ロキシスの話
その日も生憎の雨で、仕事は無し。ロキシスの家には今エリナ、ティル、フィオーレ、ルードが集まっていた。
「しかし、雨の日は暇でしょうが無いな。」
「まあ偶には休みも良いじゃない。それに、畑に水を撒かなくて良いからこっちは大助かりよ。」
「ふむ。今年は例年以上に豊作だったし、ロキシスのお陰で肉類や木の実も沢山ある。」
「それはどうも。」
ロキシス達はお茶を飲みながら寛いでいた。
「そう言えば、ロキシス。」
「ん?どうした、フィオーレ。」
「前にルードさんから聞いたのだけど、この島の人じゃないのよね?」
「あぁ。飛行魔法で飛んできたからな。」
「カレーもそうだけど、ヒューミルって色々なことを知っているじゃない?それを教えて欲しいんだけど?」
「村人全員にまとめて教えるから、そこは心配しなくていいぞ。」
「そうだぜ、フィオーレ。今ロキシスは狩りのことで男達に色々教えてくれているんだ。これ以上忙しくするのはちょっと…な?」
「それは解るけど…」
「一日おきに、男と女に教える日を設けたらどうだ?」
ルードがそう言う。
「確かにそうだな。」
「でも、ロキシスの負担にならない?」
エリナが心配そうに言う。
「俺は構わない。ところで、村の警備のことだけど…」
ロキシスが話題を変えようとする。
「この間のデミール族の襲撃もあるし、村に何人か男を残したらどうだ?このままだと安心して狩りが出来ないだろう?」
「それはそうなんだけど…」
フィオーレは申し訳なさそうな顔をする。ティルも同じような顔をして、
「俺達、対人戦ってのが出来ないんだよ、全員。」
「魔物や動物は狩れるのにか?」
「元々、我々エミル族は争いを好まないからね。そのせいで圧倒的に数が少ないのだ。」
ルードが付け加えていう。
「うーん、皆に戦い方を教えると、途轍もない時間がかかりそうだな。」
「ロキシス、何か良い考えがあるの?」
エリナがロキシスを見ていうと、ロキシスは少し考えて、
「家にプロテクトの魔法をそれぞれかけたから、家に入れば安全だがな。」
と言った。確かに襲撃前からロキシスは各家にプロテクトの魔法をかけていた。襲撃を受けたときは外に出ていたので効果が無かったのだが、悪意を持つ人が入ろうとすれば、それを防いでくれる筈だった。
「どちらにせよ、何人か鍛えて持ち回りで警備についた方が良いかもな。最悪、時間稼ぎさえして貰えれば、俺が対処できる。」
「ロキシス、前から思っていたんだけど、どれくらい強いの?」
フィオーレが質問する。
「サーベルウルフさえも屠る強さを、何処で手に入れたの?」
「…まあ、そろそろ話しても良いかもな。俺がどうやって強くなったのかを。」
そして、天界での修行の日々を語って聞かせた。
「そんな過酷な修行を…」
「強さの理由は解ったわ。でも、なんのためにこの島に来たの?」
「そこまで聞くの?」
エリナがフィオーレを止める。これ以上聞くのは酷だと思ったからだった。
「…」
「ここまで話したのだ、最後まで話しても良いのではないか、ロキシス。」
「あぁ。俺がここに来た理由は、エリナに会うためだ。」
「私に…?」
エリナはドキッとした。
「俺の最愛の人、ロキの生まれ変わり、それがエリナなんだよ。」
「そんな…」
「どういうことだ!?」
フィオーレとティルがくってかかるので、ロキシスは全ての事情を話した。自分の名前も全て、あったこと全てを。
「ロキ様が…亡くなっていただなんて…」
「にわかには信じられんが、ロキシスが言うのだ、間違いないだろう。」
「その力は俺と共にあるが、魂は転生してエリナの中にある筈なんだ。どうやって力を戻そうか考えていたが、それも今はどうでも良い。」
「…どういうこと?」
「ロキはロキ、エリナはエリナだ。俺の一存で変なことをして、エリナを失いたくない。」
「ロキシス…」
隣に座っていたエリナがそっと、ロキシスの手を握る。
「俺にとっては、2人とも大事なんだ。どちらかを失うなんて考えられない。だから、1度天界に戻ろうと思う。」
「どうしてよ、ここに居ればいいじゃない?」
「エリナとロキ、両方を救う方法があるはずだ。それを他の神に聞いてくる。」
「ロキシス、無茶はしないで…」
「大丈夫だ、エリナ。必ず解決策を見つけてくるから。」
そうして二日後の晴れた日に、ロキシスは天界へのゲートを開いて天界へと赴いて行った。
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