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34 美しきヒーローの去り際

 バスの炎上はとどまりつつある。

 聖華さん、伶亜さん、そしてセイクリッド・クロスの連中が、バケツリレーをしているからだ。



 だが、現状は悪化していた。

 

 クラスメートの奴らが、石や刃物を投げ込んでいるのだ

 生き残った連中は、クラスメートを殺したらレベルが上がるということを知り、ここぞとばかりに攻撃を繰り返している。



 一刻も早く何とかしないと手遅れになる。



「もうやめてください!」



 それは今に泣きそうな聖華さんの声だった。

 いたたまれなくなったのか、バスの中には走っていく。


「早まるな!」


 セイクリッド・クロスの連中が止めようと追いかけていくが、それを振り切り、バスの中に突撃した。



僕も追いかけようとした。

だが、愛沢戦で力を使い果たしてしまったようだ。

クラッと片膝を落としてしまった。



「く……。こんなところで……」


 聖華さんが突入したと同時に――

 バスが激しく爆破してしまった。


 


「聖華さん!」


 セイクリッド・クロスのみんなも彼女の名前を叫ぶ。

「お嬢様!」「姫ぇええ!!」





 だけど、返事はない。

 無情にも黒い煙が上がっていく。




 そして煙が風に流され、無残なバスの残骸が散らばっている。




 ――そ、そんな……

 




 その時だった。




 あ、あの人は――




 爆破したハズのバスの中央に、あの人の姿があった。

 

 

 

 強敵が現れると、どこともなくいつも出現する謎の少女。

 確か、彼女の名は、太陽の聖女エルカローネ。



 

 彼女の周辺には、半透明のバリアが張られてある。



「安心してください。みなさんは無事です!」


「誰一人、死んでいないんだな? 聖華さんは無事なんだな?」


「はい、アルディーン様」


 そう言うと、エルカローネはバリアを解いて大空に羽ばたいていった。



 そ、そうか。

 よかった!!



 よし、今のうちに僕もトイレで隠れて、変身を解こう。

 急いでトイレに駆け込むと、誠司の姿に戻り、再びみんなと合流した。



 伶亜さんは僕の顔を見ると、「どうやらこれで無事、ミッションコンプリートのようだね。誰かが応援要請をしてくれたようで、セイクリッド・クロスのメンバーの多くがここに集結してくれた。これだけいれば、後はどうにでもなるだろう」と言い、安堵の表情に戻る。



「ところで伶亜さん、あの謎の天使、一体、誰なんだろう? いつもいつもピンチになったら必ず現れるんだ。特殊能力が使えるということは、恐らく特記事項の恩恵なのだと思う。だとしたら、この世界の住人ではない。――としたら、僕たちと同じ転生者のような気もするのだが……。心当たりはないかい?」



「……え!? 誠司さん。マジで言っているのか?」



「え? もしかして伶亜さんは、彼女のことを知っているんですか?」



「つーか、誠司さん、どうしてトイレに何度も……。あ、もしかして、そういうことか……。あんたら、めんどーな……、いや、なんでもない……」




 なんだ? なんだ? なんだ?

 含んだ言い回しをしているが、何の事かさっぱり分からない。



 そういえば、聖華さんは?

 確かエルカローネが不思議な力で救ってくれたハズなのだが、爆破したバスの周辺にいるのはクラスメートのヤンキーばかりで、彼女の姿はどこにもないではないか?



「聖華さん? どこですか? 大丈夫ですか? 返事してください!」



 あれは聖華さん?

 どういう訳か、トイレの方から走ってくるではないか?


「え、いつのまにトイレに行ったのですか? 確かバスの中で??」


「あ、あのですね。エルカローネさんに漏れちゃいそうですと言ったら、トイレまで運んでくれたんです……」


「そうですか。やはり、ヒーローはちゃんと最後まで面倒を見てくれるんですね」


「そうですね。ヒロインは去り際が大切ですから」



 伶亜さんは何とも言えない表情で、頭をかいている。




 いつまでも、こんなところで呑気にしている訳にはいかない。

 夕方までにキャンプ場に行かないと、健康診断の時に体内に埋め込まれた毒で死んでしまうという無茶苦茶なストーリーが進行しているのだ。



「みんな! 行こう!」

「おぅ、狂番長マッドエンペラー!」


 僕の声で、セイクリッド・クロスの連中がバイクのアクセルを吹かせ、ドクロマークの特攻旗を振った。

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