11-2・本は高額
「ねぇ、智人。観光も良いんだけど、僕も買い物したいな。
本屋に連れてってもらえないかな?」
「構わんけど、急にどうした?」
「この世界のこと、調べたいの」
僕等を乗せた馬車は、闘技場を発って商店街へと向かう。
「ねぇ、智人は中世ヨーロッパっぽい世界なのに、
本が普通に市販されてんのを不思議に思わないの?」
「中世ヨーロッパっぽいけど、中世ヨーロッパではないからな。
特に疑問に感じたことはない。
そんなに不思議なことなのか?」
「うん、中世ヨーロッパ文明では、僕達の住む現代とは違って、
紙はメチャクチャ高級品のはずなんだよね。
僕は、過去に転移をした人が紙を作る知識を広めたと思っている。
そんな人の話、智人なら聞いたことないかな?」
「紙を広めた奴の話は聞いたこと無いな」
「紙って西都市でも作ってるの?」
「細々と・・・程度だけど作ってる。
だけど大半は、南の都市・サウザンから仕入れてるな」
「サウザンの町・・・ね」
南都市では米が栽培されている。つまり藁が大量のある。そこで藁を原料にした紙が作られているのかもしれない。・・・まぁ、稲の藁だけじゃなくて小麦の藁でも作れるから、「サウザンで間違いない」とは言えないけどね
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「・・・おぉ~~~~~」
本屋に来た。さすがに、紙を大量に作る技術、印刷の技術、どちらも未発達なので、僕達の住む現代の書店みたく数え切れないほど大量の本は無い。2つの本棚に並んだ計200冊くらいの本を物色する。
「あっ!これっ!」
薄手の見覚えのある本を発見したので、引っ張り出して開いて確認する。ペイイスで読んだモンスターの本だ。その後も物色していたら、モンスターの本は3種類あった。
1冊は1㎝以下の厚さで「町や村の近くに生息するモンスター」の本。ペイイスで読んだ本ね。15㎜くらいの厚さで、内地のモンスターを網羅した本、それから、25㎜くらいの厚さで外地で確認されたモンスターの記されている本。
3冊のうちのどれかを買うつもりでキープしつつ、他の本も探す。残念ながら薬草の本は無かった。
「尊人、本って高いんだぞ。君じゃ手が出ない。買ってやろうか?」
「大丈夫・・・多分ね。
かなりヤバい金策だったけど、お金はそれなりにあるから」
この国の歴史書も読みたかったけど無かった。地政学書、自然科学っぽい本等々、他にも読みたい本は何冊か有ったけど、予算オーバーしたら恥ずかしいので、とりあえずモンスターの本3冊を持って、お店の主のところに行って値段を聞いてみる。少しくらい高くても一番厚い本を買いたい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一番厚い本、質素な馬車よりも高くて買えなかった。
「すまんな。俺でも、この本は公爵の許可を得ねば手が出ない」
「き、気にしないで・・・・・・・・・・・・・・
ほ、本くらい自分で買うから・・・・・・・」
内地のモンスターを網羅した本でも良質な馬一頭と同じくらいの価格。厚さに比例して値段が上がるくらいかと思っていたので全くの予想外。脳内で僕の金銭感覚がパンクする。
「こ・・・これでいいです」
僕は「こんな高いの買っちゃって大丈夫か?」と思いながら、良質な馬一頭と同じくらいの価格の本を受け取って、大きい金貨1枚を支払った。
他にも読みたい本は有ったけど、怖くてこれ以上は買えない。
「チート様!」 「チート様!」 「チート様!」 「チート様!」
馬車での移動中は、相変わらず、町中で智人コールが発せられているんだけど、僕には気にしている余裕が無い。買ったばかりの本を「無くしたら大変」と胸に抱え、「これと同じ値段」と目の前で馬車を引いている馬を見詰める。
「どうだ、気に入った子いるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「織田に似た子でも良いぞ。俺が先に遊んじゃったけどな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「結構、積極的だったぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
智人がなんか喋ってるけど、本を守るのでいっぱいいっぱい。片方の耳に入って、脳には留まらずに、もう片方の耳から抜けていく。
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夕食&入浴後、「どうせまた智人に呼ばれる」と思ってサロンに行ったけど、誰もいなかった。
「ありゃ、いない。部屋にいれば、そのうち呼びに来るかな?」
常に呼ばれるのを待つ立場ってのも少々情けないけど、僕と智人は、いつも僕が受け身の関係(・・・てゆーか、誰に対しても僕が受け身)。
「あれ?こんなところで何してんの?」
サロンを出たら、真田さんがいた。
「徳川くんなら、きっと今日は呼びに来ないよ」
「ん?・・・なんで?トモに何かあったの?」
「うんっ!徳川くん、急用ができたの」
「『尊人くんが来てから、チート様が相手をしてくれなくなった』
・・・ってバクニーさんが嘆いていたから、
『部屋に押しかけろ』って焚き付けちゃった」
「・・・・・・ん?」
「きっと今頃、徳川くんは、徳川くんの部屋でバクニーさんと一緒」
「バクニーさんと・・・
(シャイな僕は恥ずかしくて言葉で表現できません)」
「・・・うん、そう」
僕には全く関係無いことなんだけど、何故か赤面をしてしまう。真田さんって、こーゆー話、平気なのかな?
「そ、それは・・・大変だね(大変なのかな?)」
智人にすっぽかされてしまった(約束はしてないけど)。少し早いけど、部屋に帰って、寝ることにしよう。
そこまで考えて「あれ?」と違和感を覚える。僕がすっぽかされたのは良いとして、なんでわざわざ真田さんが教えに来てくれた?なんで僕がサロンにいるのを知っている?
真田さんがニィッと笑顔になった。
「んっふっふ!見てよこれ。高かったけど買っちゃった」
真田さんが後ろに隠してた本を見せてくれた。
「・・・これって」
それはペイイスの村で宿屋の主から借りていたのと同じ薬草の本だった。
「わっ!わっ!それ欲しかったやつ!真田さん凄いっ!
サロンに入って、ちょっと待ってて!」
テンションが爆上がりした僕は、走って自室まで行って、買ったばかりのモンスターの本を持ってサロンに戻る。真田さんは椅子の上に体育座りをして待っていてくれた。




