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ソシャゲログイン! ~雲海のラビリンス~  作者: 千馬
メインシナリオ#第二章_ラビリンスクエスト編
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メインシナリオ#59 不審者の正体

 柳ハウスに帰った黎太たちは、千代の作ってくれたカレーを食べていた。千代はというと、廊下でさっそく警察の知り合いとやらに電話をかけている。


 黎太の隣、なにげに食べるペースの速い冥菜だったが、一口水を飲むとスプーンを止めて二つの漬物入れに目をやった。


「ねぇ小路君、そこにあるべきものって普通

 福神漬けやらっきょうじゃないんですか?」


「千代さん、お酒のつまみに酢だことたこわさを

 自分で作るんですよ。で、いつも食卓に並びます」


「お口に合いませんでしたか?」


 特にうららが気に入っているようで、酢だこの減りが速い。


「いえ、とても美味しいですけど…変わってますね」


 言われて黎太はハッとした。ここに来て最初の頃は冥菜と同じように感じていたのに、いつの間にかあってあたりまえのものになってきている。

 そんな風に談笑していると、電話を終えた千代がリビングに戻ってきた。


「どう、冥菜ちゃん。お味の方は」


「とっても美味しいです」


「それはよかった。ところでさ、つかぬ事聞くけど

 前になにかの事件に巻き込まれたこととか

 あったりする?」


 いきなり物騒なことを言われて、冥菜がスプーンを口に咥えたまま動きを止める。

 千代はすかさず言葉を付け足した。


「いやあ、なんか冥菜ちゃんの名前教えたら

 血相変えてすぐ来るって言い出しちゃって

 刑事の名前は、遠藤嵐士っていう――」


「ゴホッゴホッ!?」


「冥菜ちゃん!? ちょ、大丈夫!?」


 なんとか堪えきった冥菜は、水を呷って一息つくと、ぎこちなく苦笑いを浮かべた。


「柳さんの知り合いの刑事さんって

 あの人だったんですか…?

 実は、よく来るんですよ、ウチの神社に」


 黎太の脳裏に蘇るのは、以前冬渡神社の階段下で冥菜と言い争っていた男性だ。もしかすると、あの時の人が千代の知り合いの刑事なのだろう。


「はぁ~。よもや共通の知り合いがいるなんて

 世間は狭いねぇ。――おっとそれより

 というわけだから、お風呂はその後でいいよね?」


「あ、はい。ありがとうございます」


     *     *     *


 食事が終わってもまだ遠藤嵐士という刑事は到着しなかったので、今度は冥菜のご両親に一報を入れるべく、冥菜と千代が電話を始めた。柳ハウスのインターホンが鳴ったのは、それからすぐのことだ。

 電話中の冥菜たちに代わり、黎太が玄関に出て応対する。

 記憶の通り、スポーツ刈りで引き締まった体格の、三十代くらいの男性が、姿勢を正して立っていた。


「こんばんは、夜分遅くにすみません

 千葉県警の――って君は」


「憶えてましたか。ここで暮らしてる小路黎太です

 千代さんから話は聞いています

 とりあえずあがってください」


 どうぞ、と嵐士を招き入れる。うららと未果も見物感覚で出てきていて、ペコペコと会釈していた。


「僕は千葉県警の遠藤嵐士といいます

 ――って、君も、この間彼と一緒にいた子だよね」


 未果がぎこちなく微笑んで挨拶する。唯一事情を知らないうららが小さく手を挙げたが、しかし電話を終えた千代たちがやってきて口を挟む余地がなかった。

 一旦、六畳の和室を使って冥菜と千代と嵐士の三人で話すことになり、黎太と未果とうららはリビングで待つことに。

 バラエティ番組をBGMに、黎太はうららにわかる範囲の相関図を伝えていた。


 冥菜は、友人の土御門ナナ経由で、土御門影明という人物を知っている。

 一方で千代は「影明」と呼ぶくらいには近い仲なのだろう。

 そして冥菜と嵐士、千代と嵐士もそれぞれ直接的な知り合いのようだ。しかし冥菜と千代は初対面らしい。


「――とまあそんなわけで、俺もあんまり

 把握できているわけじゃないんですけど」


「…お二人まで同じ刑事さんと知り合いだったなんて

 なんだか、わたしだけ取り残された気分です」


「いや、俺たちは本条先輩に会いに行く時に

 ちらっと顔を見たくらいですから」


 黎太たちが話している間に、冥菜たちの方でも話は一段落したらしい。三人揃ってリビングにやってきた。


「あ、みんな揃ってるー

 ねえ、ちょっと黎太君たちに確認してほしい

 似顔絵があるんだ。見てくれる?」


 千代に促されるように、嵐士がスケッチブックを取り出す。


「本条さんがボウリング場の駐車場で目撃したという

 黒い車に乗っていた男。その似顔絵を描いたんだ

 一応確認してもらいたくてね」


「中々うまいんだよこれが

 特徴を聞くだけでいかにもな似顔絵を描いたの

 まさかこんな特技があったなんて知らなかったよ」


「ハハハ…さすがに似顔絵捜査官ほどじゃないけどさ

 講習は受けてるから、多少はね

 というか今、ほのぼのする空気じゃないんだよ?」


 いったいどういう関係なのか、二人のやりとりからは距離感の近さが窺える。しかし今は不審者の確認だ。

 嵐士の見せてきたページに描かれていたのは、初老の男性だ。額には皺が目立ち、目つきは鋭く恐怖感を煽ってくる。

 黎太は、反射的に眉間に皺を作っていた。


「あれ、どこかで見たことあるぞこの人…」


「え、黎太も? 私もなんだか見覚えが――」


「な、二人とも知ってる人なの!?」


 千代は困惑しつつも二人に詰め寄ろうと一歩踏み出し――うららまで大きな声で反応する。


「はぁあっ! この人っ!」


 うららは咄嗟に口元を押さえる。うららまで知っているリアクションをしたことで、いよいよリビングの空気が冷え込んでいく。

 そんな中、うららは黎太と未果の方を向いて、似顔絵を指さした。


「二人とも、入学式の時に顔見たでしょう!?

 この人は校長先生ですよ! 確か名前は――

 駿河源助、だったはずです!」


「うっそでしょ!?

 うららちゃんたちの通ってる学校の校長先生が

 どうして影明と一緒にいたってのさ!」


「なんで僕の胸ぐらを掴むんだ!?

 僕に言われたって知らないよそんなこと!」


 興奮する千代と嵐士をよそに、黎太は背筋に冷たいものを感じていた。

 言われるまですっかり忘れていたが……このソシャゲ世界にくる直前に視聴したアニメ版のCパートで、意味深なセリフを呟いていたことを思い出す。

 となると、いよいよ聞かないわけにはいかない。黎太はおずおずと手を挙げた。


「あの~…その土御門影明さんって、何者なんです?」


 千代は嵐士から手を離し、横髪を触った。


「あー…あたしの大学時代、一緒にユニットを組んで

 ラビリンスに挑戦していた仲間の一人だよ

 嵐士もそのうちの一人。ね」


「うん。付け加えると

 行方不明者として、ご家族から捜索願が

 出されている人でもあるよ」


 黎太は頷いて、頭の中で情報を整理する。

 駿河源助校長先生は、美羽高校の生徒に、ラビリンスへの挑戦を許可した人物である。そして、アニメではなにやら裏がありそうなシーンがあったキャラクターだ。


 もちろん、アニメでは校長先生が悪者だと表現されていたわけではない。しかしこうなってくると不審人物として考えるべき状況であり、またそんな校長先生と会っていたならばその男もまた不審者では――と連想していた。


「捜索願…指名手配じゃなく?」


「いやいや、影明、悪いことしてないから」


 千代が手を横に振って否定した。嵐士も空笑いをして、話を進める。


「とにかく、行方不明者は他にも数多くいるんだ

 正直、警察組織を動かして影明を探すということは

 できないと思う」


 千代が目を閉じて頷いた。嵐士は続ける。


「それに、犯罪沙汰になったわけじゃない以上

 まだ警察は動けない。僕が個人的にできる範囲で

 パトロールは強化するけど、それくらいだ」


「冥菜ちゃん。なにか困ったことがあったら頼ってね

 なんだか遠からぬ縁も繋がっているみたいだし

 気軽に遊びに来てくれたっていいんだから」


 千代から優しく語りかけられて、冥菜は柔らかい笑みを浮かべた。


「はい、ありがとうございます」


 黎太からアニメの校長先生の話を聞いていたからか、未果は眉根を下げて冥菜と嵐士を交互に見る。


「あの、不安を煽るつもりはないんですけど…

 顔、見られたんですよね? その、警察なら

 警護とかってつけられないんですか?」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫です

 学校の校長って立場なら、派手に悪いことも

 できないでしょうし…他に心強い味方もいるので」


 冥菜の返事を聞いた未果は納得して表情を和らげた。

 リビングにいる一同の顔を見渡した嵐士は、満足そうに頷いて、ドアに手をかける。


「じゃあ、長居してもなんだし、僕はこれで

 君たちもラビリンス攻略に夢中になるのはいいけど

 あまり遅くならないように気をつけるんだよ」


「大学時代、修行キャンプだなんだって騒いで

 何日もラビリンスを駆けずり回ってた嵐士が

 言えた義理じゃないでしょうに」


「放っとけ。それでも大人だから言うんだよ

 余計なことはいわんでよろしい」


 最後に千代にからかわれながらも、嵐士は柳ハウスを出て行った。

 嵐士を見送った千代は、リビングに戻ってくると手を叩く。


「はい! というわけで真面目な話は今日はここまで

 それじゃあ時間も遅くなっちゃったし

 パパッとお風呂入って寝る準備しよっか!」


 千代の号令で、各々間延びした返事をしながら動き出す。冥菜が一晩だけの泊まるという特別感があるからか、未果とうららはいつもの三割増しで姦しかった。

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