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栄光のファンタジア  作者: ハルクマン
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第一話 父親を探して

永遠と暗闇が続く真っ暗な空間。

その中で、茶髪の少年は横たわっていた。


『レオン…レオン…聞こえるか…』


突然、どこから声が聞こえて来る。


『レオンよ…すまない。私を…愚かな私を許してくれ…』


どこか聞き覚えのある声は横たわるレオンに優しく語りかける。


『レオン…私のようにはなるな…そして超えるのだ。このザイホンを…!』


そう言うと声は途切れ、レオンの意識も薄れていった。


ーーーーーーーー


ピヨピヨ…


眩しい陽光と鳥の囀りで少年レオンは目を覚ました。

レオンは目をゴシゴシ擦ると、体をゆっくりと起こし大きく伸びをした。

そしてベッドから降り、白いレースを開け窓の外を見る。


「なんだったんだろ…さっきの。…ま、ただの夢だよな。それにしてもいい天気だ…。"旅立ちの日"にはもってこいだ!」


そう言うとレオンは寝巻きを脱ぎ捨て、白い長袖シャツに茶色い長ズボンを身につけ、こげ茶色のブーツを履いた。


「あと…これは外せないよな…」


にやにやと笑みを浮かべながらレオンは引き出しを開ける。

そこには、少し古びた赤いマントが入っていた。


「親父のつけてたこのマント…旅立つ時は絶対つけて行こうって決めてたんだよなぁ…」


レオンは嬉しそうにマントを見つめると、すばやくマントを身につけた。

そして、玄関に立てかけてあった両刃の剣を背中にかけレオンは勢いよく玄関を飛び出していった。


ーーーーーーーー


「村長!!」


レオンの住むマシロ村はアルハラ王国の東側、森林の広がる田舎にあった。

村は木造の家が何軒かと畑があるだけで、村人達はほぼ自給自足の生活を送っていた。

そんな村の中央に聳える大きな木造の家。

そこにレオンは訪れていた。


「おぉ、来たか!レオン!」


大きな木造の家の中には白髪、そして白髭の老人が立っていた。


「はい、旅立ちの挨拶に来ました」


「うむ。…もうお主も16歳。旅に出ることを許される年齢じゃ。…やはり"ザイホン"を探しに行くのか?」


「はい、それが俺の旅の目標ですから」


「そうか…。旅は大変なところも多いが楽しいもんじゃ。この森の先にはお前の見たことのない世界が無限に広がっておる。…世界を自由に見て来るのじゃ。もちろん、ザイホンを探しながらな」


「はい、村長」


「よし、それでは行ってこい!何かあったら戻って来るんじゃぞ!」


「はい!それじゃあ!」


そう言うと、レオンは駆け足で村長の家を飛び出していった。


「全く…誰に似たのかのぉ…」


そう言うと、村長は優しい笑顔を浮かべた。


ーーーーーーーー


「ボンさーん!!」


レオンは村の道を駆け抜け、木製の門の前までやってきていた。門の前には剣を背中にかけた中年の男がレオンの方を見て立っている。


「おぉ、レオン。聞いてるぞ、今日から旅に出るんだってな」


「はい!」


「親父を探しに行くんだろ?…俺も久しぶりにザイホンさんと酒を飲みたいんだ。頼んだぜ、ザイホンさんのこと」


「任せて下さい。必ず、俺が親父を連れ戻してきます!」


「よし、いい返事だ!最近はこの辺りの森でも魔物が目撃されてる。気をつけろよ!」


「はい、それじゃあ!」


そう言うと、レオンは門を潜り森の方へと走り出した。


ーーーーーーーー


「くっー!やっと旅に出れるんだ!サイフも持った、剣もある。よし、準備は大丈夫だ!」


そんなことを呟きながら、レオンはどんどんと森を歩いていく。

その時だった。

道の先に、何かの影が見える。


「なんだ…あいつ…」


レオンは少し警戒しながら剣を抜き、影に近づいていく。

目を凝らし影をよく見ると、そこには緑色の小さな人間のような生物がしゃがみ込んでいた。


「こいつは…ゴブリン!?」


ゴブリンはゆっくりとレオンの方へ振り返る。

ゴブリンの口元は赤黒い血に覆われ、ゴブリンの足元には悲惨な姿になったウサギの姿があった。


「うっ…」


「グルァ!!」


ゴブリンはレオンの顔を見ると牙を剥き出し地面に置いていた木の棍棒を手に持った。


「まさか村の近くに魔物がいるなんて…まぁいい。修行の成果、お前で試させてもらうぞ!」


ゴブリンは勢いよくレオンの方へ走りだす。

そして、思い切り棍棒を振った。

レオンは棍棒にむけ剣を振り、ゴブリンの攻撃を防ぐ。


「さぁ、終わらせるぜ!」


レオンは思い切り棍棒を押し返す。

すると、ゴブリンはフラフラとバランスを崩す。


「隙ありだ!!」


レオンは素早くゴブリンの腹を切り裂いた。


「グルァァ…」


斬られたゴブリンはその場に倒れ、黒い煙になって消えていった。


「ふぅ…魔物とは言っても、生き物を斬るのは気持ちいいものじゃないな…」


そう言うと、レオンは剣をしまいまた森の道を歩き出した。


ーーーーーーーー


森を30分ほど歩いて行くと、道の先に光が差し込んでくる。


「あそこは…出口か!?」


レオンは駆け足で光の方へ向かって行く。

すると、その光の先にはレンガ造りや木造の様々な建物が並ぶ大きな街が広がっていた。


「すげぇ…。村の近くにこんな大きな街があったなんて…」


レオンは驚きのあまり、ポカンと口を開け街を見渡す。

少し経ってからレオンは街の方へ歩き出した。


ーーーーーーーー


「始まりの街、コーリアか…」


街の入り口にある古びた木製の門には、『始まりの街、コーリアへようこそ』と掠れた文字で書かれていた。


「すごい人だな…こんな沢山の人を見たのは初めてだ…」


レオンは驚きながら行き交う人々を見つめる。


「…とりあえず街を歩いてみるか」


レオンは門を潜り、コーリアの中へ入った。


ーーーーーーーー


「新鮮な野菜がたったの100ゴールドだよ!」


「ほらほら、兄ちゃん!服みてかないか!?」


レオンが街を歩いていると、様々な店の引き込みに声をかけられる。レオンは少し申し訳なさそうに断りながら街のメインストリートを歩いていた。

そんな時だった。

道の端に、沢山の人々が集まっているのが目に入った。


「なんだ?」


レオンは興味を持ち、人だかりの方へ歩いていく。 

少し背伸びすると、人だかりの中には青いローブを身につけた老人が立っているのがみえた。よくみると、老人の足元には救いの箱と書かれた古い木箱が置かれているようだった。


「良いですか!皆さん!我々は太古の昔"神龍(しんりゅう)"様から作られた存在…。全ての生命は神龍様の子供なのです!神龍様はいつでも我々を見守って下さっています!さぁ、こんな時だからこそ神龍様に願うのです!平和な世を!戦争なき世界を!!」


「神龍様?なんなんだ?そりゃ…」


レオンは話を理解出来ず、立ち去ろうとした時だった。


「全ての生命の親神龍…。過去に実在した伝説さ。それを利用して金稼ぎとは、とんだ罰当たりな野郎だぜ…」


レオンの横に立ちそうつぶやいたのは袖を捲った白いシャツに黒いズボンを身につけている髭を生やしたオールバックの男だった。


「なぁ、お前もそう思わないか?」


男はレオンにそう問いかける。


「え、えーっと…」


「ははは!悪い悪い!突然聞かれても分からなぁよな。ったく、ああいう宗教を装って金を搾り取るだけのクソ共は好きになれねぇぜ」


レオンはふと、男の持っていた新聞が目に入る。


「っ!?」


その新聞を見て、レオンは驚きの表情を浮かべる。


「ちょ、ちょっとその新聞見せてもらってもいいですか!?」


「は?まぁ、いいが…」


男はレオンに新聞を渡す。

すると、レオンは食い入るように新聞を見つめた。


「ザイホンが…アルハラ王国を…襲った…!?」


アランの見つめる記事にはザイホンの写真と大きな文字で『勇者ザイホン、アルハラを裏切る』と書かれていた。


「なんだ?ザイホンの記事が気になるのか?」


「これは…これは一体どういうことなんですか!?」


「そのままの意味だ。過去にこのアルハラを救った勇者ザイホンがこの国を裏切り、グレイモアの将軍になった。そして1週間ほど前、アルハラ軍の中継基地をザイホン率いるグレイモア軍が壊滅させたのさ」


「親父が裏切る…!?そんな…そんなわけ…」


「!?」


レオンのその言葉を聞き、男は驚いた表情を浮かべた。


「まて、今お前なんて?」


「親父が…裏切る訳ないって…」


「お、お前、伝説の勇者ザイホンの息子なのか!?」


男は顔を近づけ、食い入るようにレオンにそう問いかける。


「そうです…2年前から親父は行方不明になってて、16になったからやっと親父を探しに行こうと…」


「まさか息子がいたとはな…その記事を書いたのは俺なんだ。なぁ、少し話さないか?人の少ない店を知ってる」


「あなたがこの記事を…?わ、分かりました。俺も聞きたいことがあるし…」


「よし、決まりだな。ついてきな、案内する」


こうして、レオンは男の行きつけのバーに向かうことになったのだった。


続く。




投稿は不定期で行います。

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