帰還
戦いが終わると、エリナとフェニックスが上空から降りてきた。心配そうな顔をしてエリナがロキシスに近付く。
「ロキシス、大丈夫?怪我とか…していない?」
「あの程度の攻撃、全て見切っていたからな。俺は無傷だよ。少々メテオで魔力を使ったけどな。」
「ロキシス様、あの魔法は…?」
「以前レーヴァテインに教えて貰った禁術の一つでね。詳しくは解らないが、強力な魔法さ。」
「あれほどの魔法…ロキシス様の体が心配です。」
「大丈夫だ。昔は苦労したけど、今は連発さえしなければ安定して使える。」
「そうですか…」
「それよりロキシス、この人をどうするの?」
エリナがデミール族の王を見て言った。
「放っておけば勝手に再生するだろうな。心臓や脳は無事だから。デミールはそういう種族だろ?」
「ぐ…知っていたか…」
「昔ある人から教えて貰ったんだよ。お前の部下は全員まとめて潰したけど、お前はどうする?生きたいか、それとも死にたいか?」
「私に…決定権は…無い…のだろう?」
「いや、もしこれ以上俺やエミル達に手を出さないと誓うなら、生かしてやってもいい。ヒューミルと戦争したけりゃすればいい。」
「くっ…どう…せ、このままでは…ヒューミルには…負ける…がな。」
「だろうな?ある程度強い奴らは軒並み死んでいるだろうからな。兎に角、エミル達に手を出すな。それだけだ。」
「解り…ました。」
そこまで話して、デミールの王は気絶したのか、それ以上何も話さなかった。
「さてエリナ、帰ろうか。」
「でも…」
「ルード達が心配していた。早く帰って安心させてやりたい。」
「…そうですね。帰りましょう。」
その言葉を聞いて、ロキシスは安心し、エリナを抱きかかえて再びフェニックスに跨がった。
「フェニックス、エミルの村まで頼む。」
「ロキシス…恥ずかしいよ。」
「フェニックスに振り落とされないようにするにはこうするしかない。」
「急ぎますか?」
「ゆっくりでもいいが、エリナに負担がかかる飛び方は止めてくれ。」
「解りました。」
フェニックスは返事をして、上空へと飛んでいった。
村ではどうしようかと話が纏まらないでいた。
「ルード、やはり助けに行こう!」
「ティル、落ち着け。」
「ロキシス一人じゃ危険すぎるわ。私達にも、出来ることがあるはず。」
「…我々が下手に出ていけば、ロキシスの邪魔になるとは考えないのか?」
「それは…」
「なぜロキシスがトリマー殿をここに残してくれたのか、その意味を考えるんだ。それに…私はロキシスを信じている。きっとエリナを助けてくれると。お前達は信じていないのか?」
「…信じているさ。でも、何もかも任せっきりなのは嫌なんだよ。」
「ティルに同じ。何でもかんでもロキシス任せなのはちょっと…ね。」
「気持ちは解るが今は信じよう。」
「あー、話している最中申し訳ないが。」
不意にトリマーが発言する。
「どうされた、トリマー殿?」
「今フェニックスから念話が届いた。ロキシス様もエリナという少女も無事だそうだ。後1時間程で帰ってくるそうだ。」
「本当か、トリマーさん!?」
「うむ。あやつは嘘をつかんからな。」
「ルード、出迎えの準備をしよう!」
「そうだな。」
そう言って、村人総出で出迎えの準備をした。そしてきっかり1時間後、ロキシスとエリナを乗せたフェニックスが村に到着した。
「ただいま。」
「お帰りなさい、ロキシス、エリナ!」
フィオーレが駆けだしてエリナを抱きしめる。ロキシスはそれを見て、笑顔になった。
「ロキシス様、お疲れ様でした。」
「トリマー、体は大丈夫か?」
「ここの水は素晴らしい。1時間と言わず何時間でもこの姿を保てそうですよ。」
ハッハッハッとトリマーが笑いながら話す。
「トリマー、フェニックス、お前達には感謝仕切れない。」
「何を仰ります。全ては主の為。なあ、フェニックス。」
「次はフェンリル達も呼んであげて下さいませ。きっと喜びます。」
「解った。」
そう言うと、トリマーとフェニックスは消えていった。その場に残されたのはロキシス、フィオーレに抱きつかれたエリナ、ティル、エリナに抱きついて泣きじゃくるフィオーレ、ルード、そして村人達だった。
「ロキシス、先ずは礼を言う。有難う。」
「なーに、気にするな。」
「助けて貰ってばかりだな、俺達。」
「ルード、ティル、俺達は家族だろう?俺はお前達の為なら命だって投げ出せる。だからいつでも頼ってくれ。そうじゃないと、俺の力は無駄になる。」
「家族…か。そうだな。」
「そうだよな、ロキシスもエリナも俺達全員の家族だもんな。」
そう話してみんなでその日は無事に帰ってきたエリナを祝って宴会になった。またロキシスが村の中心になって料理を作りまくったのは別の話である。
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