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美味しい世界  作者: 眼鏡屋
3/8

改めましての第一歩

 

 叫んでも、泣いても、怒っても、謝っても、誰も助けになんて来なかった。ひょっこりと「ドッキリ大成功〜!」の看板を持った人が来ないか期待したが来なかった。

 夢かと思って頰をつねったら普通に痛かった。泣くのも疲れたし、叫んだ喉も痛い。


どうやら、これは現実らしい。


「もしかしてさー、異世界トリップとかじゃないよね??」


 中学の頃なら喜んだだろう。厨二病で夢見がち、テキトーに生きてた頃なら。でも、今の私には無理だ。


 3月生まれの19歳。

 調理製菓の専門学校に通う製菓2年生。

 既に内定を貰って働き先が決まったし、国家試験に合格して製菓衛生士の資格も勝ち取った。

 パティシエとしての第一歩を踏み出す筈だった。


 目の前に広がる自然豊かな森。

 それだけ見たら、ドッキリとかだと思うけど光差し込む頭上。ずっと無視してたけど


「なんで太陽が二つもあるのさー!!」


 もう、明らかにおかしい。大小ある太陽が二つ寄り添ってた。

 理解できない、ありえないことが起きている。

 しかし、どうにもならない事はどうにもならないと私は開き直った。それは諦めであり、立派な自己防衛だった。


 まず、使えるものを探す為リュックをあさる。

 筆箱、折り畳み傘、教科書、ルーズリーフ、実習ノート、クッキー、ペットボトル、化粧ポーチ、実習着に実習靴。 あとは、持っていたツールケース。そこには商売道具が入っている。


「とりあえず、食べ物や飲み物は大事にしよう」


 次に自分を見る。

 コート、ジーパン、丁シャツ、パーカー。


「暑いわ!つか、冬だった筈なのになんでこんな暑いんだよ!夏か!」


 コートを脱ぎ捨て叩きつける。


「1月だよ⁉︎ なんで雪がないの!もうバッカじゃねーの!!!」


 ダンッと足を下ろし、怒る。つかれた。深呼吸。

 すっと拾い、丸めリュックの中にいれる。



 膝の傷は、血は出てないがジンジンとするし、痛いものは痛い。泣き叫んだ時に叩いた手はすっかり固まってるけど血が出てた。、


「あっ、絆創膏!」


 ツールケースをあさる。怪我したとき用に絆創膏を入れてたのをすっかり忘れてた。



 そして、目に入る刃物。



「ペティナイフ……。どうしょう、手に持っていた方が良いかな? 」


 3分悩んだ。


「うーーん、やめよう!」


 使いきれる自信がないし、正直無理だ。

 つか、ペティナイフは果物切る用だし、血で汚すとか本当に無理。勘弁して欲しい。



「うん、何も解決しない!!」



 目の前には道。奥に行けば行くほど、明るくなってるのが見える。

 後ろにも道。奥に行けば行くほど、森が深くなっていくのが見える。


「前に進むかー、むしろそれしかない」


 どう考えても、後ろはバットエンドだ。

 死ぬ未来しかない。


 道があるということは人がいるということだろう。

 希望はまだある。


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