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嫉妬

作者: 遙

心情を書き連ねたひたすらに暗い話です。

ただただ一人称……


報われない恋をした女の子のちょっとした心情です

暗い話やバッドエンド的な要素があるのでそういうのが

苦手な人にはお勧めできません

 貴方が好きなの……そう気づいた時にはもう遅かった。

 貴方の横には寄り添う彼女が居て、とても幸せそうに笑っている、

 心の中に渦巻くのは嫉妬という醜い感情。


 私は自分があまり好きではない、それは自分の性格もあるけれど引っ込み思案なこの部分がとても嫌だ。

 そのくせ一人前に気持ちを告げない癖に好きだと思ったり、嫌いだと思ったり、嫉妬したり……あま

りの自分の身勝手さに嫌気がさすというもの。


 「好きなの……でももう今更言えない」


 いつから見ていただろう?貴方が今の彼になる前から……もう一つ前の彼だった頃から、だろうか……きっと彼は私がずっと見てきた事など知らなくて、それはきっとこれからも変わらず私の事もきっとずっと知らないままで過ごしていくだろう、そう思っていた。

 いつだったか貴方の名前を見ただけで、動悸が激しくなり震える手は彼に会うことを選ぶことを選択して、初めて貴方と言葉を交わした。その仕草も、声色も……すべてが優しくて、再度私は彼に恋に落ちる。


 元来の性格からか、それとも体質なのか私の周りにあまり親しい人はいなかった。その分、というかそのかわりという訳でもないが少々自分には特殊なものに好かれる体質でもあった。


 一般的に『妖』もしくは『妖怪』と呼ばれるそれらは時に優しく、時に残酷に寄り添って何時でも私の側に居てくれる。それが怖いわけでも嬉しい訳でもない。ただただそこにあると自分で認識をするだけに留まるだけの存在だった。


 『ねえ、好きなんでしょ?協力してあげようか?』


 ある時囁かれたその甘言はとても魅力的に私の心に浸透してくる。そしたら貴方は、私の方を振り向いてくれるだろうか?そんなとても幼稚な考えが一瞬頭の中に浮かんだがそんな事はあるはずないとその囁いた者達へ断りを入れた。



 醜く育っていく感情は、貴方の気持ちを一身に受けている彼女へ、それから切なさと不安だけが心に何度も激しい雨を降らす。どうしても彼を忘れられなくて何度か足を運び、貴方に逢えば来てくれて嬉しい、と言葉にするのだ。優しくて残酷な嘘だなと思う。私が知らないと思っているのでしょう?それとも知っていてもその言葉を口にしているのなら、とても酷い人。

 貴方が本当は誰を待っていたかなんて……知ってるの、私とは全然違う接し方をする貴方は彼女をとても愛しいと思っているのだと解る。彼女が忙しい時に、ふと気を紛らわす話し相手に位しかなれないことも本当は心の中で判っているの……それでも、少しでも話がしたいと思う私を滑稽に思うだろうか?


 「好きなのよ……駄目って解ってても、好きなんだもの……」


 心が悲鳴を上げて壊れてしまいそう。いっそ壊れたほうが楽になるのだろうか?切なくて切なくて泣いても泣いてもすっきりする事はない。いっそ好きなのだと言葉にしてみようか?何度かそんな風に思ったものの勇気がなくてそれもできない自分にさらに自己嫌悪するしかない。


 「困らせる、だけだもの」


 優しい彼の事だ、私の気持ちがもし知れてしまったら困ってしまうかもしれない……もしかしたら迷惑だと眉を顰められるかもしれない……そう思えば今の距離が一番いいのだと自分に言い聞かせた。

近いのに遠い子の距離を埋める術などなくて良いのだと、改めて思った。




 近くの神社の境内へこの心苦しい恋心を……罪深い懺悔を、どうか忘れる事が出来る様にと石畳の道を歩く。寒さが肌を刺すようで身震いをしながら石段を登りきり、顔を上げた矢先見たくない光景が飛び込んできた。


 ――……どうして?


 疑問は言葉にはならず、自分の息を吞む音がやけに大きく聞こえた。親し気に寄り添っている貴方と彼女……どうしてここに居るのだろう?咄嗟に隠れてしまった私をだれも咎めることはできない。

 見たくなかった、見たくなかった……どうしてこのタイミングでここに居るのか、どうして……疑問と混乱が頭の中で回っている時、耳元で小さな声が囁いた。


『喜ばせてあげよう……』


「え?」


 疑問が口を出たのと同時、悲鳴が聞こえて身体を震わせてそちらの方向へ視線を向ける。丁度石段を降りた所だったらしい、彼女が片目を押えてしゃがみ込んでいる。慌ててその彼女に寄り添っている貴方を見てやはり胸が苦しくなった。

 両手で抑えている彼女の片目からは血が流れているのか指の間を縫って真っ赤な鮮血がやけに彼女の白い肌に映えてみえる。

 風が運んでくる貴方の慌てた声と、近くに落ちている枝に血がついている事から枝が彼女の目に刺さったのだと理解したのと同時に、もう一度耳元で小さな声が囁いた。


『嬉しいでしょ?……ね?嬉しいでしょ?』


 そんなわけない!とその声から逃れるように頭を振り、二人に見つからないようにその場所から離れた。

静かな境内に戻ってくれば息を整え、自然と涙が後から後から零れてくる。彼女の目はきっと治るだろう

という事も私は判っている。

 私がそうして特別な何かが見えるように、貴方にもまた癒しの力がある事を知っているから……ああそう、そういう意味では、私と貴方は少しの共通点があったのに、と今更嘆いてももう遅い。

 賽は投げられてしまった。もう私と貴方の距離が縮まることはきっとない……ああ、運命の神様の悪戯というのなら本当に悪戯が過ぎる。


 「私はいつだって……行動が遅いのね」


 その間に掠め取られていくものは、何も好きな人に限ったことではないと自覚をさせららる。目の前に現れた大きな黒い影は見上げても先が見えない。


『……捕まえた』


 小さな声と共に覆いかぶさってくる黒い影に、私はもう抗う術を持たない。この胸を空くような、切なさもまるで黒い墨が心の中にたまっていくような感情も……すべてすべてもう無くしてしまえるのなら、私はこのまま黒い影の中……貴方の事を考えずに微睡んでいたい。


「ああ……でも叶うなら……」


 最後にもう一度だけ、貴方の優しいその笑顔が……見たかった。



 静かな神社の境内に、倒れている彼女を見つけたのは神社に勤める神職だった。目覚めることのない彼女はそのまま病院に運ばれ、そのまま静かに息を引き取った。



 彼女が最後に思った願いは……常に寄り添っている別の彼女が毎日のように見ている事だろう。




立て続けに暗い話ばっかりを投稿している気がするので、そろそろ明るい話を

投稿したいです、切実に

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