうかもわからない。


それまでにそっくりさんもこの事を忘れてくれると助かるのだが…。


“そ れ は ぜ つ た い だ”



そんなことを思っていたら、いきなり指がそう動いた。


“ま す い ち え こ”



え――――っ!!?


いきなり名指しされてしまった。


「…何でよ…?」


「千絵子、あんた、名指しされてるよー。どうするの!?」


もうこうなりゃやけだ!

私はそっくりさんに自分の名前を名指しまでされてしまい、もう冷静ではいられなくなっていた。


「そっくりさん。私に何か恨みでもありますか?」



そして指は「はい」の方に動き出す。



「きゃはははははー。あるってよー。香理にまで恨まれてやんの。」


由利に思いっきり笑われてしまい、なんかマジむかついたので、



「そっくりさんそっくりさん、あなたは水野由利にも恨みはありますか?」



そしてコインは「はい」のところをすごい勢いでぐるぐると回りだす。



「何これ?どういう事?」


「由利の方が、私よりも恨んでるいう事じゃない?」


と私は、ここぞとばかり由利に言い返してやった。



「じゃあ香寿美は?」



と言って少しは収まるかと思ったが、前より勢いを増して「はい」の周りをぐるぐると回りだした。



「イヤーーーーーーーーーっ!!!」



教室中に香寿美の叫び声が響き渡る。

いやもうすでにこのフロア全体に響き渡っているかもしれない。




ああまたこう言うオチか、もしこのまま誰か一人でも離してしまったら、またダメになるかもしれない。


仕方ない。



「そっくりさん。ひとまず止まってください。」



一応思いつくままにそっくりさんに言うだけ言ってみたが、「いいえ」の方へ指が動き、



さっぱりコインは止まってくれなかった。


今度は思いっきり「いいえ」の周りをぐるぐる回っている


そして今度は…


“き ず き り な”



「え?」



この「え?」という言葉は3人ともほぼ同時に発していた。



“み た い な”



とつながり、わたしはそこで「築里奈みたいになりたいのか?」という言葉につながりそうになった。



「それはイヤーーーーーーっ!」



どうやら香寿美もそう思ったらしく、香寿美はすでに正気ではいられないような気がしてきた。


「私里奈みたいになるのはイヤーーーーーっ!!」



「だったら、絶対に離さないで!」



ほんとそれだ。



でもこの状況だと難しいぞ。




一瞬でもコインから目を離してしまったばかりに、もうコインは何言ってるのか?さっぱりわからなくなっていた。

とにかくコインは高速に動きまくっていてなかなか止まらない。


香寿美は相変わらず悲鳴ばかりあげているし、一番落ち着いていたはずの由利ももう目から涙が止まらない状態であった。



もうこうなったらやけだ。


「そっくりさんそっくりさん。どうしたら私たちだけでも助かりますか?」


もう私だけでもいいから助かろうと思っていたが、ようやく由利も心を改めてくれたようなので一応は由利も含めて何とかすることにした。


そしたらコインの動きは急にゆっくりになって




“む ら さ き の お ま も り”




と意味がはっきりと分かるようになっていた。



「紫のお守り?」


紫のお守りってなんだろう?


「それを身に着ければいいのかな?」


そういわれてそう思うしかなかった。


「っエグッ…。っヒック…ほんと…?」


由利は涙ながらにようやく口を開いた。

香寿美はすっと止まらなかった震えもようやく止まってきた。



「どうかよく判らないけど、お守りを奨めている…」




そしていきなり、そっくりさんはそこからしばらく何も動かなくなってしまった。



「大人しくはなったね」



私たちはこの空白の時間をホントにしばらく待たないといけない気がした。



そして…


“こ れ は わ た し た ち だ け の ひ み つ”


「了解です。そっくりさん。」



さらに



“ほ か に ば ら し た ら た す け て あ げ ら れ な い”



という恐ろしいことまで言ってきた。


「判りました。ありがとうございました。」

「っヒック…そっくりさんやさいいです…。」



そしてそのあとが問題だった。




次にコインが動いたとき、マジで凍った。



“い け に え”


「え!!?」


その言葉には誰もが冷静ではいられなかった。


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