治療
木の実を採った翌日、ロキシス達はロキシスの家に集まっていた。理由は特になく、ただ食事をするためだった。
「う~ん、ロキシスの作ったこのカレーっていう料理、とても美味しいわ。」
フィオーレがそう言うと、エリナもコクコクと頷いた。
「寧ろ、この料理を知らなかったって言うのに驚きだ。」
「まあ、俺達は塩と胡椒以外の調味料を知らなかったってだけなんだけどな。」
「そうそう。」
「まあ昨日採ってきたのは木の実以外にもカレー用の香辛料もあったからな。丁度良かったよ。」
「ところで、これの作り方を村に広めないの?」
「作るのに時間がかかるからな。そのうち広めるさ。それより…」
ロキシスは真面目な顔つきになった。
「エリナのことで話があってな。」
「エリナの?」
「エリナが何かしたか?」
不思議そうにエリナもロキシスの顔を見る。
「人聞きの悪いことを言うな。何もされてない。ただ、彼女の声を取り戻せるかもしれないと、そのことで呼んだんだ。」
「エリナの声を!?」
「ほっ、本当に!?」
「まだ確定じゃ無い。もしかしたら治せるかもしれないと言う話だ。」
「でも、エリナが話せなくなったのは大分前なのよ。ヒューミルとデミールの戦争のせいで…」
「フィオーレ!」
「あっ…ご免なさい、ロキシス。」
「…?何故俺に謝るんだ?」
「だって…」
「兎に角、エリナの声を何とかしようと思って、二人に相談したい事があったんだ。」
そう言うと、ロキシスはエリナの顔を見た。
「…エリナ、俺を信じてくれるか?」
そう伝えるとエリナはコクコクと頷いた。そして、ロキシスの掌に“話せるようになるなら嬉しい“と書いた。
「それで、どうするんだ?」
ティルも心配そうな顔をしていた。
「とりあえず、思い当たる治療方法を全て試してみる。」
そう言うと、ロキシスは治療を始めた。
「先ずは、健康状態の把握だな。」
ロキシスはサーチの魔法をエリナに使い、体の状態を看てみた。
「…」
「おい、ロキシス。」
「…」
「おいったら!」
「五月蠅い!気が散るだろう!」
「一体何をしているんだよ。」
「魔法で健康状態の把握だよ。何処かに原因が無いか、隈無く探しているんだから邪魔すんな。」
「エリナ、怖く無いの?」
フィオーレも心配そうにエリナを見るが、エリナはコクコク頷くだけだった。
「怪しい魔法じゃ無いよな?」
「阿呆か。俺を信じろって言っただろうが。」
と、エリナはロキシスの掌に“大丈夫、続けて!“と書いた。
「続けるぞ、今度は邪魔するなよ。」
「お、おう。」
「解ったわ。」
そう言われて再びエリナにサーチの魔法をかける。3分後、ロキシスが出した結論は…
「ふむ?何の異常も無いな。」
「へ?」
「それって…」
「至って健康だって事だ。」
「なあロキシス。疑う訳じゃ無いけど、その魔法って信用出来るのか?」
「ちょっと、ティル!」
「ついでにお前達2人にもかけておいたんだが。ティル、お前昨日から腹壊しているだろう?」
「なっ、何故それを!?」
「フィオーレ、お前は今食べ過ぎで、ちょっと気持ち悪くなってるだろう?」
「なんで解るのよ!?」
「この魔法、そういうことを把握する魔法だからな。その結果からすると、エリナの声が出ないのは、病気や怪我じゃ無いって事だ。」
「じゃあなんなんだよ。」
「エリナの場合、心の傷なんだろうな。」
「やっぱりあの事が原因なのね。」
「両親が亡くなったことか。」
「ロキシス、知っていたの!?」
「ルードから聞いた。大好きな人がいなくなった…それはとても辛い事だからな。」
ロキシスはエリクサーを異空間から取り出して、
「エリナ、これを飲んで。」
そう言うと、ロキシスは数滴エリナの口に入れた。
「ロキシス、それは?」
「万能薬さ。まあ、気休め程度だ。エリナ、無理に話す必要は無い。でも、何かあったら困るけどな。」
そう言ってエリクサーを異空間に直して、椅子に座るロキシスだった。
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