新大陸
“弱小ギルドの最強英傑“の続編です。まずはそちらをご覧下さいhttps://ncode.syosetu.com/n3333fk/
この世界にはいくつ大陸があるのか解らない。神の数だけ大陸があると言われているが、神の数がよくわかっていないからだ。その数多くいる神の中で、唯一大陸を持たない神がいる。それがロキシスだった。彼は今、アテナが創りしアテーネ大陸から、ロキが創りしロッキーナ大陸に向けて飛行魔法を使って移動をしているところだった。
(やれやれ、一体どれ程離れているんだ?)
幾ら神の力を持っているとはいえ、五日間、彼は空を飛び続けていた。普段より低速で移動を行っているとはいえ、かなりの魔力とスタミナを酷使していた。
(このままでは、落下しちまうな。)
(ロキシス、大丈夫ですか?)
そう聞いてくるのは、相棒の剣、カグラだった。今空の上で一人と一本、意識の中で会話しながら進んでいた。
(あぁ、後半日ほどしか保たない。トリマーを召喚しようにも、空の上では不可能だ。)
トリマーとは、ロキシスの配下の魔物の事だった。
(困りましたね、流石に海水は錆びるかも知れません。)
(異空間に入れるだけなら可能だが?)
(それは余り嬉しくありません。あそこは暇ですから。)
(そうか…)
そんなことを話していると、ようやく大陸が見えてきた。
(カグラ、大陸が見えた。)
(良かった。)
まだ少し離れてはいたが、見えてしまえばこっちのものだった。ロキシスは何とか飛行魔法を制御して、大陸の端に見えた森の中に着地した。
(ふう、何とか保ったな。)
(お疲れさまでした、ロキシス。)
(流石に五日間、飲まず食わずの上に、不眠状態、辛かったな。)
(それで、ここは何処なんでしょうか?)
(…少し待ってくれ。)
ロキシスは辺りに探知魔法サーチを使った。
(…!そうか、ここが…)
(…ロキシス?)
(ロキがいる。ここが目的地のロッキーナ大陸だ!)
(そうなんですか。)
(しかも、ロキの気配は直ぐ近くにある。)
(それは良かった。直ぐに行きましょう!)
(いや、体が…最早限界だ。一旦、休息をとる。)
そう言って、ロキシスはその場に座り込み、収納魔法アクセスを使って、異空間からドラゴンの肉と肉焼き器を取り出し、焼き始めた。直ぐに香ばしい匂いが周りに立ち篭める。
(周囲にプロテクトも張ったし、当分休めるか…いや!)
探知魔法サーチで判明していたロキの気配がロキシスの方に近付いてきていた。しかし、その近くにもう一つ反応があるのが感じられた。
(不味いな、魔物の気配がロキの気配に近づいている。しかも、両方ともこちらへ向かっている。)
体に限界が来ていたが、ロキシスは立ち上がり、ロキの気配の方へと向かっていく。と、年の頃15歳くらいの女の子が木の実を摘んでいるのが見えた。
(あれがロキですか?)
(…面影があるな。)
と、そこへ魔物が現れた。
(あの魔物は…サーベルウルフか。)
女の子はサーベルウルフに気付いていないのか、木の実採りに夢中になっていた。そして、サーベルウルフが女の子に襲いかかろうとした。
「危ない!」
ロキシスは思わず駆け出して、サーベルウルフと女の子の間に割って入った。と、女の子がそれに気付いたが、その場にぺたんと座り込んでしまう。ロキシスはサーベルウルフにカグラで斬りかかるが、野生の勘かそれを寸でのところで躱される。
「早く逃げろ!」
ロキシスが女の子に対して言うが、振るえるだけで動くことすらままならない状態だった。
「くそっ!」
ロキシスは悪態をついた。疲労困憊の体で、サーベルウルフはかなりの相手と考えていたのだった。
(一国を滅ぼす力を持つサーベルウルフ。あの時はロキが化けていたが、今回は違うしな。体よ、保ってくれよ!)
そう考えたのも一瞬、サーベルウルフが突っ込んできたので、ロキシスは避けることもせずにサーベルウルフの口にカグラを差し込んだ。
「ぐっ!」
「グギャアアァァァ」
何とか頭を貫通させることに成功して、サーベルウルフを討伐することが出来た。しかし、疲労が凄まじく、その場に倒れ込む。
(駄目だ…もう動けない…)
そんなロキシスが最後に見たのは、心配そうな顔をしながら近づいて来る女の子の姿だった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。