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短編

イト

作者: あきの丘
掲載日:2025/12/11

私は今、両手を長い糸で結ばれている。


左手は過去。

右手は未来。


決して逃れることはできない。

私の人生は大きな布とともにある。


玉結びで始まり、

幾度もなみ縫いを繰り返し、

時には本返し縫いでしっかりと噛み締め、繋ぎ止める。

だけど、これはあくまでも体感の話。


時の流れは手縫いではなく、ミシン縫い。

常に一定のペースで着実に進んでいく。

上糸、下糸。

2本の糸できっちりと縫い付けられ、

断ち切ることは難しいだろう。


体感の話に戻そう。


人生において自分の指針となるのは、

結局、自分が何をしたか、だと思う。


だとしたら、

針を持つのも自分であり、

縫い付けるのも自分である。

長針でも短針でも、

自分のペースで進めればいい。


糸が絡まってしまったなら(ほど)いて、

固結びになってしまったならば、

思い切ってはさみで切ってしまってもいい。


1箇所や2箇所切れてしまったところで、

そう簡単に解けやしない。

時間がしっかりと、

繋ぎ止めてくれるはずだから。


ただ、これには弱点がある。


自分の左手(過去)右手(未来)


腕に絡まる、

その結び目を切ってしまったとしたら。


これは、過去の全て、

未来の全てを否定するということだ。


そうしたらどうなる。


意図も容易く、(人生)から切り離される。


過去を否定することはやめられない。

どうしようもない過去への後悔が、

どこまでも付き纏う。


未来を否定することもやめられない。

漠然とした、真っ白な世界。

進むべき方向もわからず、

自分の不甲斐なさに失望する。


かといって、全てを否定しないでほしい。


過去へ、

ひとつひとつの縫い目に愛着を持ってほしい、

それでも見たくなければ切ってしまえばいい。


未来へ、

自分の針を持ち替える覚悟を持て。

多少方向を間違ったって修正できるさ。

立ち止まったっていい。


そうしていつかその先で、

大きな布(人生)に、

その糸で何を描いたか。


胸を張って言えるように、

私はなりたい。












お読みいただきありがとうございます!


人と人との縁を糸に例えて

表現することがあると思います。

人生もある意味、一本の糸のような気がします。




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