こんな時にボーナスポイント (奥宮香理)
救急車の周りには人がすでにいっぱい来ていた。
「これ以上前にはこないで!」
とか
「教室に帰ってください!」
教師たちは児童たちを救急車付近に近づけないように必死だった。
なにぶん、昼放課という児童たちの自由時間に急遽救急車を呼ぶことになってしまったので、野次馬を抑えるのにたいへんそうだった。
私もできれば教室に帰りたいのだが、教室に行けば多分またあのブタどもと対峙しないといけないと思うと、帰るに帰れない。
「おいおい誰だよ?」
「6年だとよ」
てことはやっぱり小津が…?
やばい…かも…。
そして教師たちはめんどくさいと思ったのか?
「みんな教室に戻りなさい!」
後から出てきた教頭先生がメガホンスピーカーいいだしたとたん。
ほかのきょうしも
「教室にもどりなさい!」
の一点張りで、私たち児童はその場を去るしかなかった。
とにかく運ばれていくのは6年だということは判った。
やっぱり小津かな?
と思っていたら、
「なんか二人もいるそうだよー」
「うわーこわーっ」
「誰だったんだ?」
え?二人って?誰なんだ?
一人は小津いう事は判るけど、もう一人は誰になるんだ?
「俺ちらっと見えたけど、顔をタオルで隠されていて、まるで死んだ人みたいで怖かったー。」
「え?マジ?死んでたとか?」
私はその話を聞いて、さすがにぎくっとした。
「いや、生きてはいたみたいだよー。血もついてたから怪我してただけでー。」
生きてはいたと聞いて少しはホッとした。
「にしてもむごいよなー。」
間近で見ていたのは4年生たち。
詳細聞きたいけど、全然知らない子なので聞くに聞けなかった。
むしろ知ってる子の方が私は元から嫌われているので余計に聞きにくいが、さすがにこんな不謹慎なことやっぱり誰にも聞けない。
―――――― 一応教室に戻った。
なんかいろいろ責められることは覚悟して言ったら、またさらに教室の中は人が減っていた。
小津は当然のごとくいないだろうなと予想はついたが、嶋田までもがいなかった。
まさかと思うが、先ほどの救急車に付き添いでついていったのだろうか?
そしてそれに付け加え、女子の数が異様に減っていた。
そんな中、真穂がまだ残っていたことは、私には救いだった。
そして、私の机の中にあったと思われる教科書やノート筆入れは、あの時荒らされたまま放置されていた。
それを見た私の前の席である近松の側近である福田寛也が
「きったねぇなー!お前元から汚いけど、片付けすらまともにできないほどきたねぇ奴なんかよー!」
「そうだそうだー」
といつもの仲間と言いたい放題言ってきた。
もう、こんなにも人がいないならいっそ学級閉鎖にすればいいのに…。
とさえ考えていた時だった。
“ガラっ”
そこへ入ってきたのは代行と思われるかなり年配の先生が入ってきた。
今日は確か教頭先生が代行でこのクラスに入ることとは聞いていたが、
「席について。」
と先生の声と共にみんな各自の席に戻りだす。
「えっと君は…。」
一応、その先生は私に何か言いたげだ。
多分先生が言いたいことは
「すみません。戻ったらなぜか私の私物がこうなっていたので。」
「ああそうなのか、それは災難だったね。一応、君は片付けながらでもいいから、話は聞いてほしい。」
「はい」
どうせ先生は毎度そう言う対応だ。
とりあえず、小津の件では私が責められるとは覚悟したが、この先生はそんなことよりも私の席の周りに散らばった私の私物のことが気になっただけという事なら、ひとまず安心した。
「今日は校長先生が不在のため、教頭先生がこのクラスを受け持つ予定でしたが、その教頭先生までもが今、緊急にお仕事ができてしまったため、私が受け持つことになりました。教務の吉川です。」
ああ、教頭先生に続く偉い先生か。
「本来なら、このクラスを緊急学級閉鎖にしたい…」
「よっしゃーーーーっ!!」
と叫んだ子もいたが、
「…ところですが、今いないお友達のほとんどの子は、教頭先生とお話をしているだけの子もいるため、そこまでする必要はないとのことでした。」
「えぇ―――――…」
一瞬テンションが上がったが、吉川先生のこの一言でまた下がっていった。
そして次の吉川先生の発言が私にとってかなり重要な事であった。
「実は先ほど、救急車で運ばれた子がいたのですが、今そのことで話し合っているところだったりします。」
そしてこの時、心なしか吉川先生は私の方をチラっと見た。
少しドキッとした時、
「それでどうなったんですか?」
と誰かが質問した。
「それがなぜか話は、いろいろかみ合わなくて、かなり難航していてね。
まぁ何があったのかは、またお話合いが解決した後で説明されると思うから、それまで待っててくれるかな?」
それの情報は今、私が一番知りたいぐらいである。
やっぱり、私と誰かが入れ替わったせいで、話がおかしくなっているんだろうな。
さすがの嶋田もそれは見逃さなかったのだろうか?つまりは話がさっぱり合わないのはそういう事になる。
そして、私たちには…
「ええっとそこで申し訳ないのですが…、」
また更にイヤな予感がした。
「担任の堀先生よりの連絡で、今日のこの残りの時間を使って、抜き打ちテストをしてほしいとのこと。」
「ええ―――――――――――!!?」
「なんだよそれ―――――!!?」
とみんな不満たらたらだった。
ああ、やっぱり堀先生らしいよなー。こういう時は決まってテストだ。
「ただし!」
「今回のテストは受けた子には点数が取れただけ、次回の成績にボーナスポイントが付くという特権が与えられるとのことだから、挽回のチャンスらしいので、がんばってくださいとのことでした。」
なるほど。
それならまだ納得がいく。
それを聞いたとたん、さすがに全員黙った。
「あっと、君はもう片付けは終わったかね?」
吉川先生はその確認だけを私にする。
「はい。」
「では一応、4教科もあるので、早速始める」
そこで手をあげたのが
「あの先生。」
優等生の山浦淑恵だ。
「この後から来る予定の人たちは、どうなるんですか?」
「ああそのことか、とりあえず問題を起こさずにその場にいる子だけ限定ボーナスポイントだから、戻り次第にその子らにもうけさせる予定だ。ただし、受けなかった分のポイントはつかないとのことだ。」
そこまで詳しい設定か。
「他になんか質問ないかね?ないなら始める。」
誰も質問はないらしい。
こうして、いろいろあった中いきなり抜き打ちテストを行うことになった。




