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想い出のパス

作者: 無川 凡二

学校の賞に提出し、見事に爆死した詩です。

 私の日々は忙しい。

 辺りは数え切れない程の出来事で満たされていて、今を生きるのに手いっぱいだ。

 僅かな時間を見つけて、過去を振り返ってみようとする。

 だが、浮かぶのはこれからの予定ばかり。

 私は過去を探しにゆく。


 私の家は汚らしい。

 周りは見ていられない程の物で埋められていて、目を背けるには十分だった。

 開かないタンスを見つけて、中身を思い出そうとする。

 分からない。確認しようにも鍵がない。

 私は鍵を探しにゆく。


 鍵屋を探しに街に出る。

 商店街の三軒目、記憶がそうと伝えている。

 そこで空き地を見つけて、自分の脳裏を整理しようとする。

 そこは気味の悪い程の真っ黒に染められていて、何の手掛かりも出ては来なかった。

 私の記憶は疑わしい。


 街は移り変わり。

 想い出の手掛かりは消えてゆく。

 昔の私はいつまで生きていたのだろうか。

 今の私はあとどれくらい残っていられるのだろうか。

 私の想い出は死んでゆく。


何かを思い出すにはきっかけが必要です。

 情報化社会、効率化社会、溢れる膨大な『今』の中で私達は過去を振り返る機会を削られつつあります。

 例えば効率化が図られ縮小してゆく伝統。

 仏壇や墓というものを否定すれば、相応に死者を思い返す機会は減少します。

 ネットのニュースやSNSなどの大量の情報を確認する時間に追われ、想い出に浸る暇は減っていきます。

 何でも写真に撮って遺そうとファインダー越しに世界を見れば、写真に撮ったからという油断が認知的オフローディングを引き起こし記憶を薄弱なものにします。

 だからこそ記憶の引き出しを開ける為の鍵が必要であるはずなのに、現代の風景は恐ろしい速さで変わってゆき、知っている場所の景色を観ても知らない場所。ノスタルジーもへったくれもありません。

 今に塗れる生活の陰で、私達の過去は失われてゆきます。

 ですから、身近に残るきっかけ達は大切にしてゆきたい。そう、思いました。


御読了、有難う御座いました。

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