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こっちにだって事情がある


そして放課後の帰り道




「でさ―千絵子さー。香理の好きなの誰だって?」


益井千恵子が帰る6年4組女子西門帰宅班のメンツでは、早速この話で盛り上がろうとしていた。






西門から返るのは、よりにもよって意地悪グループのリーダー尾高美知子、そこのメンツある水野由利、樹 映理奈がいてかなり強烈なメンバーだったりする。ほかにも高須 雅、杉村規世、木田奈江といった体育会系の子もいるが木田以外は部活動があるため一緒には帰らない。


で、同じグループの香理と真穂は違う門から帰るグループなので、必然的にイヤなメンツで帰るはめになる。一回、香理に帰りのメンツの事を相談したことがあるが、香理もまた…


「私、同じ門から帰るクラスの女の子ね。黒島さんしかいないんだけど、家までほとんど半分以下の道のりだけでも、一緒に帰ってくれないんだよ。「危ないから一緒に帰らない?」と誘ったことあるんだけど、「(こんな奴と一緒に帰るぐらいなら…)」と言わんばかりな態度ですごい勢いで走って逃げられちゃった。ひどいと思わない?前に一緒のクラスだった、不二子ちゃんとは私よりもかなり短い距離でも一緒に帰っていたのにさぁ。」


まぁクラスのほとんどからいじめられているいじめられっ子と一緒に帰るのは、さすがに恥だと思っているんだろうな。確かにこんな奴と一緒にならんで帰るぐらいなら、不審者に目をつけられた方がマシってか?やっぱりその思考も確かにひどい。ていうかさ、香理の家の方角はほとんど同じクラスの人間がいないのだからさ誰も見てない帰りの時ぐらい、別に一緒に帰ってもそこまで問題はないはずなのに、さすがにそれはひどいよな。


そんなにまでしてスクールカースト底辺と一緒にされたくないって、どんだけ許容量が狭いんだか。だいたい黒島さんってクラスでもできがよくてしっかり者で運動神経だって一番じゃないにしても男子からも期待されるほどの実力者だ。そんな実力者でもクラスのいじめられっ子とは関わりたくないとすら、あからさまな態度でいるのだ。


じゃあ、私の場合は一緒に帰ってくれる存在がいるだけでマシってか?

やっぱりそれも違う。

毎日がこんな負のオーラがプンプンに臭っているいじわるメンツと一緒に帰ることだって絶対的に厳しいぞ。さすがにあの二人だってそのことは理解してくれたんだよなー。


真穂はどうかといえば、あの子は何もその件についてあまり詳しくは話さなかったけど、真穂はホント誰に対しても我関せずなところがあるから、良くも悪くも空気なんだろうなという想像はつく。ただ気になっていたことは…


「まぁ私も私で、香理さんとは逆でただ単に利用されてるだけ感はあるよ。誰とは言わんけど、正直あんな奴ならいらねぇ。」



と誰のこと言っているのだかよく判らないが、真穂も気になるようなことを言っていた。

まぁうちのグループのメンツはみんな各自、帰り道のメンツではいろいろ苦労を背負っている様子であることは伺える。


これを考えると自分と同じレベルの人間でないと友達になることですらできないという現実は突き付けられる。つまりはだ。私目線、思い通りにできるのはせいぜい香理ぐらいであることだ。香理には悪いとは思っているが、私もここで生きていくため、香理に攻撃する選択しか残されてないわけで。いつもは同じグループでつるんでいるとはいえ、そのコミニティを少し離れると裏切る側とならざるえないのだ。



そんなわけでこの場にいるのは、美知子、由利、映理奈、奈江、そして、私…千絵子の5人。


ホントに一緒にいるだけで、毎回骨をおる相手ばかりだ。


「んー…、あのさ、やっぱりあの子全然口を割らないよー。」


と重い口をようやく開いた。

ホントこのグループは一緒にいるだけで疲れる。


「えーつまんなー」

「てか、千絵子押しが足りないんだよー。」


「なんであんなトロくさそうな子に手間取ってるの!?」

「そうよそうよ。」

「あんな子、押せば何とかなるわよー」


相変わらず、美知子や奈江はいいかげんなアドバイスをしてくる。

押せばどうにかなるとか言ってるけどさ、どうにもならないんだよーと言いたい。

私だって知りたいし困っているのだ。全部私ばかりに押し付けないでほしい。


「じゃあさ、そんなに言うなら由利が聞いてこれば?」


「えーそれは…。」


そう、この間は由利が必死で煽りまくったんだけど、結局何も言わなかったらしい。


「私は、あの子ととくに接点ないし、やっぱりここは千絵子があってるんじゃないかなー」


結局。私に押し付けてくる。


でもそろそろだ…


「あ、私ここで曲がるから、じゃあ」


と言って曲がって自分の家に行こうとした時だった。



「あ、ちえこ。」


ここで美知子の呼ぶ声がした。思えばここで振り返らなければよかった。



「あのさ、今日千絵子も三果の家で遊ばない?」


「え?」


ああ、これ以上こいつらと関わりたくないんだけどなー。三果って?同じクラスの神子さんっていう神社の子だよな。まぁだいたい集まる家ってあの神社だけどさー。あの家は広いし、毎回お菓子まで出してくれるから、誰の家よりも居心地はいい。彼女の家はクラスメートのたまり場になっている。



かといって


「あ、ごめん無理。今日弟たちの面倒見ないといけないからさー…。」


その誘いに乗るわけにはいかない。

絶対に断りたかった。

どうせ集まっても、香理や真穂の悪口ばかりだもん。こいつら、他の子の悪口も言ってるし、その場にいなけりゃ仲間の悪口までいてる有様。話す話題は男のことと他人の悪口だけで、マジで話つまらんのだよなー。


「あんたに断る権利があると思うわけ!?」


「え?」


「今日断ったらどうなるか判ってるわよねー!?」



ああまた、断り切れなさそう…。どうしよう…。


「ほんと、弟たち見ないといけないから、困るんだわー。」


まぁ自分がそこまで背負うことはないかもだけど、弟5人妹二人いる大家族であることは事実なんで、そういう事情は分かってもらいたいものだ。

でも…私だってこれ以上イヤな思いはしたくない…。


「じゃあ、少しでもいいから来なさいよー。判ったわねー!」


といつもどおり強引に言われた。

まぁ今日行かなかったとしても、別に大したことないだろうけど、後々めんどうくさくなるから、数分だけ顔を出すことにしますかー。



しかし


という決断をここではしていた。



そしてこれがのちにとんでもない間違えであったのだった。

何が何でもこの誘いだけは断るべきだったと後悔する未来は近づいていた。


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