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エルフの森の最強神(ロキシス)  作者: ミュウ
再会編
3/86

エリナ

とりあえずロキシスは体の調子を確認してみた。元より動いている両手はともかく、体全体に倦怠感があったからだ。立ち上がると、少しふらついた。

(どうやら、長い間眠っていたようだな。)

そう感じて、少しずつ体を動かす。

(そうだ、カグラは何処だ?)

カグラを探すが、近くには無かった。しかし、意識の中で会話できることを思い出して、

(カグラ、何処だ?)

と、呼びかけてみた。すると、

(隣の部屋にいますよ。)

そう返事が来た。ロキシスは部屋の扉を開けて、隣の部屋に移動する。大事そうに壁にカグラはかけられていた。

(もう大丈夫なんですか?)

(あぁ、俺はどれくらい寝ていたんだ?)

(1週間程です。)

カグラにそう言われて、自分が何をしたのか思い出した。かなりの長距離を魔法で移動し、飲まず食わずの状態だったなら仕方ないことだと思った。

(それで、ここは何処だ?)

(あの女の子の家みたいです。何人かの人があなたをここへ運び込んで、女の子が世話をしてくれていましたよ?)

(そうだったのか…)

と、ロキシスがいた部屋では無く、玄関らしい扉が開かれて、女の子と、一人の男性が入って来た。

「おや、もう起き上がって大丈夫なのですかな?」

男性がそう聞いてきた。

「あぁ。どうやら世話になったようだな。」

「まぁ、殆どこの子が世話をしていたのだがね。とりあえず座らないかい?」

そう言って、椅子に座る男性。女の子も、席をロキシスに指差して、座るように促していた。それを受けて、ロキシスは椅子に座った。と、不意にロキシスのお腹がぐ~と鳴った。

「おや、お腹が空いているのかい?」

「長い間寝ていたようなんでね。」

「そうだな。1週間は寝過ぎだと思うが。」

「そういや、自己紹介がまだだったな。俺はロキシスという。助けてくれて有難う。」

「ロキシスか。私はルード。こちらの子はエリナという。」

「済まないが、そこのコンロを貸してくれないか?」

そう告げると、エリナはコクコクと頷いた。ロキシスはコンロの前に立つと、ドラゴンの肉を異空間から取り出し、焼き始めた。

「まさか…収納魔法か!?」

「あぁ。」

「それ程までの魔法を使えるとは。ロキシス、君は一体?」

「まぁ、食事のついでに話そうか。」

ドラゴンの肉を焼きながら、ロキシスは今までの人生を語った。ただし、ロキの話と、自身が神であることは伏せておいた。

「それで、この大陸に着いたんだ。」

「なる程、にわかには信じられないが、このロッキーナ大陸に来た理由は解った。」

ドラゴンの肉をたらふく食べて、落ち着いたのか、ロキシスは眠気に襲われていた。

「もう暫く休養したいんだが、何処か空いている家は無いか?」

「ふむ、この家の隣に空き家がある。そこを使うか?」

「そうか…それはありがたい。」

そこまで言うと、エリナがロキシスの手をとって、首を横に振った。

「どうやらエリナはこの家にいて欲しいらしい。」

「しかし、俺がいるとベッドで寝られないんじゃ無いか?」

そう言うと、エリナは残念そうに項垂れてしまった。ロキシスはエリナの頭を撫でて、

「解った、ここで厄介になるよ。」

と伝えた。すると、エリナの表情がパッと明るくなった。

「しかし、エリナは喋れないのか?」

「…数年前、両親を亡くしてから一言も発していないのだ。会話は理解しているが、我々は文字でやり取りしている。」

「そうか、済まない。」

「何を謝る必要がある。」

そう言って、ルードは立ち上がり、

「今暫くゆっくりと休むが良い。」

そう言って出て行ってしまった。後に残されたロキシスとエリナは顔を見合わせて、

「…とりあえず、眠らせてくれるか?」

そうロキシスがエリナに言うと、エリナがコクンと頷いた。食事をした部屋にソファーがあったので、ロキシスはそこに横になる。エリナが近づいて来て、心配そうな顔をする。

「流石にベッドは君が使うべきだ。大丈夫、何かあったら直ぐに伝えるさ。」

「…」

エリナは納得して、奥に下がり、毛布を持って再び戻ってきた。そしてロキシスに優しくかけた。

「有難う。」

ロキシスが礼を言うと、エリナはニコリと笑って、再び部屋へと戻っていった。

(ロキの雰囲気はあるが…)

そこまで考えたが、直ぐに寝入ってしまい、思考はそこまでで途絶えた。


再び目を覚ましたのは夜中だった。喉が渇いたので、アクセスを使って水でも飲もうかとすると、体の上が少し重いことに気が付いた。目を開けて見てみると、エリナがお腹の上で、抱きついて眠っていた。よく見ると、目頭に涙が浮かんでいる。

(…一人で寂しかったのか?しかし、一応大人に近い体つきなんだから…)

そう考えてから、ロキシスは起こさないように気をつけながらソファーを抜け出して、エリナを抱き抱えてベッドへ連れて行く。穏やかな顔をして眠る女の子に、自然とロキシスは笑顔になる。

「ロキ…本当に転生したんだな。でも…俺のことは覚えていないようだ。それが1番寂しいよ…」

ロキシスはベッドに運ぶと、手を握りしめて、一人愚痴った。

読んでくださっている方々、有難う御座います。

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