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エルフの森の最強神(ロキシス)  作者: ミュウ
声編
13/86

エリナの叫び

ロキシスがエリナを治療して数日後、ロキシスはティルや他の男達と共に森に狩りに出掛けた。その間、エリナとフィオーレは村にある畑で作物を収穫していた。

「ふぅ、今年も良い出来ね。」

フィオーレがそう言うと、エリナもコクンと頷いた。

「エリナ、やっぱり話せそうに無い?」

フィオーレがそう聞くと、エリナは申し訳なさそうな顔をする。

「う~ん、ロキシスの見立では、心の傷だからなぁ。まあ、ゆっくりと話せるようになるわよ。」

「…」

エリナはまた残念そうな顔をする。数日間、エリクサーの効果を浸透させても、エリナの声は戻っていなかった。それでもロキシスは諦めてはいない。その事がエリナにとってとても心苦しい事であった。

「…?」

と、村の入り口の方からざわざわと声がする。

「何かしら?エリナ、行ってみましょう。」

エリナはコクンと頷いて、フィオーレの後に続いて、村の入り口の方へと向かった。村の入り口では、村長が見知らぬ誰かと話をしていた。

「それは困る。」

「そう言うなよ、我々デミールの配下になったら、もっと良い暮らしが出来るんだぜ?」

どうやらデミール族の連中が3人、村に来たようだった。

「私の一存で、それを決めることは不可能だ。悪いが帰って貰いたい。」

「クックックッ、俺達もガキの使いで来た訳じゃねぇ。なぁ、村にいるのはあんたらだけか?」

「だとしたらどうだというのだ?」

「ヘッ、丁度良い。おい、後ろの女2人、お前達を可愛がってやるからこっちに来い。」

「なっ!?」

そう言うと、男の一人がエリナとフィオーレに近付こうとする。

「止めろ!」

「うるせぇ!」

バキッと音をたてて、ルードが殴られ、吹き飛ばされた。

「そ、村長!」

「…!」

「に、逃げろ2人とも!」

ルードがそう言うが、エリナとフィオーレは足が竦んで動けない。

「まあ、大人しくしとけや。直ぐに気持ち良くしてやるからよ。」

下品な笑い声を立てて、男達が2人に近付く。と、そこでエリナは思い出した。ロキシスから笛を渡されていた事を。慌てて笛を取り出し、力一杯吹く。

「なんだ?何の音も鳴らねえ笛なんざ吹くよりも、俺と楽しい事をしようや。」

更に男達が近付いてくる。

「エリナ、逃げて!」

フィオーレが男達に殴りかかる。が、

「大人しくしてなって!」

雷系の魔法を男が使い、電撃に打たれてフィオーレが倒れた。エリナはフィオーレに近付いて抱き起こす。

「ばっ、バカ!はっ、早く逃げ…て!」

「暫くまともに動けねえよ。しかし面白くねえな。よし、お前等にその女はくれてやる。俺はまだ元気なその女とやるからよ。」

ヘっへっへっと、3人の男達が近付いてくる。エリナは恐ろしく感じて、

「ロキシス…」

と、小さな声を上げる。

「は?なんだって?」

「ロキシスー!」

今度は大きな声でその名を呼んだ。

「へっ、誰が来たって同じ事だ。」

「俺達に勝てる奴らなんざ、エミルにはいねぇよ。」

そう言って、エリナに触れようと手を伸ばした瞬間、横からの衝撃で3人共吹き飛ばされた。

「がは!」

「ぐへ!」

「げふ!」

大木や壁に叩きつけられて、男達が息を吐く。エリナが見たものは、ロキシスの背中だった。

「ロキシス!」

「よう、エリナ。思った通り綺麗な声だな。無事に声が出て良かった。」

「ロキシス、フィオーレが…村長が…」

「大丈夫だ。」

そう言うと、ロキシスは高速で移動し、倒れていたルードを抱えてエリナの元へと近付く。そして、ルードとフィオーレを寝転がして、ヒールの魔法をかけた。

「ぐ…てめえ…!」

そこで男達が目を覚ましたらしく、こちらへ向かって来た。

「やれやれ、もう少しで治療が終わるのに…」

「てめえ、何者だ!?」

「エリナ、奴らを片付けてくる。2人の事を頼むよ。」

「ロキシス、気を付けて。」

「大丈夫だ。」

ロキシスは笑顔でエリナの頬を撫でると、男達に向き直った。

「質問に答えろ、てめえは…」

「五月蠅い!俺は今、無性に腹が立っているんだ!」

ロキシスが男達を睨む。

「エリナが初めて喋ってくれた。でも、それを悲鳴にしやがって!てめえ等、覚悟は出来てんだろうな?」

「やっちまえ!」

男達3人が同時にロキシスに襲いかかってきた。だがそこは百戦練磨のロキシス。最初の一人にボディーブローを叩きこみ、次の男をアッパーカットで顎を砕き、最後の男にはローリングソバットを叩き込んで沈黙させてしまった。しかも一瞬で。

「やれやれ、サーベルウルフの方が強いよな、やっぱり。」

そう言うと、ロキシスはローリングソバットを叩きこんだ男の髪の毛を掴んで持ち上げ、腹に拳を叩き込んで起こした。

「ぐはっ!」

「てめえ等、この村になんのようなんだ?」

「…」

「言いたくない…か?なら死ぬか?」

ロキシスは髪の毛を掴んだまま投擲の態勢を取り、力一杯壁に投げつけた。グシャと嫌な音を立てて、男の頭が壁に対してつけられて潰れる。

「さて次は…お前だな。」

顎を砕かれた男の髪の毛をまた掴んで持ち上げて、ロキシスは同じように質問する。今度は答えようとするが、顎が潰れて声が出せないようだ。仕方なくヒールで最低限顎を治してやると、

「お、俺達は…ただ…安息の地が…欲しかった…だけなんだ…」

「安息の地?」

「そっ、そうだ!俺達は…ならず者で…デミール族からも疎まれて…なあ、た、頼むよ。見逃して…くれ…」

「…」

掴んでいた髪の毛を離して地面に降ろし、ロキシスは男に対して、

「2度とこの村にくるな。約束を違えたら、さっきの奴の二の舞にしてやる。」

と、いった。男はもう1人の男を抱えて村から出て行った。それを見届けて、ロキシスは再びルードとフィオーレの治療を続けた。

「ねえ、ロキシス。2人は大丈夫なの?」

「勿論だ。直ぐに目を覚ますよ。」

「…良かった、本当に良かった。有難う、ロキシス。」

「…」

「…?どうしたの、ロキシス?」

「いや、話せるようになる前から、エリナってこういう子かと思っていたんだ。想像通りの声だったし、話せるようになって良かった。」

「…!ご免なさい。」

「何を謝る?」

「私のせいで、2人が傷ついて…」

エリナは泣きそうな顔をした。

「エリナ、別に君のせいじゃないだろう?悪いのはあいつらだ。」

「でも…」

「それに、2人もこうして無事だった。だから大丈夫だ。」

「うぅ…」

エリナはロキシスの胸の中に顔を埋めて泣き出した。それを、優しく抱きしめて受け止めるロキシスだった。

呼んでくださっている方々、有難う御座います。

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