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美味しい世界  作者: 眼鏡屋
2/8

迷い込んだ甘い異物

 

 緑が目の前に広がった。

 それを認識する前に盛大に、転んだ。


 それは冬休みが終わり、少し早めの8時20分、学校の自動ドアに出迎えられての第一歩だった。


 ガクンと態勢を崩し、階段を踏み外したような感覚だった。意味も分からず転び、突然の衝撃とジンジンとした膝の痛みに涙が溢れた。


「痛い、意味わからん、何なのもう!!」


 目の前にあるのは緑溢れた森だった。

 コンクリートの灰色や学校の白いタイルがどこにも見当たらないことに脳がショートしたのが分かった。


「えっ、森?ドッキリ?」


 間抜けな声が森に吸い込まれた。

 そうじゃないだろと何処か冷静な自分が突っ込んだ。





 どれぐらい呆然としてただろか。

 突如、アラームが鳴った。


「え、あっ、携帯! つか、遅刻!!」


 8時40分に鳴るようにセットしていたアラームが鳴り響き、私を現実に戻してくれた。


 だか、誰に電話やLINEをしても、連絡がつく事はなかった。圏外で、地図も使えない。携帯に頼りきった生活をしてた私は途方にくれた。


「本当にここ何処?」







 トンネルを潜ると異世界でした。マンホールに落ちると美形の騎士に助けられる。トラックに轢かれて、チートな転生。魔法陣による勇者や聖女の召喚。女神や神様にお願いされての異世界転移。


 色々な方法で始まる物語。

 彼女は主人公になり得ないはずだった。

 始まるはずがない物語は彼女を主人公と定めた。



 それは偶然で、悪意も善意もない、事故だった。


 しかし、それは必然だった。


 甘味が少ない、美味しい世界は受け入れた。

 甘い匂いが染み付いた異物が、世界に必要だと認識したからだ。異物は人間として、その世界の生命として生まれ変わる。


 知らぬ間に掴み取った生命と課せられた使命。

 

 彼女は不幸だった。しかし、幸運でもあった。

 ただ、世界は用意する。彼女のためのご都合主義を。



 彼女の大事なモノと引き換えに。



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