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既読無視

作者: 佐木 呉羽

 少しネットで検索すれば、『既読無視をされない方法』というコラムが多数表示される。

 それだけ多くの人間が、既読という二文字を脅威に感じているということか。

 既読と表示される機能が、最初の頃はとても便利なものだと感心していた。

 自分の送ったメッセージが、読まれたか否かわかるのだ。まだ読んでないのかと、ヤキモキすることはなくなった。


 けれど次は、読んでいるのに返事がないと、新たなモヤモヤの発生だ。


 読まれたのに返事がないということは、それほど取るに足らない内容と捉えられたからだろうか。それとも、人間としての扱いが、返事すら送ってもらえない人種として括られてしまっているからだろか。

 どうしても返事が欲しくて、伺いを立てるように送ったメッセージ。

 問い掛けているメッセージにも返事を寄越さないとは、いったいどういう了見か。


 人間性を疑ってしまう。


 この場合、自分のほうが悪いと落ち込んでしまうか、相手を悪者にして自分を慰めるかの二通りしか気を紛らわせる方法が思い浮かばない。


 ネガティブ・オア・ポジティブ。


 どちらにしろ、今の自分は、返事を返してこない相手が憎い……。


 半日経っても、折り返しの返事がないまま。

 新たにメッセージを送っていいものだろうか? 案外、送ったほうがいいのかもしれない。そのほうが、焦っているという印象を与えられるだろう。

 一方的にメッセージを送り続けるという手段には出たくなかったけれど、期日も迫ってきている。


 これはもう、やるしかない。


 覚悟を決めて、指先をキーボードに置いた瞬間、半日経っても変わりなかった画面が動く。

 

 受信を告げる電子音。

 

 ついに、返事が返ってきた。

 喜び勇んで次のメッセージを送ろうと、意気込んで鼻息を荒くする。

 しかし、送られてきたメッセージを確認して愕然とした。


《一応、連絡しておこうと思って……。あなたが乗っ取ったIDの人、とっくに新しく作って皆に知らせてるよ。もういい加減、終わりにしたほうがいいんじゃないですか?w》


 そして、馬鹿にしたようなスタンプが続けて送られてきた。


 まぁ、こうもなるわな。


 だいぶ認知されているのだから仕方ない。

 また別のカモを探さねば。


 凝り固まった首と肩、そして腰を反らして伸びをする。

 ノルマ達成が厳しくなった現実に、再び背中を丸めて、パソコン画面と向き合うのであった。


仲間内で書いているお題作品です。


今回のお題が『既読無視』でした。

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