41 農民ゲーム2
【聖華】
状態……二期作
聖華さんのターンが終わった。
9ターンという限られたゲーム回数の中、初っ端から2回攻撃できるようになるとはかなりいい状況に思える。
阿久津はテーブルにカードを一枚提出した。
『雨乞い』のカードだ。
僕はゲームブックを開いて読んだ。
雨を降らせて生産性を上げるカードである。
だがこのカードは全体効果のところにチェックがつけられている。
つまり自分の農地だけでなく、相手の農地にも効果がある。
聖華さんの農地は、二期作状態になっているというのに、これでは敵に塩を送ったようなものじゃないか。
聖華さんは、ペラペラとゲームブックを流し読みしただけなのに、たったあれだけで全部把握しているようだ。雨乞いのカードを見るや否や、ニッコリと笑った。
聖華さんは「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言っている。
「なぁに。ちょいとおまけをしただけだ」
そう言うと机の中央に山積みされているカードを一枚引いてにんまりと笑った。
阿久津の言葉を、そのまま鵜呑みにしてよいのだろうか。
1ターンが終わった。
【聖華】
農民 10
農地 10(二期作)
天候 雨(生産力1.3倍)
農力(総合ポイント)36
【阿久津】
農民 10
農地 10
天候 雨(生産力1.3倍)
農力(総合ポイント)23
すでに10ポイント以上も引き離している。
だが阿久津はこのゲームを知りつくしているハズだ。
もしかして罠なのかもしれない。
あの阿久津の口角ににんまりと浮かべている表情を見ると、不気味に感じてしまう。
だから僕は聖華さんの耳元で、
「聖華さん。気を付けてください」
「え? 何に気を付ければいいんですか?」とこちらを振り向いて、きょとんとした顔でマジマジと見つめられた。
――えっと……。具体的に何と言われても……
「とにかく色々です。色々気を付けてください」
「はーい」