7 病んだ人生ゲーム開始
宍井に虚偽を口にしないと確約させてスタートしたこの試合。人生ゲームとは名ばかりであり、まさに狂気のデスゲームだった。
ゴールするというよりも、どちらが中学二年の一年間を、生き残れるかといった方が正しい。
宍井の手帳に書いてあるルールはすべて頭に叩き込んだ。
大まかな概要は下記の通りだ。
【ステージ】
私立・爆龍中学。
不良が8割、天才奇人が1割、プロの殺し屋が1割混在する超絶学園。
【期間】
中学二年生の一年間
【キャラクターの育成】
1学期、2学期、3学期の間、能力を充実させる。
【バトル】
鍛えたキャラクター(といっても仮想世界にいる自分自身なのだが)を使って、相手陣営と競う。
夏休み、冬休み、春休みに、イベントという名の殺し合いがある。
まず夏休みに、殺人合宿がある。
続いて冬休みには、殺人文化祭。
春休みに最後の大イベント、春の殺人大運動会で白黒をつける。その運動会の名を借りたデスゲームまでに、ゲーム内ではあるが仲間を集めておく必要がある。
よくもまぁこのような人生ゲームを思いつくものだ。
正直、鳥肌すら立つ。
とにかく、まず殺人合宿を目指して育成に入った。
合宿といえば、クラスメートとの共同生活。
自然を満喫しながら数日を共に過ごす。
想像できることは、ウォークラリーや、キャンプファイヤーだ。
*
そして一学期がスタートした。
僕はルーレットを回す。
場所は教室へと移動した。
さすが爆龍中学だ。
至る所のガラスは割れ、校舎の壁も机も落書きだらけだ。
廊下ではガムを噛んで座り込んでいるヤンキーもポツポツいる。
僕も玲亜さんも、恰好だけで判断すると、残念なことにこの中学の生徒と同化して見えてしまう。
番長&スケバンだし。
浮いているのは、清楚な雰囲気を醸し出している聖華さんだけ。
ふぅと溜息がでたが、まぁ、とにかくゲームを進めよう。
目の前に青いブルーウィンドが開き、どの授業を重点的に勉強するか選択ができる。
夏休みにある殺人合宿に向け、家庭科、体育を重点的に鍛えようと思う。
そんな僕に、玲亜さんは訝しげな表情で問うてきた。
「なぁ、誠司さん。それでいいのかい? 殺人合宿というくらいだ。敵は飯ごう炊さんの中に毒を盛ってきたり、料理すると見せかけて包丁で斬りつけてきたりするんじゃないのか?」
なるほど。
十分考えられる。
「玲亜さんなら、どれから育成を試みる?」
「育成なんてしねぇよ。授業なんてかったるいし、ふけちまおうぜ」
――れ、玲亜さん!?
彼女は親指を廊下に向けて、クスリと微笑する。
「ここは不良8割って設定だろ? 不良共をシメにいく方が手っ取り早いと思うぜ?」
そうか!
確かに腕っぷしも上がり、同時に不良を傘下に加えることができる。
腕力補正と兵力増加が同時にできるってわけか。
良いアイデアだ。
ここはゲームの達人にも聞いてみよう。
「聖華さんなら、どうしますか?」
「え?? 私ですか? 先生の授業を受けてみたいです!」
聖華さんは、席に座って手をぱたぱたさせている。
聖華さんは、紛れもなくゲームの達人。
この前の人生ゲームでは、彼女の卓越した手腕で見事なまでに完敗した。
おそらく深い考えがあるに違いない。
だから、その理由を問った。
「やっぱり基礎学力は、上げておくべきだと思いますか?」
「違うんです。私、学校へ来てみたかったから……」
……。
玲亜さんは聖華さんの肩へ手を置き、「まぁ、あたいのは単なる一意見だ。最後は誠司さんが決めなよ。序盤は肩の力を抜いて軽く流そうや。敵の様子見だって必要だと思うし」 と、教室内にいる宍井を一瞥する。
荒れた教室内。
ほぼヤンキー、後は奇人と殺し屋。
先生の話なんて誰も聞いていない。
それでも先生は、チョークを持って授業を始めた。
今は歴史の授業だ。
この授業で得られる能力は、殺人合宿においてあまり役に立ちそうもない。
それなのに宍井和也は、席について黙々と教科書を読んでいた。
とにかく序盤は様子見だ。
僕達三人も適当な席に座る。
玲亜さんはすぐに眠った。
クラスに残っているヤンキー達は、早弁をしたり、スマホをいじったり、後ろにたむろをして煙草で根性焼きしたりと、好き勝手やっている。
先生の質問に聖華さんだけが、熱心に手を上げている。
「はい、は~い!」
誠司
社会科スキル +3