第八話 作戦会議
「んん…」
窓から差し込む柔らかな光を浴び、レオンは目を覚ました。
「今は…朝の5時前か…。ちょうどいい時間だな…」
レオンは目を擦りながらベッドをおり、横に立てかけてあった剣を背中にかけた。
「よし、行くぞ!」
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レオンは家を出て、村の中央にある広場へと向かった。
広場には、アルハラ軍の兵士達が約20名ほど集まっているようだった。
「おぉ、レオン君!来たか!」
レオンに気付き声をかけてきたのは昨日出会った兵士だった。
「おはようございます」
レオンは軽く会釈をしながら挨拶をする。
「さ、今から作戦会議が始まる。こっちに来てくれ」
兵士に連れられ、レオンは広場の真ん中へ向かった。
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「…よし、集まったな。それでは、これより作戦会議を始める!進行は2番隊隊長のアイザックさんに一任する!」
そう一人の兵士が声をあげると、広場の横から一人の男が歩いてきた。
その男は白を基調としたロングコートに身を包んだ黒髪の若い男だった。
「では、作戦会議を始める。まず初めに紹介したい者がいる。今回の作戦の要であり、ザイホンさんの息子…レオン君だ。さぁレオン君、こちらへ」
アイザックと呼ばれる男にそう促され、レオンは少し戸惑いながら兵士達の前に立つ。
「さぁ、軽く自己紹介を」
「は、はぁ…。え、えーっと、ザイホンの息子で、王様から精霊石を集める任を受けました、レオンです。よろしくお願いします」
そう言うと、レオンは頭を下げる。
「よし、レオン君ありがとう。いいか?彼はザイホンさんの息子…すなわち光の勇者の血を継いでいる!グレイモア…ないしはザイホンさんと戦うには必要不可欠の存在だ!我々の最大の任は彼を護衛すること!そのためには命すら投げ出す覚悟を持て!いいな!」
「おぉー!!」
アイザックの言葉に兵士達は大きく声を上げ反応する。
「よし、それでは作戦の内容だが…昨夜偵察に行かせた所、どうやら世界樹の周りにはグレイモランの兵士達が見張りとして配置されているらしい。それだけならまだいいが、どうやら魔物もいるようだ」
「魔物…?」
「あぁ、どうやら奴らは魔物を従えているらしい。デビルゲートを開いたとかいう噂が流れているようだが…あながち間違いでは無いかもしれないな」
(デビルゲート…本当にそんな物が開かれているのか?親父は…そんな悪事に関わっているのか!?)
レオンはアイザックの話を聞きながら、心の中でそう自問自答を繰り返していた。
「それで、我々の任は?」
「我々の任は簡単だ、グレイモアの兵士と魔物と交戦し道を開く。レオン君が通るためのな。そして我々が道を開いている間にレオン君には世界樹へと入ってもらう。ただこれだけだ」
「い、いいんですか?たった…俺のためだけにそんな…」
レオンはその作戦に不安を覚え、アイザックに問いかける。
すると、アイザックはニコッと笑顔を浮かべた。
「君は我々の事を気にしなくていい。我々の任は君を守り、サポートすること。任務を遂行するためなら我々は自らの命も投げ出す。それがアルハラの兵士だ」
あまりにもまっすぐな目に、レオンは何も言い返さずコクリと頷いた。
「よし、ざっくりとだがこんなものだ。もし余裕があれば世界樹へ入りレオン君のサポートをしてくれ。以上だ」
「それでは作戦会議を終える!作戦開始は20分後だ、直ちに準備を始めるように!解散!」
その声と同時に、兵士達は早々と準備を始めた。
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「レオン君」
広場の端で準備運動をしていると、先ほどの男アイザックに声をかけられた。
「あ、アイザックさん」
「すまないね、君のような未来ある少年をこんな争いに巻き込んでしまって」
「いえ、いいんです。この国に危機が迫っているなら俺も手を貸したいし、それに…親父が悪の道に進んでしまったなら、息子である俺が責任を取らないといけないですから…」
そう言うレオンの顔を見て、アイザックは軽く笑顔を浮かべる。
(このまっすぐな性格…ザイホンさんにそっくりだ。彼なら…レオン君ならザイホンさんを止められるかもしれないな…)
心の中でそう思いながら、アイザックはレオンの方を見た。
「そうか、君はとても真っ直ぐな人間だな。さ、そろそろ作戦が始まる。世界樹にどんな敵が待っているかは分からんが…気を引き締めて行くぞ。間違えば、命を失うこともあるかもしれないからな」
「はい!」
「君は我々アルハラ王国の希望だ。よろしく頼むぞ」
「任せて下さい!」
「よし、さ、行くぞ!」
レオンとアイザックは村の奥にある世界樹へと続く道へと向かった。
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「皆、準備はいいか!」
「おぉー!!」
先頭のアイザックの声に、兵士達は大声で答える。
レオンは白馬に乗り、アイザックの横に移動した。
「行くぞ、世界樹へ!!」
アイザックの声を合図に、兵士達を乗せた馬は勢いよく道を駆け出していった。
続く。
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