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ヤバイやつ

「何考えてるんですかジンさん!? 真正面から乗り込むなんて!」

「じゅ、寿命が縮むかと思った…………」


 今にも射殺そうとする視線を複数感じながら酒場を後にすると、ウィルは猛然と抗議してきた。


 アリアもウィルもプレッシャーに当てられて顔が真っ青だ。


「いいじゃねえか、上手くいったんだからよ」


 手元の契約書をひらひらと見せながら少年は余裕シャクシャクと笑う。狙い通りヴェンデッタの署名入りだ。


「よく署名してくれたよね? あのちっちゃい人なんて自分と関係ありませんって突っぱねることもできただろうに」

「いや、ほぼほぼサインして来ると思ったぜ」

「なんで?」

「別にあいつが部下想いだからってわけじゃない、だがあそこで部下を切り捨てちまうと他の連中も次は自分だと考えちまうからな、自分の部下の手前そうせざるおえなかったのさ」


 組織だって行動してる連中の弱点をついた結果だ。


 まあそれでも成功率は5割もあればマシな方だった、とは説明しなかった。


「公衆の面前であれだけ騒げば街中でも下手なことはできねえだろ、まさに一石二鳥だな」

「…………彼らが比較的理性的だったから良かったですけど、もし逆上して襲いかかってきたらどうするつもりだったんです?」


 まだ納得しきれないのか、青年は渋面だ。


「ぶっちゃけそっちのほうが楽だったんだけどな、剣の一つでも抜いてくれれば堂々とブチのめすことができたんだが」

「…………アリアさん、この人ヤバくないですか?」

「今頃気づいたの?」


 失敬な、そう思いながら少年は思いっきり伸びをする。


 ここ数日の鬱屈とした想いが多少はマシになった。


「さて、これであいつらも少しは大人しくなるだろ、今のうちに検証を進めようぜ」

「少しはって…………これで解決じゃないの?」

「まさか、そこまで物分かりのいい連中じゃないさ、そのうちまた仕掛けてくるよ」


 


 ジン達がヴェンデッタの元に乗り込んだその日は久しぶりになんの妨害もなく、順調に検証を進めることができた。


 だがその翌日、ジン達が街の外に出ると柄の悪い連中がまたもや待ち構えていた。


「どういうつもりですか? 僕たちが街の外に出ている間、あなた達は街の外に出ない。そういう契約をヴェンデッタさんと結んだはずです!」


 当然抗議の声を上げる。ようやく邪魔が入らず実験をするめることができるといった矢先の出来事だ。


 まさか契約した翌日にそれを違えるような真似をしてくるとは思わなかった。


「ヴェンデッタ? 誰だそれは?」

「…………なるほど、そういうスタンスか」


 元々ならず者たちの寄せ集めで形あるような組織ではない、お互いが関係がないと言い張れば証明のしようがない。


 彼らは今までと同じく魔物の元へと向かうジン達の後を堂々とつけてきた。


「どうするんですかジンさん?」

「そーだよ、せっかくあんな大立ち回り演じたのに結局元通りじゃん」


 ヒソヒソと囁き合う、このままでは今まで通り実験中を妨害してくるだろう。


「大丈夫だ、この程度想定の範囲内だ」


 しかし少年は策はあると言わんばかりに堂々と言い放つ。


 そしてそのまま目当ての魔物との戦闘に突入した。


 

 対峙するは二足歩行する獣のような魔物コボルト。


 今回の人の役割はウィルが魔術を発動するまでの時間稼ぎ。すでに何度も繰り返してきた作業で魔物を生かさず殺さずその場に繋ぎ止めることは慣れっこになっていた。


 視界の端にはこちらをじろりと観察する男達が、いつ横槍を入れようか機会を窺っている最中だろう。


 鋭い爪をいなし続けていると、ジンは首筋にピリリとしたものを感じた。


 それはここ数日の間で何度も経験した悪意を持って魔法を発動する気配。


 それを感じたジンはーー



「おっっらああああ!!」


 魔物の毛皮を掴み男達目掛けてぶん投げた。



「ぐぺっ!!」


 魔法を発動しようとしていた男は飛んできた魔物に押し潰され間抜けな声をあげる。

 

 ジンは男ごと地面に倒れ伏したコボルトの首を手早くナイフで切り裂き、声をかける。


「おっとすまんな、怪我はなかったか?」

「な、何しやがるこのガキ!!」


 魔物の血で顔を真っ赤に染めた男は少年を怒鳴りつける。


 その怒気を真正面から受けながら、少年はヘラヘラと笑う。


「おいおい、人が戦ってる場所に近づいてきたのはあんたらだろ? 怒鳴られる筋合いはないぞ」

「ぐっ、テメエ……!」


 歯噛みするが元々後ろめたいことをしているのは男達の方だ。これ以上抗議できない。


「さて、魔物を倒しちまったし次を探すぞウィル」

「え、ええ」



 アリアの力で手早く見つけた魔物と再度戦闘を始める。


 当然男達も後をついてきた。


 視界の端でやや警戒するようにこちらを観察する男達を捕らえてジンは心の中で笑う。


 いい根性してる、まだ懲りずに茶々入れてくるつもりか?


 そんなことを考えているとまたしても首筋がピリついた。


 それを感じたジンは迷うことなくーー



「くたばりやがれえええ!!!」


 自身の持つ大剣を男達目掛けてぶん投げた。



 ブンッ!! と空を裂く轟音と共に飛んでいった大剣は男達の間ギリギリを抜け、後ろの木々を薙ぎ倒した。


「っっっ!!!」


 男達は声にならない悲鳴をあげる。


 当たっていたら死んでいた。そのことに気づいた男達は腰を抜かす。


「悪い悪い手が滑っちまった」

「て、手が滑る程度で……あんな馬鹿でかい剣が飛んでくるわけねえだろ」

 

 抗議の声も弱々しい。


「こう見えて緊張しいでね、知らん連中に見られながら戦うと集中できねえんだ」

「……お前、正気か? 剣士が剣を投げるなんて」


 苦し紛れに出てきたのなんとも的外れな指摘だった。そのことに思わず笑ってしまう。


「わかっただろ? 変に近づくと危ないってことが。近くで魔法を発動しようとしたり変なちょっかいをかけようとすると、また手が滑るかもしれねえ」


 青ざめる男の肩に手を置き、少しだけ力を込める。


「な?」


 返事を返すことも、頷くこともできず男はただ体を震わせていた。



「…………僕、最初はジンさんって常識的な方だと思っていました」

「見る目がないねウィルは。私は割と最初からまともな人間じゃないって確信してたよ?」

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