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縦積み

作者: 皿日八目

 ある街があった。

 ただの街ではない。

 ゴミだらけの街である。


 ゴミで埋まっていない家も、道も、ひとつとしてなかった。街全体に悪臭が立ち込め、どんな動物も近寄らなかった。その街に住んでいる人々は、なんとかしようとは思いつつも、どうしようもなく、ただ無気力に毎日を過ごしていた。


 そんな街に、ひとりの男がやって来た。彼は街の至るところで、あなたのゴミを片付けましょうと喧伝した。

 何日かして、次第に依頼が来はじめた。彼はトラックに依頼者のゴミを詰め込むと、長方形の空き地へ捨てに行った。その様を見た者はみな笑って言った。この街にいったいどれだけのゴミがあると思っているのか。こんな狭い空き地、すぐさま一杯になってしまうだろう、と。


 何回も、何回もゴミを運んでいくうち、とうとう空き地は一杯になった。この街を綺麗にしようと試みる者は男の前にも何人かいたが、みなこれが原因で諦めてしまうのだった。つまり、捨てる土地の不足である。

 しかし、空き地が一杯になっているにもかかわらず、男は依頼を受け付け続けた。空き地の周辺に住む者は不審がった。まさか、自分たちの土地にまでゴミを運ぼうとしているのではないか、と。


 そうではなかった。男はゴミを縦に積み始めたのだ。縦に積めば、他人の土地を侵すこともない。

 ゴミの塔はどんどん高くなっていった。街のゴミが減れば減るほど、ますますその頂上が雲に届くほど伸びていく。

 そしてついに、街からゴミが消えた。



 これが、あの世界的建築物完成までの顛末である。



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