伝言
お風呂を作って3日、相変わらず盛況だった。
「いつまででも入っていられるような、いい湯加減だよな。」
「ロキシスには感謝してもしきれない。」
「早く俺達も上手く火系と水系の魔法を使えるようにならないとな。」
何人かは既に調節して魔法が使えるようになっていたが、熱さや量が疎らなのでロキシスが監督にやって来ていた。
「うん、丁度良さそうだ。」
「良かった。これならもう覚えたよ。」
「俺も覚えたぜ。」
エリナとティルが今日は沸かしていたが、確かに2人とも筋が良く、あっという間に覚えた。
「薪を使わなくていいってのがこんなに楽だなんてな。」
「薪も使うタイプの風呂もあるけどな、森の木が可愛そうだろう?」
「確かに、直ぐに減りそうだもんね。」
そんなやり取りをして、ロキシス達は風呂を満喫する。と、ロキシスが不意に村の入り口の方を見る。
「…どうした、ロキシス?」
「誰か来たみたいだ。」
「そりゃ風呂には皆来るだろう?」
「いや、村の入り口に誰か来ている。」
「まさか…ヒューミルか?」
「感じたことの無い気配を感じる。ルードが向かったようだが…」
「心配だな。行くか。」
そう言って、風呂からあがって村の入り口に向かう。ロキシスとティルが到着すると、屈強な男達が3人、ルードと話をしていた。
「…というわけでロキシス殿と話がしたいだけなのだ。」
「うむ…しかし今は風呂に入っている筈なのでね。」
「俺に用事か?」
「ロキシス、来てくれたか。」
「貴殿がロキシス殿…?」
「そうだ。あんたたちは?」
「我々はハギャ様の命で来たものだ。それで、貴殿に一緒に来ていただきたい。」
「嫌だ。」
「話が早くて…嫌と申されたか?」
「お前達に付き合ういわれはない。早く帰れ。」
そう言って、踵を返すロキシス。それに対してヒューミル達は、
「我々と敵対して、ただで済むと思っているのか!?」
と言ってきた。
「今この場で、この村を根絶やしにすることも…」
「たった3人でか?やれるもんならやってみろ、ただし…」
ロキシスは再び振り返って、
「お前等は殺さずにヒューミルの街まで連れていって、お前等の目の前で全ての人間を抹殺してやる。」
睨みつけてそう言った。
「巫山戯るな!」
そう言って襲いかかって来た男の頭部を右手で掴み、ジワジワと力を込める。男の頭部からメキメキと嫌な音がする。
「…止めてやってくれ。」
ヒューミルの代表格の男がそう言う。ロキシスは手を離すが、既に気絶していた。
「次はお前等の番だ。」
「元々敵対の意思はない…と言っても無理があるか。」
「前に呼び出されたときにもそうだ。お前等はこの村に悪意を持っている。俺はそれを排除するだけだ。」
「今回呼んだのは、ある大会に出てみないかというお達しなんだよ。」
「大会?」
「あぁ。武道大会だ。」
「そんなもん、お前等だけでやれよ。俺には関係ないだろう?」
「最強のヒューミルを決める大会で、是非にと言っていた。」
「生憎と俺はヒューミルじゃないからな、とっとと帰れ。」
「出るなら帰るが、出ないと言われたらその気になってくれるまでこの村にいる。」
「…俺にメリットが無い。」
「一生遊んで暮らせる金を払う。」
「この村で使えない物貰って、嬉しいと思うか?」
「…」
「まあいい。いつやるんだ?」
「…七日後だ。」
「解った。出てやるよ。ただし…」
「ただし…?」
「金輪際エミル族に何もしない。それが賞品だ。違えれば、お前等全員皆殺しだ。」
「解った。そう伝えておく。」
そう言って男達は帰って行った。
「ロキシス、大丈夫なのか?」
「なにがだ?」
「相手はヒューミルだ。約束を守るか解らないんだぞ?」
「村には配下の召喚獣を置いていくし、いざとなったら逃げてくるさ。」
「またフェンリルをモフモフ出来るの!?」
「エリナ、緊張感がなくなるから…」
「まあ好きにしたらいい。ともかく、あいつらが挑んできたんだ。どうなっても知らない。」
そう告げて家に戻っていくロキシスを見守ることしか出来ないエリナ達だった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




