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戦力強化

「さて、今日からバリバリ依頼を受けていくぞー」


 やや気怠げな少年の掛け声に「おおー!」と元気よく手をあげるアリアと、苦笑いするウィル。


 今日から本格的に王都で仕事をこなしていくための小規模な決起集会だった。


「とりあえず常設依頼で適当な魔物討伐をするつもりだが、それでいいか?」

「うん! 索敵は任せてといて!」

「オッケー。当面の目標は2級ハンターになるために依頼をこなしていくこと。あとは資金集めだな」


 王都に来たばかりではあるがいずれは国外にも出るつもりだ。そのために金はいくらあっても困らない。


「そういやウィル? お前魔術の研究はどうするつもりだ?」

「魔物との戦いの中で魔術師の手の最適な運用方法を探っていきます。足は引っ張らないので安心してください」

「了解、頼りにしてるぞ」


 彼の魔術の腕前は今更疑いようもない。


「よし、じゃあ行くか」


 依頼を受けるべく、ジン達はギルドの中へ足を踏み入れた。




「ダメです、ジンさんに魔物討伐の依頼を受けさせることはできません。危険すぎます」

「なんで!?」



 掲示板に掲げられた依頼をいくつか見繕って、受付のシンシアに持って行くといきなりストップがかかった。


 意気揚々と仕事を受ける気でいたのに出鼻をくじかれる形となり、抗議の声をあげる。


「なんでですか、俺じゃあ力不足だとでも? どの魔物もガロックで戦ったことのあるやつばっかなのに」

「別にジンさんの実力を疑っているわけじゃありません。ガロックのギルドからの報告書でジンさんが過去に討伐した魔物は全て把握しています」

「だったら……!」

「ジンさんあなたその格好で魔物と戦うつもりなんですか?」


 彼女が指差す先には、普段と同じ格好の少年がいた。


「……? 何か問題でも?」

「問題しかありません! それ普段着じゃないですか!」


 少年の服装は防御力0のただの布の服だった。


「魔物狩り舐めてるんですか!? 凶悪な魔物相手にそんな布切れで立ち向かうなんて正気ですか?」

「ええ、今までこれでやってきたのに。そんな今さら……」

「今まで! え? まさか普段からその格好で戦ってきたんですか? ガロックでも? あっちのギルドで何も言われなかったんですか!?」

「いや……特に」

「…………新人のハンターに防具つけさせることもしないだなんて……一度ガロックのギルドには聞き入り調査をしなければなりませんね」


 苦虫を噛み潰したような形相で何やらぶつぶつと呟いている。


「とにかく! 私が貴方の担当となった以上そんな無謀なことは許しません! 魔物を相手どるのに十分な防具を調達してくるまで依頼は受けさせませんからね!」



 


「防具か、考えたこともなかったな」

「……僕としてはそっちの方が驚きなんですけど」


 ウィルの言葉には呆れたような響きが込められていた。


 ジン達はギルドから締め出されたあと防具を手に入れるべく街をうろつく。


 どうやらウィルに当てがあるらしく、そこを目指しながら出鼻をくじかれたことに対してぼやいていた。


「言われてみれば当然の話ですよ。僕も出会った時から、あれこの人なんでこんな薄着なんだろう? って思ってましたし。指摘するタイミングを逃してずるずるここまで来てしまいましたが」

「つってもお前も俺と対して変わんねえカッコしてんだろうが」


 ウィルの服装はいかにも魔術師といった様相。柔らかいクリーム色のゆったりとしたローブ。


 防御力があるようには見えなかった。


「僕のこれは魔術学院から支給されている各種術式を編み込んだ特注品です。下手な鎧よりも頑丈ですよ?」

「良いなそれ、一着くれよ」

「無茶言わないでください、とんでもなく貴重な品なんですから。と言うかこれは繊細な魔力コントロールで発動し続ける一種の防御魔術なんです、ジンには使えませんよ」

「……なんだよちくしょう」

「そもそも前衛で魔物と真正面からぶつかるあなたと、後衛から魔術を放つ僕とでは防具の必要性がまるで違いますからね」

「あー、じゃあアリアは? お前のその草みたいな色のワンピースに防御力なんてーー」

「私を戦わせるつもり?」

「…………だよな」


 そんなもの土台無理な話だ。


「まあ良い機会じゃないですか。これからハンターとして活動を続ける上できっと必要になってきますよ」

「まあ、そうなんだけどよ……」


 少年はどうも歯切れが悪い。


「何をそんなに悩んでるんです? 別にお金がないわけでもあるまいし」

「いやそらあ、それなりに金は持ってますよ? 俺が気になってるのは戦い方が変わっちまうことだよ」

「……と言いますと?」

「前に言わなかったけか? 俺の師匠は狩人で、あの人について回って山を駆け回ったって。当然その時に重い鎧なんかは着てられねえから軽装に慣れちまってるんだよ」


 もっとも師であるユノは狩人であって魔物を相手取るハンターではないから勝手は違うだろうが。


「……なるほど、そう言う懸念でしたか。でも大丈夫です、ここならジンにとって理想の防具が見つかりますよ」


 着きました、と青年は大きな建物の前で立ち止まる。


 それは本当に大きい、何階建てもあるような建物。


「王国一の品揃えを誇る百貨店、リバーテイルです」

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