成長 1
直樹が『楽しい』と表する日々は続く。
これまでの人生、
『楽しい』
『嫌なこと』
…そんな風に考えたことなどなかったのに。
今日から3連休だというのに、その初日に外は雨。
これまでの直樹にとって、休日の雨など眺めることも考えることもなかった。
しかし今の直樹は、自分の部屋から眺める雨が少しばかり憂鬱。
数ヶ月前まで『ここにいるのも2~3年だ』、これを辛抱だとしていた直樹が、今はこの地の休日の雨を憂鬱に思うのだ。
直樹は自室に篭り、本を読んでいる。
片方で本を持ち、もう片方には鉄アレイ。
暇さえあれば、自分の腕にグッと力を入れてみる。
太くなったんじゃないの~?
スゴイんじゃないの~~?
そんなことを考えている。
とその時、階下で電話が鳴った。
電話などには出たことのない直樹は、それを無視する。
しかしいつまで経っても、誰も出ない。
あれ?
不思議に思って、階段の上から1階を覗き込む。
やがて電話は切れてしまった。
土井さんはいないのかなぁ?
すると、また電話が鳴り始めた。
直樹は駆け足で階段を降り、受話器を取る。
「はい、もしもし。秋月です」
『……あ、あの~、すいません。直樹くん、いますか?』
これまでの人生で、直樹個人に電話がかかってきたなんてことはなかった。
直樹は驚く。
「直樹は僕だ!誰だ!?」
そう答えると、受話器の向こうの声が少し柔らいだ。
『おー、直樹か。良かった~。お前んトコのオトンやオカンが出たら何か怖そうやから、切ろう思うてたんや。
俺や。パクや』
直樹は先日、パクに自宅の電話番号を教えたことを思い出した。
「おー、何だよ!パクウかよ!俺はまた強盗か何かかと思ったよ!
なになに?俺に電話なんかしてきてさ!1時間くらいなら話してもいいぜ」
初めての自分への電話にテンション上がり気味の直樹。
『………。イヤ、そがいに話さんでも構へん。お前なぁ、明後日何か用事あるか?』
今のこんな直樹に用事などない。
「何もないよ」
『実はな、ウチの店の客がプロレスのチケットくれてん。3枚あんねんよ。お前も行くか?』
そのパクの言葉に、直樹は歓声に近い声を上げる。
「プロレスだって!?ホントかよ!?俺さ、プロレスなら知ってんだよ!!」
直樹がまだ幼い頃、唯一見ていたテレビアニメ。
それは夕方放送されていた『タイガーマスク』
直樹は親の居ぬ間を見計らい、そのアニメを夢中で見ていたものだ。
「パクウ!アレだろ!タイガーマスクだろ!?虎の穴から来たヤツらのあのプロレスだろ!!」
その大声にビックリしたパクは、
『お、おぅ。そうやで。タイガーマスクや。新日やで。猪木も来るで』
「え?猪木??」
不思議そうな直樹の声を聞いてパクは言った。
『虎の穴まで知っとって猪木知らんなんて、お前ワケ分からんな。
まー、とにかく明後日5時に○○○会館の時計前で待ち合わせや。
入場料はいらんけど、メシ食う金くらい持って来いよ?』
「うん、分かった!」
直樹がそう答えると、パクはそのまま電話を切ってしまった。
ツー、ツー、ツー……
「あれ?パクウ?もしもしー?もしもしー?」
仕方なく受話器を置いた直樹。
まだ5分も話してねぇぞ?
パクウは気が早いなぁ……。
直樹は再び2階へと上がって行く。
でも、タイガーマスクはマンガだからなぁ。
実際にはいないんだろうなぁ。
そんなことをつらつらと考えていると、直樹は今の退屈さが堪らなくなってしまった。
よし!今からパクウん家に遊びに行こう!
直樹は机の引き出しを開け、参考書などを買ったときのお釣りをかき集める。
もう外は寒いだろうなぁ。
そう思い、ジャンパーを羽織って下に降り、リビングを覗くと母の姿があった。
あれ?いたんだ。
「お母さん。ちょっと図書館まで行ってきます。少し遅くなるかもしれません」
「………」
ヘッドホンを付けている。
音楽を聴いているのだろう。母からの返事はない。
直樹は構わず、外へ出た。
空を見上げると、霧雨。
傘の持参を少し迷い、ふと明後日の約束のことを思った直樹は、傘を差してバス停まで歩いて行く。
休日に予定があるって、なかなかいいもんだな。
風が吹くともう冷たい季節。
先ほどまで憂鬱だった雨も、あっと言う間に楽しさの一つになる。
直樹はバスに乗り込み、窓から外の景色を眺めた。
過ぎ行く家々。
通り過ぎる人。車。犬に猫。
飛んでいくビニール袋。
雨。
途中一度バスを乗り換え、直樹は再び傘を差してパクの家へ向かって歩く。
パクの家へ着くと、まずはお母さんに挨拶をしようと店を覗いた。
「こんにちは」
仕込みをしていたパクのお母さんは直樹を見て、
「あら、秋月くん。いらっしゃい!1人で来たんかいな」
「はい」
「あの子、今家におらんで。またタケシとどっか行っとるんとちゃうかー?帰ってくるまで上がって待っといてエエで」
パクが留守だと聞いてがっかりする直樹。
「…あ、そうですか。じゃあ、また来ます」
店の扉を閉めて向かいの道路を見ると、先ほどまでと違い、雨が強く打ち付けている。
「………」
また憂鬱になってしまった直樹、とぼとぼと歩きながら、
今日はもう家に帰ろうかなぁ……
そういえば、お母さんに図書館に行くって言ったな。
最近の俺は、お母さんによく嘘を吐くな……
この辺はちゃんと元に戻さないと。
そうやって考え事をしながら歩いていると、いつの間にかバス停を過ぎていた。
あれ?
ここ、どこだ?
周りをキョロキョロ見回すと、それは以前見たことのある景色。
……あれ。
ここ、どこだっけ?
もう一度辺りをぐるりと見渡すと、直樹の視線の先に一軒の家がある。
……あ、そうだ!
道路沿いの、土手になっているその先にある建物は、以前タケシと自転車で2人乗りをしたときに彼が教えてくれた自宅。
あれって、タケシん家だよな。
直樹はパクの家には何度も行っているが、これまで一度もタケシの家には行ったことがない。
前に一度、タケシの家に遊びに行こうと提案したとき、
「ウチには何もないからアカン」
そう断られたことがあった。
ひょっとして2人はタケシの家にいるかもしれない。
直樹は土手を登るようにして、タケシの家へと向かう。
やがて土手に上った直樹の目前に広がったのは、敷地内というよりも、広い場所にぽつんと建っているように見える、家。
周りには草がぼうぼうに生えている。
真っ黒の木造の家は、お世辞にも大きいとは言えない。
表札も掛かっていない玄関の引き戸を、直樹はノックしてみた。
ガチャン、ガチャン、ガチャン!
「こんにちはー!タケシくんいますかー?」
……返事はない。
引き戸に手を掛けてみると、鍵はかかっておらず、直樹はそれをガラガラと開けて、
「こんにちはー」
もう一度声を掛ける。
すると奥から足音が聞こえてきて、
「はーい」
出てきたのは、パジャマ姿の女の子。
「あの、岡崎くんのお宅ですか?」
そう尋ねた直樹に、その女の子が応えた。
「うん。…あ!お兄ちゃんの友達や!ウチへ初めて遊びに来た!
お兄ちゃん、出掛けてて今おらへんねん」
その子は小学生くらいの女の子。
どうやらタケシの妹のようだ。
「1人でお留守番?風邪引いてるみたいだけど、留守番なんてえらいね」
「私、風邪なんて引いてないよ。心臓が病気やから、いつもこうやって寝てんねん」
その言葉を聞き、直樹はこれまで読んだ本の記憶を辿る。
狭心症
心房中隔欠損症
心臓弁膜症
………
何にしても大変じゃないか!
「……あ、ごめんね。お兄ちゃんいないんだったら、また来るよ。
僕はいいからさ、寝てて」
女の子は直樹の言葉を聞き、
「お兄ちゃん、もうすぐ帰って来るかもしらへんから、待ってたらいいやんか」
「………」
人の家に勝手に上がり込んで、待たせてもらう。
今の直樹には抵抗はないけれど、少し遠慮してしまう。
……でも今日は寒いし、2人で居た方が部屋はあったかいかもしれないな。
誰かが帰ってくるまで、一緒に待ってあげようか…
そう考え、直樹は言った。
「それじゃ、お邪魔します」
女の子は嬉しそうに直樹を部屋まで通してくれる。
そこはとにかく小さな家。
台所と茶の間、この2部屋しかない。
床を踏むと、きしみで沈んでいく感覚。
「……ねぇ、お父さんとお母さんは?」
「お母さんはお仕事。お父さんはね、私が小さいときにいなくなったから、知らへんの」
「………」
直樹はここで考える。
今まで自分は、タケシとパクに対して友達だという感情を持ち合わせていた。
でもこれは、一方的なものだったんじゃないか。
……考えてみたら、俺はタケシのことを何も知らない。
女の子は押入れの中から座布団を1枚出して、
「どうぞ」
と直樹に差し出してくれた。
茶の間には布団が一組敷いてあり、ちゃぶ台が一つ、そしてテレビと箪笥。
外で強い風が吹くたびにピューッという音が鳴り、どこからか冷たいすきま風が入ってくる。
「俺のことはいいからさ、君は布団に入っててよ。冷えちゃダメだよ」
すると女の子は直樹の言ったとおり布団に入り、うつ伏せて何かを書き始めた。
直樹がそっとそれを覗き込むと、それは漢字のドリル。
「あぁ、宿題やってんだね」
「私、学校行けてへんから宿題なんかないねん。
これはねぇ、最近お兄ちゃんが勉強見てくれるから、帰るまでにやってるんよ」
「学校に行ってないって、どういうこと?」
「発作が起こったらアカンから、学校から来んといてって言われてん」
「………」
直樹は次の言葉が見つからない。
タケシが何故自分に、勉強の教え方を教えろと言ったのか。
何故、と聞いたとき、
「まぁ、それはエエやないか」
そんな返事が返ってきて、それ以降何も聞こうとしなかった自分。
どこか目指す高校でもあるんだろうと、そうやって自己完結させ、タケシのこのことに関する興味をそれ以上にしていなかった。
……タケシは、この子に勉強させてあげたかったんだ。
「……ねぇ、病院には行ってるの?」
「ウチなぁ、貧乏やからなぁ、病院には行かれへんねん。お母さんがお薬だけもらってくる」
「………」
また、直樹は次の言葉が見つからない。
「……勉強、何か分からないトコない?俺さ、学校ではまぁまぁ成績良い方なんだよ。分からないトコあったら見れるよ?」
「えー、ほんまに?じゃあねぇ、えっとねぇ、お兄ちゃんの説明だったら分からへんトコがあったんや。
算数なんやけどな」
「うん、いいよ。どれどれ?俺が見るよ」
この2人の空間で直樹ができることはこれしかなかった。
他に何も考えないようにするために、直樹は目の前のドリルと彼女の表情のみに集中している。
「名前は何ていうんだい?」
「美奈子」
「何歳?」
「9歳」
会話といえば他愛の無いもので精一杯。
するとその途中で、美奈子が大きな咳をし始めた。
ゴホッ!ゴホッゴホッ!!
ゲホゲホゲホッ!!
えずきを交えながらの重い咳。
ゴホッゴホッゴホッ!!
咳はなかなか止まらず、しばらく続く。
直樹は周りを見回してティッシュを探すが、見当たらない。
急いでポケットからハンカチを取り出し、美奈子の口元へと持って行った。
ゲホゲホゲホッ!
ゴホゴホッ!
しばらくしてやっと咳が治まったとき、直樹はそのハンカチを見て思わず引いてしまった。
……血が付いている。
と、吐血!?
「ねぇ!口の中、切ったんじゃないよね!?」
その問いに、美奈子はあっさりと返事をした。
「こんなのいつもやねん。薬飲んだら治まるから平気なんや」
そう言って起き上がり、箪笥の引出しを開けてごそごそし始める。
「ちょっと待って!君、ごはん何時に食べた!?」
「11時半」
時計を見ると、3時を過ぎている。
「ちょっと待ってよ。3時間以上経ってるから、もう胃の中に何もない状態だよ」
直樹は台所へ行き、冷蔵庫を開けてみた。
しかし、中には何も入っていない。
「いいかい、まだ飲んじゃダメだよ。薬はちょっと待ってて。俺、何か買ってくるから。
これは食べちゃいけないって物ない?お医者さんから何か言われてない?」
「生卵とカニとかエビとか、アカンて言われてる」
…そっか、甲殻類アレルギーか。
「10分だけ待ってて。そこのスーパーで何か買ってくるから」
直樹は外に出、傘も差さずにスーパーへと走る。
そして牛乳・はちみつ・ロールケーキを買って、急いでタケシの家に戻った。
直樹が風邪を引いたとき、いつも土井さんが作ってくれるはちみつ入りのホットミルク。
自分で作ったことなどないが、この時の直樹に『俺が作れるのか?』という自問自答はない。
……血が出てるってことは喉のどこかが悪いか、
もしかすると胃潰瘍なのか……?
直樹は家に入ると、生まれて初めて台所に立った。
鍋で牛乳を沸かし、その中にはちみつを溶かし込んでいく。
ロールケーキを包丁でカットして、ホットミルクと一緒に美奈子の元へと運んだ。
「安物のケーキだけど、食べないよりいいからさ。
牛乳で胃に膜を張ってから、薬を飲む方がいいんだよ」
ロールケーキを目の前に、美奈子は大喜びだ。
「ありがとう!あ~!この牛乳めちゃくちゃおいしい!何で!?」
「はちみつを入れてるだけだよ。お母さんに作ってもらいなよ」
ロールケーキを2切食べ、牛乳を飲んだ美奈子は、薬を飲んでまた布団の中に入った。
「薬を飲んだ後はちゃんと睡眠をとった方がいいんだ。俺がちゃんと留守番してるからさ、寝ちゃいなよ」
「うん」
嬉しそうに返事をした美奈子は、すぐに寝入ってしまった。
……おい、タケシ。
一体どうなってんだよ。
俺にお好み焼きを奢ってる場合か?
冷蔵庫の中が空っぽじゃないか。
何のための冷蔵庫なんだよ。
直樹はタケシの家の現実を見ながら、イライラしている。
自分の日常を紐解き、思い返すが、直樹の中にこういう光景は一秒たりとも映っていない。
「………」
寒い家。
吹きこんでくる隙間風。
冷たい畳の感触。
そして、青白い頬をした9歳の少女。
逃げ出したい気持ちを抑えながら、直樹はただ時間が経つのを待っていた。
しばらくすると玄関からガサゴソと物音がして、ガラス戸に人影が立つのが見えた。
ガラガラという音と共に入ってきたのは、ずぶ濡れになった女性。
タケシのお母さんのようだ。
突然の家族の登場に慌てた直樹から出たのは、言い訳がましい言葉。
「あ、いや、違うんです。えっと、僕はタケシくんの友達で、えっと……」
「あら、珍しいね。タケシが友達連れてくるなんて。
あれ?でもあの子、おらんやんか」
「あ、はい。帰るのを待たせてもらってました」
「ふーん…」
言いながらこちらに背を向け、タオルでわしゃわしゃと髪を拭いているタケシのお母さんに、
「あの、妹さんが咳き込んじゃったんで、薬を飲む前にホットミルクとロールケーキをあげちゃったんですけど、大丈夫だったですかね?」
直樹の言葉に彼女は振り返り、
「ああ、そう。何か悪かったねぇ」
そして置いてあった牛乳をラッパ飲みしながら、直樹に言った。
「タケシやったら、○○町のゲームセンターでタムロってんちゃうか?待ってるより行った方が早いと思うで」
「あ、そうですか。じゃあ今から行ってみます。
お邪魔しました」
直樹は腰を上げ、玄関に向かう。
最後にもう一度挨拶しようと振り返ると、タケシのお母さんは直樹が美奈子のために買ってきたロールケーキに、包丁を入れることもなくそのまま齧り付いていた。
それを見て何も言わずに視線を元に戻し、外に出る直樹。
静かに玄関のドアを閉めると、雨の中を走り出す。
……何か、分からない。
何故だか、分からない。
だけど、何だか湿っぽい。
バス停に着いたところで、傘をタケシの家に忘れてきたことに気づいたが、もう取りには戻らない。
……タケシか、美奈子ちゃんが使ってくれればいいな。
そう思い、雨に濡れながらバスが来るのを待った。
すっかりこの街に慣れた直樹。
○○町のゲーセンと言われれば、すぐにどの辺りか分かる。
直樹はバスに乗り、タケシがいるであろうゲーセンに向かう。
……マズイなぁ。
街に出るときは、制服着用が校則で決まってるんだけどなぁ。
何となく先ほどのことを思い出したくないと思い、かき消そうとする直樹は別のことに頭を寄せる。
直樹はこれまでの人生、ゲーセンなどに入ったことはない。
おぼろげな印象として、そこは不良の溜まり場だという認識でいる。
学校の関係者に見つかりませんように。
そう思いながら、外からでも十分騒がしいゲーセンの中に入って行く。
中は非常にタバコ臭い。
そしてとにかくうるさい。
……よく好き好んでこんな所へ来るよな。
絶対馴染めないよ。
そんなことを考えつつ、直樹はきょろきょろとタケシの姿を探す。
まず、タケシの学校の制服を探そう。
そう思った直樹だが、みんな私服姿で分からない。
…髪型がタケシみたいな奴に、片っ端から聞いて行こうか。
直樹はゲーセンの中を1周、2周……ぐるぐるうろうろし続ける。
と、トイレの看板の前に、見たことのある顔がちらりと見えた。
周りの騒音でよく聞こえないが、誰かに向かって怒鳴りつけているような様子だ。
直樹はじっと、そちらを見る。
そこには3人の男子がこちらに背を向けて立っていた。
その中の2人の横顔に、何だか見覚えがあるような気がする……。
……アレ?
アレ、誰だったかな……。
うーん……
思い出せない。
直樹は彼らに近づき、後ろから声を掛けようと口を開きかけた。
しかしその直後、3人の隙間から見えるその向こうに、1人へたり込んでいる人に気づく。
覗き込むと、それはタケシ。
……あ!!
直樹は3人を掻き分け、タケシに近づいた。
「タケシ! 探したぞ!!」
話し掛けた直樹に、タケシは、
「ヘヘッ!ヘヘッ!へへへへへへへッ!ヘヘッ!ヘヘヘヘヘッ!
……おう、秋月やないかい。お前何や?何でこんなトコにおるんや」
タケシの目は何だか虚ろで、様子がおかしい。
「何だ?この3人にやられたのか?怪我したのか?大丈夫か、タケシ」
両肩を掴んで揺さぶる直樹にタケシは無抵抗で、首がガクンガクンと前後に揺れる。
見たところ、タケシの体に流血している様子はない。




