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26 バス9

「あーん、あーん。助けてー」


 クラスメートのヤンキーたちの助けを呼ぶ声が聞こえる。


「あーん、あーん。熱いよー」


 バスの中のヤンキーたちは、苦しそうに泣き叫んでいる……




 ルーレットで手に入れた今回の移動ポイントは、たったの4。

 それに引き替え、バスはすべてで8台もある。

 何もない状況下であれば、決して突っ切れない距離ではないが、炎上している場所となれば話は違う。

 


 だからなのだろう。

 聖華さんは、猛烈にバスに突っ込んいる。

 急がなければ! 

 そんな緊迫した状況下。

 

 

 

 バスの中のヤンキーたちは、おやつと称して、大量の火力を持ち込んでいる。

 ドン、ドンと二次的な爆破が起こっている。

 

 ただ無計画に突っ込んでも、爆発の巻き添えにあうだけだ。



 何かないのか!

 僕は行動ポイントの1を投入して、虚空にウィンドを表示させて、このあたりの状況をチェックした。

 


 ……

 何かないのか!?

 


 ……

 

 あ、これだ!


「早まるな! 聖華さん!」

「だって誠司さんは助けてくれないんでしょ! だったら私が!」


「違う! 僕に考えがある! 状況チェックをしたら、店舗内にバケツがあった。バケツリレーだ! セイクリッドクロスのメンバー達に力を借りよう」

「あ、そっか。みんな、お願い!」


 メンバー達は、片膝を立てて、

「はっ! お嬢様! 喜んで!」



 10人の族たちと一緒に、バケツリレーが始まった。



 飛騨を始め、生き延びたクラスメートたちはヘラヘラ笑っている。


「あいつら、バカか? 完全にいかれているぜ。友達を助けようとしているぞ」

「バカだ! バカだ!」



 聖華さんは目を真っ赤にさせて反論している。


「どうしてそういうことを言うのですか! お願いです。手伝ってください。愛沢君。あなたは友達がたくさんいるって自慢していたわよね? だったら、お願い。手伝ってください。お友達を呼んでください」



「あははは。確かに俺の特殊スキルは友達をたくさん作ることだ。

 そのスキルを行使して、この合宿に向けて友達を作り続けた」



 金髪で下唇にピアスをした細身の男は、軽く笑った。

 通称――友達思いの愛沢。

 たくさん仲間たちと、よくカラオケや登山に行っていると自慢しているのを聞いたことがある。

 僕の右手を見た。

 僕には分かる。奴の心情が。そして奴の次にしてくる行動が。

 だから僕は、行動ポイントをひとつ投入して、サービスエリアのトイレに走った。



 行動ポイントは、2/4と変わる。



 愛沢の笑い声は、サービスエリア中に轟く。




「ククク。俺は友達が2412人もいる」


「お願い。友達思いの愛沢君。一緒に手伝ってください」



「ククク。どうして助ける必要があるのだ?

 友達ってのは、困ったときに助け合うために、たくさん作るものだろーが」


「だから今こそ助けてください! それにバスの中には、あなたのお友達だっているんですよね?」


「ああ、いるよ。

 ククク。

 あんた、何も分かっちゃいねぇーよ。

 友達と真の友情の築き方をまったく理解していない。

 だからあんたはピンチの時に、いつも困る」


「そんなことはありません」


「果たしてそうかな?

 あんたが本当に困っている時に、何人の友達が助けてくれる?

 それをハッキリとした数値で言えるか?」


「……」


「俺は言える。

 2412人、みんな、俺の窮地を救ってくれる。

 友達思いの俺は、真の友情を築き続けたからな。

 お前には、こんな時、助けれくれる奴がいるか?

 例えばだな――

 友達と登山している時、強いモンスターに襲われてピンチになった時を想像してみろ。

 モンスターは圧倒的に強い。

 あんたらの力を足しても勝てない。

 さて、こんな時、どうする?

 ほら、困っただろ?」

 

 聖華さんの答えはない。

 言葉に詰まっているようだ。

 それでもなんとか言葉を絞り出した。



「……皆さんで力を合わせて……」



「だからレベルの桁がひとつ違うから、勝てないって言ってんだろ?

ククク。

 だからあんたは、真の友情を築けていないと言っているんだ。

 もし友達がたくさんいたら、ちょっと移動して、火炎瓶を友達の輪に投げ込めるじゃねぇか。そして友達を自分の経験値にして、俺だけレベルアップして窮地を凌げるじゃねぇか!

 そういう時の為に、友達をたくさん用意しておくのだ。

 つまり友達とは非常用の経験値ボックスなのだ!

 これは常識だろーが!

 そんなことも知らないのか、バーカ。

 そして友達がバスの中で苦しんでいる今こそ、大幅レベルアップのチャンスじゃねぇーか!」



 友達思いの愛沢は、背中のリュックから火炎瓶を取り出して、バスに投げつけようとした。



 バスの中からはたくさんの野次や悲鳴が聞こえてくる。



「愛沢―!! お前は友情が一番とか言っていたが、あれはすべて嘘なのか!」

「キサマ! 絶対に許さんぞ!」

「あーん、あーん、熱いよー。やめてよー」



「ククク。友情は大切さ! お前ら! 俺との友情に応えるために、俺の経験値になってくれや! そうすればお前らは俺の中で生き続ける。友達思いの愛沢様と一緒に、いい夢が見られるのだ! あばよ! 友よ! ククク。アハハハ……あ、誰だ! てめぇ!」






「悪党に名乗る名などない! 敢えて名乗るなら、友情の勇者――アルディーン!」


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