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栄光のファンタジア  作者: ハルクマン
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第九話 作戦開始

アイザックを先頭に、馬に乗ったアルハラ兵達は森の道を駆け抜けて行く。

10分ほど走った頃、森の出口が見えてきた。


「全体止まれ!」


先頭の兵士の声と同時に、兵士達はその場で馬を止める。

そして、馬から降り腰につけた剣を抜き取った。


「この先が世界樹だ!激しい戦闘は避けられん、覚悟はいいか!?」


「おぉー!!」


「よし!さ、アイザックさん」


「うむ。レオン君、まずは我々が突き進み道を開ける。君は我々に構わず、まっすぐ世界樹の中へと向かってくれ。いいね?」


「…はい!」


「よし。…アルハラ軍2番隊!いくぞ!!」


「おぉ!!」


掛け声と共に、兵士達は森の外へと駆け出して行く。


「な、なんだ!?敵襲か!?」


森の外、天高く聳える世界樹の前にいた茶色い鎧を身につけた兵達は驚いた顔を浮かべ声のする方を見る。


「敵襲だ!!アルハラ軍の奴らが来たぞ!!」


「迎えうて!奴らを世界樹まで通すな!!」


茶色い鎧を身につけたグレイモアの兵士達は剣を抜き、アルハラ軍の兵士達の方へ走り出す。


「グレイモアの連中だ!死ぬ気で戦え!」


アルハラの兵士達とグレイモアの兵士達の剣がぶつかり合う。静かだった世界樹の周りは、一瞬にして戦場へと変化した。


「これが戦争…これが…」


その光景を見て、レオンはぎゅっと手を握る。


「さぁ、行け!レオン君!!」


一人の兵士がそう声をかける。

その声を聞き、レオンは大きく頷いた。


(俺の進む道を開くため、みんな命をかけてくれている…。必ず精霊石を回収しなくちゃな!)


大きく深呼吸し、レオンは勢いよく走り出した。

カン、カン!と剣のぶつかり合う音が辺りに響き渡る。

その音の中には、「ぎゃあぁ!」と生々しい叫び声が混じっていた。


「くそっ…!」


レオンは目をぎゅっと瞑り、世界樹の元へ走り抜けていった。


ーーーーーーーー


「もう目の前だ!」


レオンが世界樹の目の前に来たその時だった。


「ギシャァァア!!!」


どこからか、人間のものとは思えない声が聞こえてくる。


「なんだ?」


レオンがその場に立ち止まった瞬間、目の前の地面がひび割れ、勢いよく何かが飛び出してきた。


「うわぁ!?」


飛び出してきたのは、ハエトリソウのようなトゲトゲとした口を持った巨大な植物のような魔物だった。

魔物の口からは、だらだらと涎が垂れている。


「ま、魔物…!!」


突然のことに、レオンはその場に尻餅をつく。


「あれはマンドレイグ…!人食い植物の魔物だ!!」


後ろから、兵士の声がきこえてくる。


「レオン君、逃げろ!」


その声を聞き、レオンは急いで立ち上がろうとする。

しかし、マンドレイグは大きく口を開けレオンに狙いを定めた。次の瞬間、マンドレイグは大きく開けた口を勢いよくレオンの方へ動かした。


「ま、まず…!」


レオンは死を覚悟し、目をぎゅっと瞑る。


「………」


「…あれ?」


襲われると覚悟したが、少したっても特に体に異常はない。

不思議に思ったレオンは、ゆっくりと目を開ける。

すると、目の前にいたマンドレイグは根本から斬られ、茶色く枯れてしまっていた。


「レオン君、大丈夫か?さ、手を!」


そう言い手を差し出してきたのはアイザックだった。


「あ、アイザックさん…!ありがとうございます!」


「まさかあんな魔物まで配備されているとは…。さ、君は世界樹の中へ!私たちも手が空けば中に応援に行く!」


「はい!」


アイザックと別れ、レオンは世界樹の中へと駆け込んだ。


ーーーーーーーー


世界樹の中は木の中とは思えないような広々とした空間が広がっていた。しかし、特に何かある訳ではなく木の輪郭に沿ってひたすら上に螺旋階段が続いているだけだった。


「精霊石はこの上か…?中にも敵がいるかと思ったけど…いないみたいだな…」


レオンはあたりを見渡し、螺旋階段を上り始めた。


ーーーーーーーー


ひたすら上っていくと、上に天井のような物が見え始めてきた。階段は、その上まで続いているようだった。


「あそこに何かがあるのか…」


レオンはゆっくりと階段を上っていった。


ーーーーーーーー


「これは…」


世界樹の頂上。そこには木の中とは思えない、美しい花畑が広がっていた。

フロア一面に咲き誇る白い花は、木の壁に開けられた窓から差し込む光で美しく輝いていた。


「世界樹の中にこんな場所があったのか…」


レオンは差し込む光を手で遮りながらあたりを見渡す。

すると、フロアの真ん中に誰かが座っているのが見えた。


「あれは…?」


レオンは恐る恐る座っている人の方へと近づいていく。

座っていたのは緑色のトンガリ帽子と長袖の服、そして茶色いズボンを身に纏った若い青年だった。

青年は目を瞑りながら、美しいハープの音色を奏でていた。


「あ、あんたは…」


レオンの声を聞き、青年はゆっくりと目を開ける。


「来たね…君がレオン君か…」


「…!なんで俺の名前を…」


「ザイホンさんから聞いたのさ、君のことをね。ザイホンさんは必ず君はここに来るって言っていたよ。…やはり親には我が子のことはなんでもお見通しみたいだ」


青年は穏やかな表情と口ぶりでそう話す。


「…なんで中に兵士達がいないかって、不思議に思ったでしょ?」


ズバリと言い当てられ、レオンは少し驚いた顔を浮かべる。


「僕はね、五月蝿いのがあまり好きじゃないんだ。美しい自然の中で風に吹かれ、鳥の囀りを聞きながらハープを弾く…。そんな時が一番落ち着くんだ。だから、兵士達には外で見張りをしてもらっていたんだよ」


そう言いながら青年は肩にとまった青い小鳥を手に乗せる。


「ほらお行き…ここは今から戦いの場になる」


そのまま手を伸ばすと、青い鳥は飛び立ち世界樹の外へと羽ばたいていった。


(…なんだか変わった人だな)


話を聞きながら、レオンは心の中でそう思った。


「…精霊石はどこにあるんだ?」


レオンの問いを聞き、青年はニヤリと笑みを浮かべる。


「精霊石はこの奥だよ」


青年の指さす方を見ると、そこには奥の部屋へ続く道があった。


「本当はこのまま通してあげたいけど…一応僕にも兵士としての使命があるんでね」


青年が手に持っていたハープを奏でると、地面から植物の根のような物が生え始め、奥の部屋へ続く道を覆ってしまった。


「あっ!」


「この根っこはかなり分厚くてね…普通の人間じゃ開けることはできない。精霊石が欲しいなら、僕を殺して能力を解除させるしかない」


「能力…?」


「あぁ、グレイモアの科学者が作り上げた特殊な薬…。それを打てば、誰でもその人に合った能力を得られるのさ。僕ももちろん打った。僕以外にも何人かね…」


「そんなものまで作っていたのか…グレイモアは…!」


「レオン君…僕はね、ほんとは君と戦いたくないんだ」


「え?」


いきなりの予想外の言葉に、レオンはポカンと口を開ける。


「ザイホンさんから君の話を聞いて僕と君はとても気が合うと思ったんだ。それに…僕は戦争が大嫌いだからね…」


「………」


「…でも、僕と君は戦うしかない。それが僕らに与えられた運命だからね」


そう言うと、青年はゆっくりと立ち上がった。


「…まだ名乗ってなかったね。僕の名前はプロトリー、グレイモアの侵略駐屯隊の隊長の一人さ」


「侵略駐屯隊…」


「侵略駐屯隊の隊長として…僕は全力で君を止める!君も、全力で僕を殺しに来てくれよ…!」


「………」


レオンはゆっくりと背中の剣を抜き取る。


「さぁ、行くよ!全ては運命のままに!!」


続く。


投稿は不定期で行います。

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