聖剣幼女が起こしに来るそうです。
「なんで私がこんな事を……」
嫌な顔をした聖剣幼女はエスミルに連れられカルワーの部屋に来ていた。
部屋にか大型テレビがつけっぱなしになっていて、『失敗!』の文字がでかでかと映っている。寝落ちしたようだ。
そのカルワーの側によると、
「お、お兄ちゃん……起きて」
軽く揺さぶった。
ーーガタッ!
エスミルはどこからともなく身長よりも長い槍を取り出すと音のしたガラクタの積んである方に投げつけた。
突き刺さった槍の先に赤い液体が染みの様に広がっていく。
「……逃げられました」
悔しげに唇をかんだ。
「エスミル? これは勇者を気持ちよく起こすための練習じゃなかったのか?」
「なんだとぉぉぉっ!」
「そこか!」
ーードスッ!
投げられた短剣が額に深々と刺さった。しかしカルワーは、
「勇者め! 幼女に『お兄ちゃん』と呼ばれて起こされるだと! うらやまけしからん!」
そんな事は気にしないで血の涙を流して叫んでいる。
聖剣幼女はそれを『キモッ』と呟きエスミルの後ろに隠れた。
「悔しいですか? カルワー様。勇者は毎日このように起こされるのですよ」
「視線で人が殺せたら……」
血の涙で足元に血溜まりを作りギリギリと歯軋りまでして泣き続けている。
「カルワー様がちゃんと仕事をしてくれるならば、聖剣ちゃんに朝、起こすのを頼む事も考えなくもないです」
「マジで!!」
ニッコリと笑うエスミルを信仰する女神を見た敬虔な信者のように涙(血はつかない)を流し祈るように見ている。
「さあ、カルワー様。朝食を用意してますので、食べてからお仕事頑張ってください」
「はいっ!」
駆け足で部屋を出たカルワーがこの後、曲がり角でパンをくわえたデブにぶつかり恋が始まったり、始まらなかったりしたそうな。
「よし! 今日は仕事頑張ったぞ!」
なぜか作業服姿のカルワー。
「お疲れさまでした。これで雨漏りも無くなりました」
「……普通、こういうの業者さん呼ぶよね?」
「いえ、魔王の仕事です」
「そうなんだ。知らなかった」
「本当に無知ですねこの魔王は」
そう言って笑い会う二人。その片方の声が乾いているのは聞かなかったことにしよう。
「それで……明日の朝は……」
「バッチリです。幼女が来ます」
「ヨッシャァァァー!」
奇声を上げてベッドにダイブするカルワー。その喜びようを見ながらエスミルは部屋を後にした。
窓から朝日が入り込み、頭から布団を被った物体がベッドの上にあった。
ーーガチャ。
(ドキドキ……ドキドキ)
布団の中で鼓動を大きくさせてその時を待っている。
近寄ってくる足音と気配を感じとり、その手が布団に掛かるのを待つ。そして……
(ゆさゆさ)
「お兄ちゃん……起きて」
跳ね起きたい衝動を押さえ、布団の中で体制を整える。
「お、起きないなら……お早うのキスを」
「お兄ちゃんだよ! お目覚めのキッスを」
布団をはね飛ばし起きたカルワーはベッドの側に立つその人に飛びかかり、
(ぶっちゅーー!)
ベッドの側に立つその人ーー聖剣幼女の格好をしたヌーデンブルにやっちまった!!
「何でお前がそこにいるんだ!」
吐き気をこらえながら叫んだ。
「エスミルさんが、カルワー様が幼女に起こして貰いたいって言っていたって……」
「幼女じゃないだろ!」
「せっかく魔法で小さくなったのに……」
「何処がだよ! 荒縄でギチギチに縛られたハムみたいになってんじゃねーか!」
サイズの合っていない服にヌーデンブルのぜい肉の塊が詰まり、今にも服がはじけ飛びそうだ。あっ、ボタンが、今ちぎれ飛んだ。
その体をくねらせて頬を赤く染めると、
「朝から、ダ・イ・タ・ン!」
その言葉に自分がやったことを思いだし、
「おえぇぇぇっ!」
盛大に吐いた。ついでに血も吐いて意識不明になり、この日カルワーは使い物にならなかった。
その影で、
「計画どーり(ニヤリ)」
そんな人がいたそうな。




