小6なんて、誰もがガキだ。
ああ、俺はいったい何してるんだろ?
友人宅でいきなり眠りについてしまった同い年の女子を背負って送っていくなんて、普通はやらない。柳生孝昌は幼馴染の奥宮香理を背中に負ぶって、彼女を家まで送ろうとしていた。
大人たちにこいつのことはサポートすると約束してしまったものの、俺だってまだ小6のガキ。はっきり言ってそんな余裕はない。
正直、いつも近くに巽がいるから、何とか保っているようなものだ。
そうでもなければ、幼い時から武道の道を嗜んでいる俺でもさすがに壊れていたであろう。
それにしてもまぁよく寝っていることで…。
相当疲れてるんだろうな。あんな日々の日常だから。
俺も自分をこいつに変換してものを考えたことは何度かあるが、確かに家では親からの怒りの沸点におびえ、兄弟からはバカにされ、祖父母からは過度な期待をかけられていると聞く。で学校では男どもからはバイキン扱いされて人間扱いされてない状態で、女子からはほぼ毎日誰かが日替わりで「クラスの男子の誰が好き?」という話題ばかりふられ、ホント板挟み状態な生活を送っている。それがまた、普段は仲がいいはずの益井千恵子ですらその話題を振る常習者だというのだから、そこはホントにつらい思う。益井にはホントに仲のいい友達なら、そこのところぐらいは察してやれやと思うんだけどなー。それにおそらくなよそうだが、もしここで奥宮が不登校にでもなって、奥宮が学校に来なくなれば、次の標的はお前なんだぞ!それ判っててやってるのか!?と言いたい。でもまぁそんなことすら考えることすらできない益井相手にそれをいちいち指摘するのも親切過ぎると思っているんで、結局はいわないでいる。
いろんなことを踏まえて考えろと誰に対しても思うが、それができる奴はやっぱりこの年齢ではかなり少ない。今おぶっている奥宮、巽と千賀はまだ比較的少しはそれができる方ではあるが、俺が知る限りだとおそらくこのクラスでそれができる奴といえば、黒島美由貴と高須雅、男子で行けば都道健三なら、辛うじてできるとは思う。
ただ都道はまぁこの中で一番できないにしても、結果的にはまだ一番マシな方だ。黒島はそれができても自分にとってメリットがあることでしか絶対に動かないし、高須は周りの空気に合わせすぎる点が大きな欠点なので、場合によっては場の空気が最悪と化すことだってある。
かといって俺かて、そんなに出来る訳ではないと思うし、何より限界はある。どうしたら、このクラスを平和にして、今俺が背負っている奥宮香理の問題を解決していくかなんてこと、やっぱり俺にはできないとは思う。
それに何よりもの疑問が、この奥宮香理いう奴はホント何をやってもまともにできない奴で、俺ですらホント救いようがないほどなのだ。なんでここまで何をやらせても何もできないんだろ?ここまで何もできない奴を見たことがないぐらいホント何もできないのだ。
今、通っている茶道教室でもそう。あいつはふくさ一つさばけるようになるまでに半年以上もかかった。ホント何を覚えるにしても牛歩なのだ。
算数の問題解くにしてもだ。今の年で、全国でも有名な育文塾に去年から通いだしたのだ。そこで幼稚園児レベルの算数からやり直して、やっと今、6年生の算数のテストで50点前後の点数が取れるようになったぐらいなのだ。ホントに俺からするとあきれてものが言えないぐらいなレベルだ。
もう、俺とこいつは兄と妹というみたいな関係どころではない。ここまでくるとまるで親子だ。あいつの親が全くあてにならないから、まるで俺は12歳で父親になってしまった気分である。
それでも俺が教えている護身術と武道はまじめに取り組んでくれるので、見捨てず何とかいる。
それにこいつ、他の女子よりかは人格的にはそこまで悪くはないし、周りの環境さえ整えば、根は社交的で気配りできそうな子だということは見えてるので。一応見守ってはいる。でも俺もさすがに、そうやって誰かに縛られるんじゃなくて、俺だって普通に小学生生活を楽しみたい。だがそれはできないでいる。
まぁこの奥宮のせいでもあるが、一番の原因は…。
「おぅ、柳生じゃねぇか?何してるんだお前?」
こんな時にやばい奴に出くわしてしまった。
近松直也
今、最も会いたくない相手だった。




