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一番残酷に盛り上がる話題

女の子なら、当たり前にする会話。


恋バナ…。


私にはそれが恐怖でしかない。


その理由は複雑なぐらいたくさんある。

まぁ簡単に一言で言えば、私こと奥宮香理がクラス内スクールカースト最下位だからということだ。


恋バナなんて言うキラキラした会話はかわいい子だけの特権だと私は思うのだ。

イヤかわいくなんかなくても少なくとも中の下レベルの顔面偏差値に値する子までなら何とか適当に許される会話だと私は思う。

それどころか、私が見る限りでは女子スクールカースト下から第2位までは許されている気がする。


つまりはだ、我がクラス6年4組ではスクールカースト最下位の私以外、のびのびと恋バナをしている環境であるのだ。


こんな私だが、毎日のように


「ねぇ、香理の好きな人ってだぁれ?」


とほとんど毎日って言ってもいいほど、日替わりでクラスメートの誰かがその質問を投げかけてくるのだ。

酷い時なんて、うちのクラスの子と仲がいい他のクラスの女子からまでも、その質問を投げかけられることだってある。

ホントその質問がない日と言うだけでも、私にとって、滅茶苦茶運がいい日でしかないのだ。


そしてその質問をよく投げかけてくる一人は


「おはよ~香理―。」

「あ、かおりさんおはようございます」


益井千絵子と千賀真穂。こんな私でも一緒にいてくれる数少ないクラスメートだ。


真穂ちゃんは二次元にしか興味がないので、その手の会話が主だから問題ないけど、問題は千絵子の方だ。


仲がいいから、そういう話になるのは必然的かもしれないが、それでも私からしてみれば恋バナは苦痛でしかない。正直いいかげんやめてもらいたいものである。

実はこのクラスになる前の小4の時もこの話が原因で、暴力沙汰を起こしてしまっている。あの事件を起こしてしまった時は二度とやりたくないと思って暴力は封印しているが、そろそろ限界だったりする。この暴力をよりにもよって千絵子に使わないで済めばいいのだが、今はいつ暴走するか判らない状態でホントに困っている。


なんで女子はああもしつこく聞いてくるのか?内心そこが本気でうざい思っている。


聞き出すまではいいが、それを他言しない保証がどこにもない!

だいたい女子に喋ったことは次の日にはクラス全員に知れ渡る未来しかないのだ。


そんなことは小1の時に近所に住む当時同じクラスでもあった江崎知香にやられてから一発で悟った。確か「誰にも言わないから~」とか言ってその日のうちにその本人に勝手に伝えていたのだから、ホントあれで懲りた。そうなったとたん「やっぱりなー」とは思ったよ。いくら馬鹿な私でも、さすがにそれぐらいは予想はつくよ。まぁその時、私が教えた相手は掃除手伝ってくれていた6年生のお兄さんだといったんだよね。絶対誰かにばらされる思って、あえてお兄さんにしたんだよね。想定通りお兄さんは大人な対処してくれたから良かった。これがもしクラスの男子とかだったら大変な目に遭っていたかと思うと今でもぞっとする。あえて優しいお兄さんを選んでよかったとおもった。お兄さんには迷惑かけてしまったけど、私は今でもあのお兄さんには感謝している。


それ以降、知香は私から信頼を失ったことを悟ったのか、一切その話はしなくなった。せめて近所である範囲内だけでもそんな話題にならなくなったことは助かった。


そしてそれ以降私はどんなにしつこく聞かれても絶対に口を割らないことに決めた。


あまりにもしつこい時には


「文句あるなら、1組の江崎知香に言えば!?私がその手の話をしないのは全部あいつのせいだから!」


と知香におしつけたことが何度かある。

そのあと知香はどうなったのかは知らんが、それを言った後は「好きな子だぁれ?」の質問してくるインターバルはいつもよりかは長くなった気はした。


さて、今日は誰が聞いてくるだろうか?


なんでもいいから聞いてこないでほしいものだ。


そして私にはもう一つ大きな悩みがある。それは…



ドンっ!


「いたっ…」


そんなことを考えている時、誰かとぶつかった。


「うげぇ!奥宮やん。てか?俺、奥宮に触った!!?」


「おぇっ!気持ちわるー!奥宮だぁー!」


「兼松―。お前、奥宮菌が付いたきったねー。」


「はー!?んなもんおまえにつけたるし!タッチ!」


「やめろよー!きったねぇなー!」


「つけかえしじゃー!」


「わー!にっげろー!」


と蜘蛛の巣散らすように男子たちは私から逃げていく。


これが私の毎日のことだ。

さっき私にぶつかったことだってわざとだ。そのバイキンごっこをやりたさのために嫌なら別にわざわざ触らんでもいいはずなのにわざとぶつかってくるのだ。

こればかりはしょうがないので、すでに諦めている。

ホントはこいつら全員整形できないぐらいに顔面ぶん殴って、人生終わらせてやりたいぐらいだが、残念なことにこんな大勢の男子相手に喧嘩を挑むいう事は結局返り討ちに合うだけである。それが原因で自分たちにはなにも被害がないことが判っててそれをやっているのだ。


ホント、この年頃の男ガキが考えそうなことは卑怯だ!


そう、クラスのほとんどの男子たちは私のことはばい菌扱いしている状態だ。

それを知ってか知らずか無神経にも女子たちは毎日と言っていいほど、日替わりで「好きな子だぁれ?」という質問はマジで地獄でしかない。

まるで私に生き場をなくしているような鬼畜なものである。


彼女たちはこれを天然でやっているのか?それとも本当に私を追い込むことで楽しんでいるのか?どちらにしても許せないが、4年生の時に殴ったあの女は確かに…


「ああこれ、男子と女子で心理戦の挟み撃ちにして生き場なくさせるのもおもしろいよねー」


みたいなことをさりげなく口にしていたことは覚えている。


あの女を殴ったのは4年生の3学期であり、クラス替えも控えていたので、もう二度と同じクラスになることはないだとろうと思って思い切って行動をした。あの時は多分負ける思ったんだが、その女はあっけなく泣いたので、私もびっくりだった。だって、誰から見ても運動神経がトップクラスの女だよ。そんな強そうな女が最弱のいじめられっ子に殴られてあっけなく泣くなんて、あの時は信じられなかった。


そして皮肉なことにその女はまた同じクラスだった。

あの当時の担任もその事件一応は私があいつを殴っている最中にたまたま朝のHRに来てたし、そこ知っているんだから少しは考慮してほしいものあったよ。


多分だけど、4年の時担任だった竹本博之先生目線からすれば、あのクラスで一番手を焼いたのは私であり、一番印象が悪かった子は私なんだろうなと今でもそう思えるぐらいだ。


竹本先生はクラスの誰もから愛されるような先生だったゆえに、そう思うたびに私の心はホントにちくっとささる。せめて、竹本先生からの印象だけでも良いままで過ごせたら、この小学生生活よかったのになー。その小学生生活も地獄でしかないまま、あと半年ちょいで終わろうとしている。


そして私にはまたあの地獄の時間がやってくる


たった今、男子からこんなにひどい仕打ちを受けた光景を見たにもかかわらず、


「ねね、香理の好きな子って誰なの?」


速攻でその質問をしたのはやっぱり今日も千絵子だった。


私はため息を一息ついた後。


「あのさ、いい加減その話私にふるのやめてくれない!?」


ただでさえ、男子からはあの扱いされてる私がクラスの男子なんか好きになるわけないでしょうが!!?

そんなことも判らんのか!?この女は!?


と毎度口に出して言ってやりたいぐらいだが、さすがにそれは自分が言うだけみじめにしかならないので、言わずに我慢している。


「千絵子…このままそればかり聞くなら…私あんたを…」


もうマジで殴りたいと思った瞬間


キーンコーンカーンコーン


「あ、チャイムだ。あたし席つかなきゃ」


いつも通り、さすがに気まずいと察したのか、千絵子はそそくさと自分の席の方に行ってしまった。


私も自分の席に行こうとすると真穂から手をつかまれた。

そして真穂は私の手に折りたたんだ小さなメモを握らせた。

席に着いてから読んだら、



「今日お茶教室の後、うちにおいで。」



とのことだった。少しだけ気分が晴れた。



真穂がいるから生きていける。

私はそう思って、いじめにもめげずに生きている。

そんな日常だった…。

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