魔導戦隊メイジレンジャーVS地球の愛し子ピュアスター
※一応バトル?がありますので、微量ながら暴力表現が存在します。極端に苦手な方は、ブラバ等の離脱手段をご用意ください。
※都合により、以前登場した時に使われたピュアスターの魔法少女達が名乗る名前は、変更されました。外道の魔法少女ディルティネス観察記録の方も修正済みです。
パラレルでローファンタジーな世界『チック=ニ=チアサ』は、今日も賑やかです。
20XX年。
地球が様々な脅威から狙われているのは、今更な話。
狙われるようになってから、極めて稀だが正義の味方同士で集まって、なにかをする事がある。
それが発生するのは、決まって夏か冬。
恐らく長期休暇でお互いの都合をつけ易いからだろう。
集まってなにをするのかと問われれば―――
滅んだはずの敵組織の残党達が集まって起こす大規模な反抗を、みんなで討伐したり。
主義主張の違いで、いさかいが起きたり。
ただただ正義の味方達の間で、力比べをしたり。
―――今年の夏は、熱かった。
~~~
「来たなピュアスター!!」
「当たり前じゃない!あんな挑戦状を叩きつけられたら、応じてあげるのが私達よ!!」
「大のオトナがわたし達少女と戦いたいなんて、正気の沙汰じゃない頼みをしてくる勇気には応えないと……」
「やめてっ!!!挑戦状を出してから、こっちでもそこが大問題になって、ひどく絞られたのを思い出させないで!!!」
「あ……そう。それは御愁傷様ね」
「ううっ……同情や慰めも、けっこう心にクる…………」
6対5。
現在とある採石場にて、戦隊6人と魔法少女隊5人が変身済みで角を突き合わせ、挨拶をしている。
それぞれチームで意匠を合わせたような装備である。
戦隊側は全身タイツにフルフェイスヘルメットと白のベルト手袋ブーツ、それに黒い立て襟ケープつきマントと三角帽子。
魔法少女側はセーラーワンピとドレスを掛け合わせ、動き易くも要所はカワイイ装飾で彩られた、とても乙女チックなバトルドレス。
それぞれで性格に合わせ、意匠に違いは見えるが統一感を感じる。
戦隊側が呼び出した用件をざっくり言うと、キャラかぶりが気に食わない。
双方とも魔法を使う、正義の味方集団である。
現在は魔法少女達がバンバン魔法を放った影響により、地球の表面上には魔素と呼称された魔法の残滓が溜まってきている。
それに着目したスーパーヒーロー勢が、現状魔法少女達でしか倒せない敵相手でも、魔素を使えば戦えるかもしれないと研究。
結果成功し、この魔導戦隊メイジレンジャーが設立された。
実績もソコソコにあげたが、上には上が居る。しかも使う力はほぼ丸被りで、それが許せない。おいお前ら、その場所譲れ!ってな経緯である。
口では勝てそうにない戦隊側は、話を進めると言った強引な手段に出る。
「ええい、まずは自己紹介だ!!俺はメイジファイアー!火の魔法使いだぜっ!」
「私はホムラスター!焔を自在に使う魔法少女よ!!」
両者とも外見は赤。
メイジがRGBの三原色、R数値極振りに対して、魔法少女はパステルピンク。両方直情径行。
「メイジウォーター。水属性の申し子」
「なかなかキザな殿方ね。ワタシはミナモスター、水なんてワタシの思うがままよ」
メイジは原色の青、ツン気味な魔法少女はパステルブルー。魔法少女側の方が比較して目に優しい。
「メイジウィング!風は友達なのよ!!」
「ううっ、ツムジスターです……。風はわたしの分身でもあります……」
気が強く自由奔放に見える緑原色のウィングと、怒鳴られたら風のように逃げそうな、パステルグリーンなツムジスター。
「メイジストーンだ。地属性が使える」
「リクチスターだよっ!べたーって地面に寝そべるの、気持ち良いよねっ!」
どっしり落ち着いた様子の黄色メイジと、いつも元気!ちょっと慌てん坊なクリーム色スター。
「メイジカノン。一撃の火力に血道を上げる者」
「……ライカスター。致命打、トドメ担当……」
微妙に若者特有の病気が残ってそうなムッツリ原色紫女と、必要な事すら喋りたくない気配のパステルパープル。両者とも固定砲台役で、純粋な魔力塊をぶつけるタイプ。
ただしカノンは一撃で終わり、ライカは何発か撃てる。
「メイジサンダーです。雷と酸を武器にしています」
ひとり、かけていないメガネをクイクイ人差し指で持ち上げながら、慇懃無礼な態度で自己紹介する真っ黒メイジ。
「……おや?そちらはひとり少ないですね。これでは量質共に、我々の勝ちで決まってしまうではないですか」
「あー、大丈夫よ。ほら」
煽るエアメガネクイクイ男だが、魔法少女達には全く効かない。なぜなら――
『……メイジサンダー、状態:普通を状態:能力封印へ変換』
「なっ……変身が!!?」
「ほらね?」
――変身が解け、何度再変身を試みても、魔法を試みても、全く発動せず慌てるサンダー。
こいつの素顔は、ビジネススーツに七三髪、それとメガネ。典型的古き良き時代のサラリーマンそのもの。
魔法少女達は知っていた。いつもいつも姿を見せず名も名乗らず、活躍の場も良い所もピンチの見せ場も奪って行く。
どこからか飛んでくる、とても可愛らしい声を持つ憎き同業者の存在を。
「まだ自己紹介も済んでいないのに、先制攻撃とは卑怯な!!」
「5対5で対等になっただけじゃないの」
「ぐっ……!!」
「いつもは全部持ってっちゃう悪い誰かー、今のはありがとねー♪」
『……空の任意範囲、色彩グッジョブへ変換』
「へえ、案外お茶目なんだー」
ホムラスターのお礼に、親指立てたグッジョブマークを空に短時間投影して返した誰か。そのマークの下には※マーク付きで“封印は翌朝には解除されます”とある。芸が細かい所も可愛い。
……まあその誰かは、背景にある採石設備の影からこっそり覗いているのだが、暗色魔法少女服な為保護色で視認困難。うん、可愛い。
この後ギャンギャンお互いの舌戦?が入るが、内容は少し前に語ったものが大体なので、カット。
話の流れ的に魔導戦隊の(調子にのった揚げ句)暴走が主で、それをたしなめる少女達と言う、大人の威厳ゼロな展開もあった模様。
その間とても暇してた物陰の魔法少女は、アクビしたり目をショボショボさせたり、舟をこいだりしてて可愛かったです。最高の写真データが貯まる貯まる、グヘヘヘ。
その魔法少女は顔の上半分を隠すマスクしてるはずなのに、なぜ分かるか……ですか?
そんなの目をこすろうとして、マスクに気付いてちょっと隙間作って指を入れていたからに決まってるじゃないですか~。はぁ、可愛い。
「ええい!いつまで喋ってても、どうにもならん!!チームとして、どっちが強いか勝負だ!!……サンダーは離れて見ていてくれ」
いつまでもネチネチ言い合う状況に、我慢の限界が来たメイジファイアーが開戦の合図を下すと、ホムラスターもそれに応じる。
「そっちの方が手っ取り早いわ!やりましょ!!」
さすが同類。舌戦?にはあまり参加せず、イライラしてた両者。
その二人を合図に、お互いが得意とする陣形へササッと組み上げられる。
…………サンダーもノリノリで陣形に入ろうとしたが、自身の状況を思い出してトボトボ離れ、物陰へ。
「よし、やるぞピュアスター!!」
「来なさいメイジレンジャー!!」
ついに始まってしまった、正義の味方同士での戦い。
最初はチームとしてぶつかっていたが、実戦経験豊富な魔法少女達がやがて優勢になる。
焦る戦隊側は、今度は個人戦だ!とばかりに、同能力者同士の戦闘へ持ち込んで行く。
メイジファイアーとホムラスター。
お互いの火は凄まじく、周囲は火山かと勘違いしたくなる熱量に覆われ、とてもではないが一般人は近寄れない。
メイジファイアーのメイン武器はガスバーナーの火を伸ばした様な、火の剣。
対するホムラスターは焔をまとった拳と脚。
火剣と火拳。
それらがぶつかる度、その地点直下にある地面はガラス化現象に見舞われる。
メイジウォーターとミナモスター。
水道ホースを持ったキザ男とツンツンお嬢様。両者とも計算高く、力がぶつかってはお互い使う水を支配せんと、微妙に違う色合いの水を侵食し合う。
ちなみに水蒸気爆発が怖いのか、火使いふたりから出来るだけ距離をとろうと、チラチラ奴等との距離を確認する事も忘れない。
メイジウィングとツムジスター。
風や空気を操作する者同士。お互いが分厚い空気の層を身にまとい、お互いの防御である空気の層を削り取ろうと、風の刃を出し合うが決定打にはならない。
時折大気の摩擦で雷を生み出し、お互いにぶつけ合うが、結局それもお互い空気で流してしまう。
完全に持久戦の構えだが、右手に筒を嵌めた堪え性の無い気まぐれウィングと、いつも逃げ腰のツムジでは、持久戦が成り立つのかと言う根本の心配が湧いてしまう。
メイジストーンとリクチスター。
これは初手から迷走中。
お互いが石の壁で囲んで潰そうとした。
両者同じ作戦だと察して、動き回りつつ壁を作り続け、結果周囲は壁だらけ。
ついには大迷路と成り果て、お互いの姿を探し、大迷路で迷子。
水晶を掲げ持つ頭が固めなストーンと迷路で迷子となりパニックを起こしたリクチは、身体能力で壁さえ飛び越せばどうとでもなる事すら忘れ、迷路をさ迷い続ける。
お互い壁を消す事でも解決できる問題だが、いつの間にか両者とも大迷路クリアが目的となっていて、ふたり協力して出口を探している。それで良いのかボケふたり。
メイジカノンとライカスター。
こいつらは全く動かず、目の前に魔力塊を浮かべたまま冷や汗を流し合う。
一発しか撃てないバズーカを構えるカノンと、連発は出来るがカノンの攻撃を相殺した時の、爆発被害を気にしてホイホイ撃てないライカ。お互い下手に撃てないのだ。
全然動きの無い両者を見ていても面白くない。
メイジサンダーと謎の魔法少女。
両者はとても暇そうだ。
サンダーは安全地帯からみんなのバトルを羨ましそうにながめたり、自分も大迷路で遊びたいな~と羨ましく思ったり。
謎の魔法少女なんか、完全に寝こけている。
採石設備に背中を預け、手足を投げ出して昼寝の体勢だ。はい可愛い。
…………っ!風魔法に煽られて、クマさんがチラッと見えた!!フヒっ♪
個別戦闘に切り替わってからしばし。
全ての対戦状況は、魔法少女側の優勢。
戦隊が使う魔法の力は、魔法少女達が使った力の残りカスを利用した物だ。魔力の質が段違いで、その上戦闘経験……踏んだ場数も魔法少女が上。
子供と大人と言う体格差はあるが、魔法少女はそんなもの簡単にひっくり返せる。勝てるはずもないのだ。
……え、ツムジスター?
あの子は人を傷付けたくなくて、おっかなびっくり力を抑えて戦ってただけですよ?
やがて不利をハッキリ理解したメイジファイアーは、集合命令を出す。
そこで冷静になったストーンとリクチが壁を消した。
集合命令に応じた戦隊だけでなく、双方戦闘開始前の陣形へ。
「このままじゃあ勝てない!ガーディアンゴーレムを召喚するぞ!!」
ファイアーが勢いよく片手を頭上に掲げると、他のメンバーも手を掲げる。
サンダーもこっそり同じ動作をしているが、表情はとても暗い。ひとりだけ仲間外れだ、とても妬ましいのだ。涙も出そう。
『召喚!守護巨像!!』
6人の声が高らかに大空へと溶けて行き、虚空から5体分の合体済みゴーレムが現れ着地と同時、地響きが響き渡った。
「…………」
今回全く力になれないサンダーは、泣いていいと思う。
ガーディアンゴーレムの威容は筆舌に尽くしがたい。
簡単な説明をするならば、対巨大怪人用のファンタジー感溢れる超巨大な人型ロボ。
「コレを使って、お前達を踏み潰してやる!!」
ファイアーが魔法少女へ指を突きつけてそう言いきるが、恐らくマスクの下に隠れる目はグルグルしていると予測される。
「アンタ達っ!そんな物を持ち出してでも、勝ちたいの!?」
大きすぎるブツを目にして慌てるホムラだが、恐らく君達なら楽に勝てると思われる。
いつもトドメに使っている技なら、あの装甲を軽くブチ抜けるだろう。
実はそれ位、スーパーヒーローと魔法少女には力の差が有る。
科学技術と言う土台がないと使えない力に対して、夢見たあんな事こんな事なんでもやりたい!なデタラメドリームパワーを源とする魔法少女。
比べられる物ではない。
慌てるホムラ相手に余裕を見せると言う、プライドばかり先行する駄目な大人代表、鼻を鳴らすファイアー。
「大人として、君達子供に負けたら大恥なんだよ!!負けられないんだっ!!」
……駄目な大人発言を本当にしてしまった大人と、肯定してしまった他の4人。……いやサンダーも入れて5人か。
「覚悟するんだな、ピュアスターの諸君!!」
その居丈高な様子はまるで悪役。
魔法少女達に背を向け、ゴーレムへ乗り込もうとするメイジレンジャーだが、そうは問屋が卸さない。
『……ゴーレムの動力、正常から稼働不能へ変換』
寝ていたはずの可愛い弟、グッジョブ!!切り札を使う前に完封なんて、相変わらずの外道っぷり!後でたっぷり抱き締めてやろう!!ムフフフ。
『なぁっ!!!』
サンダーと言う前例により、切り札であるゴーレムがただの木偶の坊と化した事を確信し、愕然とする戦隊。
「また!……やってくれるじゃない、最高よ!!」
この援護に快哉を叫ぶホムラや他の魔法少女。
『……空の任意範囲、色彩サムズアップへ変換』
再び空に現れるグッジョブマーク。
マークの下に※で“翌朝まで使用禁止。ヒーローと魔法少女の交流を兼ねた力比べで、そこまでしてミジメに勝ちたいですか?”とあった。
『…………』
この事態へとついていけない戦隊側は、ただただ立ち尽くす。
そこにザザッ!と、良い足音をたてて接近したピュアスター。
「さあ、決着がつくまで戦いましょうか?」
良い笑顔やドヤ顔を見せるピュアスターだが、それを見たメイジレンジャーの表情は見えなかった。
……って、当たり前か。フルフェイスのマスクしてるんだから見える訳がない。
見えないが、戦隊全員の肩が震えていた。もちろん今まで見守っていたサンダーの肩も含む。
そしてファイアーの口からポロリとこぼれ落ちる呟き。
「魔法を使っても、なぜ勝てない」
それは心からの言葉である。
物理的な何かならば、スーパーヒーロー達で対処できる。
だがオカルト的な何かになると、年端もいかない幼気な少女達に、地球や世界の命運を託さなければならなくなる大人達。
コレを悔しく感じないなら、責任ある大人ではない。
そう言った意味でも、ここでどうしても勝ちたかったのだ。
なのに、全く勝てない。大人達に任せてくれ!と言えないのだ。それはどれだけ悔しいだろうか。
そして、そこまで高みに居る魔法少女達へ、どれだけの嫉妬を抱かせるだろうか。
その気持ちがどこまでも増幅し、メイジレンジャーが使う魔力は負の感情を受け、変質する。
「なぜだ!なぜ勝てないんだ!!勝ちたいんだよ!どんな手を使ってでも!!大人の威厳を、見せたいんだよぉっ!!!」
ファイアー、負の魔力をもって魂の絶叫。それに影響を受けた他の隊員からも負の魔力が溢れ出す。
出る量はサンダーが一番だ。今回なにも出来ていないのが、後押しになったのだろう。
溢れた負の魔力は天へと上り、そこで集まり蟠る。
蟠った魔力がグニョグニョ蠢き、それはやがて巨大な人型をとった。
その人型はゴーレムの隣に着地。大きな地響き。
出てきた人型はとても巨体。没個性な服装で、派手なネックレスを複数かけた、とっぽくてチャラいアンチャン。
この姿を見た事のある人物は、ここにはふたり。あたしと弟。
そう、あいつは……。
『クハハハッ!ダークサムシングのビッグサム、チョーシットー様復活ゥ!!』
自己紹介された通りの存在。負の感情、嫉妬の化身。
『正義の味方が出す嫉妬は大変に美味だった!!お陰で巨大な姿で復活だぁ!!』
大変な事態である。正義の味方が、悪い存在を生み出してしまった!
『俺の分類をこれから、ビッグサムではなくスーパービッグサムと名乗ろうか!!それに併せて、個体名チョーシットーもチョースーパーシットーへ変更かなぁ?』
この騒動が終わったら、メイジレンジャーは大目玉だろう!
『こい、プチサム達!!』
下手したら減給より酷い罰かもしれない。
『クハハハッ!!こいつは愉快だ!プチサム達も巨大化している!これは最早、プチビッグサムだな!!』
白い変な模様の入った全身黒タイツに目出しマスクのプチビッグサム(自称)を、自らの影から30体は生み出して、とても楽しそうに嗤うチョースーパーシットー(自称)
その愉快さを示すように、木偶の坊となったゴーレムの背中をバシバシ叩く。
叩かれたゴーレムは叩かれる度に盛大な火花と煙と衝撃波を放ち、周囲の空気をドカンドカンと揺らす。
その威力と迫力に負けて、尻餅ついてアワアワしたり立ったままオロオロしたり。スーパーヒーローや魔法少女たる者達が、こんなザマだなんて情けない。
『さあ、まずは目の前のアリ達を踏み潰すところから始めようか!!』
正義の味方達が恐慌寸前。
そんな時、この場全体に伝わる可愛らしい呟き声。
『……プチサム達、性質を“負から正、変換”』
これにたまげるのは、チョースーパーシットー。
『また!?何処にいる!!謎の魔法少女ぉぉ!!!』
そう、またである。
前回負けた道筋を、再び。
魔法少女の呟きの後から、プチビッグサム達全員に異変が起こる。
みるみる内に黒かった全身タイツが白に。模様の色はドピンクへ。それは視覚の暴力とも受け取れる、目に毒な光景。
今回は図体がおぞましくデカい為、その暴力度合いも比例して大きい。
それがとっぽくてチャラいアンチャンを囲むのだ。これはかなり酷い光景。
『止まれ、プチサム達っ!!俺はおまエ゛ランドっ!!?』
でっかくて白い全身タイツが集団で、チャラ男をボコす。ボコす。ボコす。
今回は図体の関係で動きが若干にぶく、一度転がされて起き上がろうと抵抗しても、動作する前に集団でボコされる。
つまり全く打つ手なし。
チョースーパーシットーの近くにあったゴーレムは囲む邪魔になるからと、ここまでの間に離れた位置へとプチサム2体が移していた。
この流れを、信じられないものとして、眺めるしかない正義の味方達。
サンダーなんてプチサムが起こす地響きを感じる度に、メガネクイを繰り返す。
「えっ、なに?あの子って、あんなの相手でも楽勝なの……?」
はい、楽勝なんです。
「俺……どんなものに勝負を挑もうとしたんだ?」
あたしの可愛い可愛い、大切な弟に……です♪
『くそぅ、今度こそダークサムシングの栄華を、この地球に……がく』
結局抵抗らしい抵抗が出来ず、正義の戦闘員となったプチサム達に倒されたチョーシットー。
この光景をサクッと生み出せる弟は、やはり外道の魔法少女ディルティネスである。
『……また、ありがとね』
感謝の言葉に応じたプチサム達は、弟がどこにいるのかわからない為、方々に手を振ってから光となって消える。
「……助かったぁ」
尻餅ついてそのまま女の子座りしていたホムラスターが、ぽつりともらす。
「アレ、ガーディアンゴーレムでも倒せる気がしなかった……」
続いてオロオロしていたメイジファイアーも。
いや、あたしならあんなデカいだけのチョーシットーなんて、簡単に焼いてヤれますよ?
「わたし達じゃあ、プチサム2体を倒せれば良いくらいだった……」
ツムジスターが泣き言を言えば、
「ゴーレムなんて、1体すら無理よ」
メイジウィングが悲観する。
「あの子ひとりで、地球はしばらく安全なんじゃないの?」
言ってはならない事を、立ち尽くしたまま言ってしまうミナモスター。
と、それに納得してしまう他の連中だった。
~~~
「ただいまー」
「お帰りなさい、久秀」
帰って来たモブい外見の弟に、思いっきり抱きつくあたし。
「うわっ!ねね姉さんが何時もより酷いくっつき方だ!」
「酷いって言葉の方が酷い!あたしは常日頃“ひーちゃん”って呼びたいのを我慢してるんだよ!!」
「それ小さい頃の呼ばれ方!!もう大きくなったんだから、それはやめてよっ!」
「可愛い弟は、いつまでたっても可愛い弟!あたしはひーちゃんと呼びたいんだよ!!」
今日はアンタはとても頑張ったからね、いっぱい誉めてあげたいのよ!!
オラ、もっとギューーじゃい!
ここは扉が開いてる玄関?知らんなぁ、家族愛に場所など不粋な質問よぉ!!フハハハハッ!!
「やめて!ひーちゃんは絶対にやめて!!」
「ケチー!!」
「ケチとかじゃないの!恥ずか死ぬから、絶対に断る!!」
「いやーー!絶対にもっと可愛がるのぉー!!」
「どんな拷問だチクショーーー!!!」
これは外道の魔法少女に変身する弟と、それを見守るのが趣味なあたしの、ほのぼの観察記録の一部である。
チック=ニ=チアサ世界名物、設定垂れ流しあとがきの時間です。
苦手・興味がない方等は、ここまでの読了有り難うございました。楽しんで頂けたでしょうか?
また同じ世界観か別物か……それは分かりませんが、また自分の拙作を読んでいただける事を期待しております。
本当にありがとうございました。
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以下、乱雑Q&A式設定乱舞です。
Q.戦隊の呼び出し用件と、魂の絶叫が違くね?
A.大人の本音と建前です。戦える大人としての矜持。胸に秘めた矜持を晒す恥ずかしさより、周囲から白い目で見られる方がマシだと用意した建前です。
Q.今回の騒動の後は、どんな流れで解散になったの?
A.場が白け、チョーシットーの発言で正義の味方が嫉妬は醜いな、うん。とか変な会話を結論とし、お互い頑張りましょ!とかエールをおざなりにし合ってバイバイになりました。
Q.結局強さの序列はどうなってんの?
A.ディルティネス≒姉>>>>>魔法少女>>越えられない壁>>スーパーヒーロー。ディルティネス自身理不尽の塊だけど、姉も太陽の力を持つ理不尽な程強い魔法少女で、どっちが勝つかは戦い方次第。普通の魔法少女も相当な強さだけど、上には上がいる。
Q.本当に姉なら連中を焼けたの?
A.楽勝。コロナバーストと呼ばれる必殺魔法を使い、広範囲を超高温にてあぶって一発こんがり。
Q.チョーシットーは強い?
A.大罪ですからね、強いんです。普通の大きさのチョーシットー相手なら、ピュアスター達がズタボロで撃退辛勝。次の敵が出るまでに、パワーアップか新装備か新たな仲間が必要になる、そんな重要な転機となる敵です。
Q.エランド?
A.検索したら、そんな名前の動物が居るそうです。
Q.サムズアップとビッグサム……えっと?
A.放っておいてください。
Q.戦隊の男女比が知りたい。
A.ウィングとカノンが女性、他が野郎です。4:2……ええと、つまり2:1ですね。
Q.ウィングの右手の筒って……。
A.ドカーン!!
Q.ファイアー?ファイヤーじゃね?
A.アーでもヤーでも良いのです。しかし、火の紋章ならファイアーが正解。……まあ、正しい読み(呼び)方なんてテキトーですよ、テキトー。
Q.魔法を使う戦隊のロボはゴーレムじゃないだろ?セルフで巨大化だろぉ!?
A.そこまでやるとアレですので、あえてゴーレムとしました。
Q.戦隊の第6の戦士と言えば別意匠の衣装でしょ!?
A.そこまでアイデアやデザインを練っていられんのです(涙目)
Q.メイジサンダーの活躍は……?
A.無いです。奴のバトルスタイルは、雷より酸を得意とするでしょう。見た目真っ黒でアリだし、まんま蟻酸が連想されるし。サ、サンダーーー!!
Q.ピュアスター達の衣装!説明不足だよねぇ!?
A.細かく描写してたら、話が全く進まないのです。そこは皆様の妄想で是非補完してあげてください。
Q.ピュアスター達の一人称(+口癖?)が知りたい。
A.ホムラスター「私」
ミナモスター「ワタシ」
ツムジスター「わたし……」
リクチスター「ウチっ」
ライカスター「……ボク……」
Q.ディルティネスを詳しく。
A.同シリーズである外道の魔法少女ディルティネス観察記録をご覧くださいませ。
Q.ディルティネスの姉……。
A.同シリーズの、外道の魔法少女ディルティネ(以下略)
Q.結局、これは誰の視点なの?
A.終始ディルティネスの姉視点です。
Q.ならモノローグ?の文体の乱れは?
A.普通は傍観者の立場で、弟が関係すると超個人的な立場で喋る?ので、ブレるのは当たり前です。