エピローグ
■
少女は、絶望の中にいた。
突然誘拐され、両親を殺され、奴隷として首輪をはめられた。
何がなんだかわからない。
周囲には異形の者達。妖怪の街につれてこられ、今まさに売られようとしていた。
「とっとと来い!」
奴隷商人が首を引っ張る。
「ひどい、なんてことを……助けてやれないのですか?」
「これから目に付いた奴隷を全部買わなきゃならなくなるよ。やめときなよ。
その気持ちをもっておけばきっとリゾームはよくなるよ」
街路を歩く住人は気の毒そうに見るだけ。
「おい、お前がどうなるか言っておこうか?
お前はまだ何も調教をされて無い奴隷だ。そういうのを自分好みに調教したがる変態がいるのさ。
あるいは魔術師の実験体か。どっちにしろお前は幸運な方だ。生き延びられるかもしれないんだからな。
せいぜい媚を売っていい飼い主に買われろよ」
奴隷商が笑う。
「いや、そうはならない」
「へえ、旦那、買取ですかい?」
見ると道をふさぐように立つのは獅子の様な偉丈夫。
そして額に角の生えた鬼の少女。
褐色の肌に髭の生えた怪しいガイジン。
「よかったね、あの御仁はまともそうだ。さあ、行きましょうお嬢様。
見ていて気持ちのいい光景じゃありません」
「ええ……」
鬼の少女が静かに笑う。
「いいえ、そうもなりません。お嬢さん、私もあなたのようでした。
ですが、深窓にいては世界は変えられないんです」
「え?」
街路を歩く上流階級が驚く。
「で、料金ですが……」
銃声、倒れる奴隷商。
「てめえのような忘八に払うもんなんざ、弾でも上等すぎるくらいだ」
悲鳴、怒号。かけつける衛士。
周囲を敵に回して獅子のような偉丈夫は少女を抱え銃を構える。
「お嬢さん、助けに来た。俺は味方だ。あんたみたいな誘拐された奴らを助け出す仕事をしてる。
さてと……一仕事、片付けるか」
昼神太陽。彼は、こうして妖怪ハンターとなった。




