問題!矛盾点をつなげろ!(柳生孝昌)
さて、こまった。
実は昨日のことは何一つ解決していない。
一緒にワープしたと思われる奥宮に聞いてみても、奥宮は何も記憶がないとかいうので、結局一人で抱える問題となってしまった。
柳生孝昌は昨日からずっとそのことばかりを考えていた。
自分だけ記憶がないってなんだよ!?それ!?
と思ったが、奥宮に記憶がないものはないだから仕方がない。
とりあえずまぁ、昨日偶然にも出くわしてしまった近松にも木田たちにも、巽や千賀にも矛盾がないような話を、前もって作っておかないとやばい気はしていた。
とりあえず木田たちのことはあれでひとまず何とかなった。
一応、女がらみのことでじいちゃんから怒られることは免れた。
巽や千賀にもあれから、奥宮を送って行った時にいきなり奥宮が変な方向に走っていったので、神社あたりまで追いかけていったといえばそっちは辻褄が合う。
一番の問題は近松に顔を見られてしまったという問題だ。
それもあの時意識はなかったとはいえ、奥宮は近松のことをボコボコにしてひどいけがを負わせてしまった。その挙句に俺たちはいきなり全然違うところにワープしてしまって、結果的に近松をそのまま放置して逃げたことになってしまった。
後で聞いた話によれば、
昨日の夕方、町内で傷だらけの少年が救急車で運ばれていったという話を聞いた。
つまりはだ。
近松を殴って怪我をさせて逃げたという罪はまだ消えてない言う事になる。
でもってまだギリギリ顔を見られていなかったと思われる奥宮はどうであれ、俺はもろに近松からあの場所で顔を見られている。近松が、あの時俺がいたことを警察に話されることだってあるのだ。で俺は全然違う場所で、ほとんど同じ時間ぐらいにそれぞれ目撃されているわけで、その矛盾をどううまくつなぎ合わせていけばいいのか?今必死で考えている。
そんな時だった。
ガラ
教頭先生が教室に入ってきた。
「柳生孝昌君っているかな?ちょっと校長室に来てほしいんだが…。」
やっぱり来た…。
想定していたとおりかもしれない。
まだしっかりと考えもまとまってないのに。ついてない。
とりあえず余計なことはしゃべらずにいるスタンスで行こう。
ここで変に拒否したら余計に怪しまれる。
俺はすっと席を立って教頭先生についていった。
校長室にたどり着けば案の定警察が来ていた。
そして歳の頃なら、40歳前後ぐらいの女性もそこにいた。
「君が柳生孝昌君だね。私は高城警察署の野田で、こちらは近松直也君のお母様だ。」
「ども、はじめまして。」
相手からも一応、自己紹介されたので俺も一応挨拶だけはした。
「実は昨日君が住んでいる町内で、事件があったことを知っているかね?」
「はい」
俺は一応余計なことを言わず返事だけはしておいた。
確か刑事ドラマによると、こういう事情聴取うというものは、この時点では余計なことは言わずにかまをかけるという場面はよく見ている。
「そうか、君もその近くに住んでいるとのことだが、その時間、君は自宅にいたのかね?」
と聞かれた。
これは困ったいたといえばいたのだが、ここはいったいどう説明すればいいのだか…。
これ選択間違えるとまずいことになるし、かといっていつまでも答えないのはダメだと思う。
だからここは…。
「その時間って何時ごろでしたか?」
話を聞いていて判らないことを聞くに限る。
確かあの時ぐらいは、どこにも時計とかがなくて、あの時の時間がいつ頃だったかまでは判らないし思い出せない。
ここは質問に質問で返して時間稼ぎしよう。
「えっと…確か夕方6時20分ごろかな。」
野田は自分が今までまとめた資料を見て答えた。
そんな時間だったのか…。
昨日、奥宮を送って行って、俺がようやく家に帰れたのが7時30分を回っていた。
やべぇその時間がいつ頃か思い出せない。
でも一つだけ、正直にはっきり言えることはある。
「その時間は家にいなかったですね。」
それは事実だ。
でもこれで疑われたらどうする?
なんか余計なこと言ってしまいそうで怖い。
「じゃあ君はその時どこにいたんだね?」
ああこまった。完全につまったぞこれ…。
「お願い答えて。昨日うちの子が怪我した時、あなたのことを近くで見かけたと言っているの!」
「お母さん落ち着いて!」
やっぱりな…近松はあの時のことは完全に覚えていた。
そうなるとだ。
俺が近松をやってないにしても、俺の連れがやったということは覚えているわけで…。
そうなるとこいつらが聞きだしたいのは、俺の連れが誰なのか?という事と、なんで俺は放置したか?ということになる。
だから、俺はその時どこにいて何をしていたかについてを聞き出したいというのは判った。
もうホントめんどくさいから、このまま神社の近くにいたことにしてだ。(実際いたんだし)
木田たちにアリバイ証明してもらうという手が一番手っ取り早い。しかし、そうなると「なんで俺と奥宮がそんな普段はいきそうにもない遠い場所にいたか?」ということを問い詰められるかもしれない。そう言い訳するとなるとやはり、そこは全部奥宮がいきなり逃げたというせいにするのが妥当なんだが…。どちらにしても奥宮には記憶がないから、俺はそれでよくても奥宮がそのあとどうこたえるかもわからんのだ。
だからここは俺で食い止めるしかない。
とその時だった
「野田!」
誰かが部屋に入ってた。
どうやら他の警察の人らしい。
その警察官は野田という警察官に自分の資料を渡した。
野田はその資料を一通り目を通した後。
「なるほど…」
「柳生君…。君はもういっていいよ。」
「ん?」
「お母さん、これ息子さんの人違いだった言う事の線が大きいと出たよ。」
「え?」
「この子。その時間全然違うところで目撃したという人がいてね。」
ん?誰だそれ??
「子乃神社の近くにある「喫茶四軒茶屋」ってしっているかね?そこの四ツ谷さんが、朝から君のことで近所のゴミ捨て場でご婦人たちの話題になっていたらしい。」
「はぁ?」
「昨日の夕方ごろ、君はあのあたりにいたらしいね。」
「えぇまぁ…。」
まぁ確かにいたといえばいたので…。
助かった…。名前名乗っておいてよかった…。
「すごいことなのか知らんが、君は今、あのあたりのご婦人からのアイドルになってるよ」
なんかそれはうれしくないぞ…。
「あはは…それはどうも…。」
俺は必死で苦笑いをしてごまかした。
でも、俺のピンチを救ってくれた恩人でもあるから、これからも無碍にはできないよな…。
まぁ俺が当分あの辺りをうろつかなければいいだけで…。
「お時間取らせてすまなかったね。」
「いえ。」
俺は校長室を後にした。
なんか知らんがロクに喋らんでも助かった。
いやホント余計なことは言わなくてよかった。
そしてこの事件はあくまで近松の勘違いということで片が付いて、それっきり警察は俺に何も言ってこなくなった。
まさかこの歳で、警察から事情聴取を受けることになるとは思わなんだよ…。




