流れ
あの日、皆はラグビーを見ていた
あの男たちが、人々に希望を与えてくれた日
興奮の、火の粉を、聞いた
私の部屋の横の
2回建てのアパート
昔らしい剥き出しの廊下
煤けた白い壁
薄い窓ガラス
そこから、歓声が漏れ聞こえる
点が入れば、皆声を上げた
ピンチの時は、声を張り上げた
近所迷惑?
そんなばかな
あの薄く、ちゃちな造りの建屋から
溢れ出てくる熱は
皆が放っていた熱は
皆が持っていた熱だ
伝えて、伝えられた感情の放流だ
流れを聞いた
世界が流す、滝の如き轟音を
そして、瓦礫が崩れる、無情の音を
どうせ、横にある
小さな駐車場に飲まれるのだろう
そんな更地が西日に照らされ
あの時の声の
興奮の墓場が立とうとしているのだと
流れを、感じた
世間の、流れ
経済という、情けなき流れを