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27 バス10

 僕の目の前には、ヘラヘラした細身で長身の男が映っている。

 金髪をなびかせたまま、半眼でこちらを見ている。



 奴の名は、友達思いの愛沢。

 

 

 奴にとって、友達とは、おのが為の道具。

 単なる捨て駒。

 

 

 

 紅蓮に輝く僕の右手が、ハッキリとそう告げている。

 野郎は紛れもなく悪、と――



 愛沢は鼻で笑う。



「ククク。くだらんお節介のつもりなら、今すぐ立ち去るんだな。言っておくが僕は強い。クラスで一番強いのは、この僕さ。何故ならこの合宿へ向けて、ステータスを目一杯あげているからな。

 ククク。

 僕のバトルゲージは、一体いくらだと思う?」



 バトルゲージ――

 それは、この人生ゲームにおけるレベルに相当する強さの指標だ。

 勉強や運動、アルバイトといった行動をしていくことにより育成できるステータスの総合ポイントを指している。



 ちなみに僕はノーマル状態であれば、現在162ある。

 この合宿へ向け、最善を尽くしたつもりだ。

 

 学園生活をこなしながら、その影でセイクリッドクロスを束ねてきた。

 二足のわらじを履くことにより、普通では手にできないくらいのポイントを獲得していると自負している。

 もちろん宍井たちもそれなり育成しているだろうが、決して引けを取らないはずだ。

 

 

 友達思いの愛沢のバトルゲージ……

 いったい、いくらなのだろうか。

 あの自信の表情からして、100以上ある……のだろうか。



「ククク。なんたって僕は、この合宿前に、ひそかに作り続けた友達の半数以上を殺して経験値にしてやったからな」




 なんて野郎だ。


「僕のバトルゲージは1458ある」



 ……!?



「ククク、アハハハハ!

 友情の勇者君とやら。

 悪い事は言わないから、帰った、帰った。

 それとも僕の友達になる??

 そのうち僕の経験値にしてあげるからさ。

 キャハハハハ!!!」




「……」



「キャハハハ。

 どうした~の~?

 急に黙り込んじゃったね~?

 いいねぇ~。そうそう、そうやって強者には、すぐに尻尾を巻いて謝るのがいいよ。

 そろそろ僕の友達にしてあげよっか?

 ギャハハ」





 その時だった。

 バスの窓が勢いよく飛び散った。

 くぅ。

 こうしているうちに、バスの中の生徒たちが……


 だが僕の目の前に飛び散っているガラスの破片――

 それはほんの一瞬だが、なにやら形を形成しているのだ。

 目の錯覚なのだろうか。



 いや……



 破片の流れが、不自然過ぎる。

 爆風に逆らって動いている。



 まるであの時と同じだ。

 周年パーティの時――

 そしてオフィスの地下で見た、あの不思議な現象と酷似している。




 ――そう、まるであの時起こった、神からの啓示。

 今、まさにそれが目の前で再現されている。



 ガラスの破片に炎の赤が差し込み、文字が形成された。

 それは瞬きするくらいの間におきた、ほんの一瞬の出来事だった。

 

 だが、僕はその一瞬を見逃さなかった。




『アルディーン。

 奴はモブでない。

 あちら側の人間だ。

 愛沢の特記事項を書き上げる。


 今度は絶対に裏切らない友達が欲しいな。

 みんなは僕に注目し、僕だけをチヤホヤするんだ。

 だって本当は僕、すごい人気者なんだ。

 許さない…… あいつら絶対にゆるさない……』

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