魚釣り
その日、ロキシスはエリナ、ティル、フィオーレと共に湖に魚釣りに来ていた。
「よし、無事に着いたな。」
そう言うのはティル。
「ちょっと、荷物ぐらい持つべきじゃ無かったの?」
フィオーレがティルに言う。実際、四人は手ぶらで来ていた。実際には、ロキシスがアクセスの魔法で荷物を異空間に保管していたからなのだが…
「別に構わない。俺に負担は一切無いからな。」
「…」
ロキシスがティルを弁明するが、相変わらずティルとフィオーレのやり取りをそれ以上追求しないようにした。しかし、エリナは心配そうな顔をして、ロキシスの掌に“辛くないの?“と書いた。
「辛かったら言うさ。エリナ、大丈夫だから。」
笑顔でそう伝えると、ニコリと笑顔を返してくれた。
「さて、先ずは泳ごうか?」
「なんでだよ。」
「そう言う目的で来てないわよ!」
コクコクとエリナも頷いた。しかし、
「だって、暑いんだよ。俺は泳ぎたい!」
「「一人で泳げ。」」
ロキシスとフィオーレの言葉が綺麗にハモった。それを見て、エリナはふふふっと笑う。
「おいおい、ロキシス。お前だって、2人の水着姿を拝みたいだろう?」
ティルがロキシスに耳打ちするが、
「仕事に来ているのに、そんな不純な考えするか。」
ロキシスは普通に返し、
「しかし、仕事が終われば話は別だ。さっさと魚を釣って、それから遊べば誰からも文句は無いだろう?」
そう付け加えた。
「そうか!よし、そうと決まればとっとと釣るぞ!」
そう言って、ティルはロキシスに早く荷物を出すように急かし、直ぐに釣りを始めた。
「なんだかなぁ…」
「まあ良いじゃないか。やる気がある方が良い。」
そう言って、ロキシス、フィオーレ、エリナも釣りを始める。
1時間程経過して、それまでの釣果はロキシスとエリナが12匹、フィオーレが13匹、そしてティルが6匹だった。
「くそー!何故だ、何故釣れないんだ!?」
「阿呆なこと考えてるから、罰が当たったんだろう?」
「そうよ、真面目にやりなさいよ。」
エリナもコクコク頷く。
「だぁ、くそ!ロキシス、楽に魚を釣る方法は無いのか!?」
「無いな、諦めろ。」
「そもそも誰だよ。100匹釣るまで村に帰らないなんて言った奴は!」
「あんたでしょうが!」
「確かにティルだったな。」
再びエリナが頷く。
「くそぅ…遊ぶ時間が減っていく…ロキシス、楽に捕まえる方法は無いのか?」
「魚を捕まえるだけなら、無いことも無い。」
「あるの!?」
「…!」
エリナとフィオーレが驚く。
「あるならやってくれよ。」
「まあ、心を落ち着けるのが釣りなんだが…このままでは心を落ち着けることが出来ないな。」
「そうだろう、そうだろう!」
「全部お前のせいだよ。」
そう言うと、ロキシスはコートと靴を脱いで、湖に入る。そして、ある程度の深さまで進むと、両手を水に浸けて、
「悪いな、少し感電してくれ。」
そう言って、微弱な雷魔法を水に流す。すると直ぐに魚がプカプカと浮かび上がって来た。それをロキシスは手で掴み取っていく。あっという間に100匹の魚を捕まえることが出来た。
「すげぇ、すげぇよロキシス!」
「本当に凄いわ…」
エリナも嬉しそうに笑顔になっている。
「さて、仕事は終わりだ。俺は先に帰る。」
そう言って、ロキシスは荷物をまとめて異空間に収納していく。
「おいおい、ロキシス!冗談だろう?」
「村の皆が待っているんだ。誰かは帰らないといけないだろう?」
「そうね。エリナ、私達も帰りましょう。」
「なんでだよ!」
「だって、水着持ってきて無いもの。」
エリナもコクンと頷いた。
「あ…」
「じゃあティル、1人で楽しめよ。俺達は帰るから。」
「ちょっ!?ちょっと待った、俺も帰るよ!」
1人では寂しいのか、皆連れ立って家路に着いた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




