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智人-5・英雄の称号

「よぉ、チート(智人の渾名)!

 最初に合うクラスメイトがオマエとは思わなかった。

 一緒に乗ってる女がバクニーってヤツか?」

「う、うん・・・そうだけど・・・」

智人チート邪魔。馬車から降りろ!」

「・・・な、なんで?」

「女に用があるからだよ!ついでに馬車ももらう!」

「バクニーになんか用があるの?」

「頼まれたんだよ!」

「誰に?もしかして藤原君に?」


 遠藤は藤原グループのメンバーだ。だけど、藤原と同格の友達って感じじゃなくて、藤原の御機嫌取りばかりしている腰巾着のイメージだ。そのクセして「俺はスクールカーストの1軍だ」みたいな態度で、暴力的&高圧的に接してくる。


「バーカ!史弥(藤原の名前)のワケねーだろ!

 さっき、最初に会ったのが智人チートって言ったばっかじゃんよ!

 聞いてなかったのか?まぁ、オマエ、バカだから仕方が無いか!」

「だ・・・だったら誰に?」

「オマエには関係ねーだろ!」

「・・・・・・・・・・う、うん」


 リアルワールドでは、「こいつバカなんだから争っても無駄」って思いながら要求を飲んだ。クラスメイトとは争いたくないから、今回も要求を飲むべきだろうか?俺が馬車から降りれば全部丸く収まるなら、それが一番簡単だ。


「・・・バクニー?」


 俺は馬車から降りようとして、バクニーが俺のブレザーの裾を掴んでることに気付いた。バクニーは俺の背に隠れるようにして怯えている。思い出した。バクニーは父親の政敵に狙われたんだ。


「か、関係あるよ。誰に頼まれたんだっ!?」


 遠藤に依頼をしたのがバクニーを狙ったヤツなら、渡すわけにはいかない。


智人チートのクセに歯向かうってのかっ!?」

「歯向かってるわけじゃないっ!」

「オマエ、邪魔!もういいや!

 特殊能力フセイ・ドミネート発動っ!」

「ま、待ってくれ!」

「待ってやる時間は終わったんだ!智人チートをボコって、女を捕まえろっ!」


 遠藤の命令を受けたコボルト2匹とゴブリン1匹が馬車に襲いかかった!・・・が、モンスター達は、馬車に取り付く前に、俺が召喚した剣を上から浴びて串刺しになる!


「なに?」


 遠藤は「何が起きたのか把握できない」って表情をしてる。


特殊能力フセイ・イメージ発動。

 俺は言ったはずだ、『待て』と。聞かなかった君が悪い」


 光のガイドは「俺に優しい世界」と言っていた。その意味がようやく解った気がする。俺が受け取ったメッセージには「不要な人間を30人記せ」と表示されていた。真っ先に思い付いたのは、俺を小バカにする連中と、俺がカースト底辺に押し込められているのに見て見ぬフリをする先生。でもそれでは7人しかいない。だから、残る23人はクラス内の目障りな連中を記入した。


 ここは、俺が求めた世界。つまり下らない抑圧をされずに、俺らしく生きられる世界。そして、俺をカースト底辺に押し込めた奴等に「ざまぁ」をできる世界なんだ。


「テメエっ!」


 彼もモーソーワールドに来る前に光のガイドから説明を受けて、俺と同じ初期装備をもらったようだ。質素な剣を抜刀して突進をしてきた。


「カスを従えてイキってるなんて、相変わらずだな。

 強いモンスターを倒して支配すれば、かなり強力だったろうに・・・

 短絡的な君じゃ、そんな発想はできないんだろうな」


 俺は右手を頭上高く上げて、人差し指を天に向ける!


「アグニの炎召喚!!」


 俺の頭上に直径2mほどの火の玉が発生!遠藤は驚いて足を止めた。


「ひぃぃっ!わ、解った!言う!!

 この世界に転移した直後に、偉そうなオッサンに飯を食わせてもらって・・・」

「もう遅い。俺は、君が俺に怒っている以上に、君に腹を立てている!

 俺を怒らせたのは君だ!」

「ひぃぃっっ!!」


 愚かな遠藤は「自分が助かる」なんて甘い考えを持っているのだろうか?俺に楯突いた時点で命運が尽きたことに気付かなかったのだろうか?

 俺は、天に向けた指で遠藤の背を指すようにして、頭上の火の玉を打ち出した。


「無能はどんな状況でも無能のまま。

 信用できないヤツは、環境が変わっても信用できないまま。

 ふふふっ。君のお陰で、良く解ったよ」


 遠藤は悲鳴を上げ、灼熱に包まれて、骨も残さずに消滅する。

 嫌いなヤツだけど、クラスメイトに手を掛けたのは心が痛む。だけど、俺を本気にさせてしまった彼が悪い。バクニーを物のように扱おうとした彼を許すことはできなかった。



「あの・・・先ほど、刺客からチートと呼ばれていましたが、アレは一体?」 


 戦いを終え、町に向かう馬車の中で、バクニーが質問をする。


「ああ・・・名前が智人だからさ、

 なんか、いつの間にかチートって渾名で呼ばれるようになってた」

「素敵なお名前ですね。

 伝説の英雄に与えられる称号・千威徒チートと同じ響きなのですね」

「えっ?英雄?」

「差し支えなければ、チート様とお呼びしても構わないでしょうか?」

「ああ・・・まぁ・・・いいけど。」


 フレッシュゴーレム討伐と、リアルワールドではイキリまくっていた遠藤の仕置き・・・。俺の特殊能力フセイって、かなり凄いかもしれない。


「俺は、この世界で英雄になる!」


 リアルワールドでは、環境や俺を理解しない奴らの所為で、才能を上手く活かせなかった。だが、モーソーワールドなら、才能を使い熟して“俺らしさ”を存分に発揮できそうだ。


 馬車が大きな門を通過して、セイの町に入る。


出席番号4番【遠藤英司】・・・脱落


イメージ

使用者:徳川智人

 想像できる攻撃力を召喚する。機械的な物は召喚不可能。使用者の集中力が切れると召喚した攻撃力は消える。


ドミネート

使用者:遠藤英司

 倒したモンスターを使役できる。使用者が戦闘力を上げてトロールやドラゴンを倒せば使役可能。


~~~~~~~


 ここまでメインを務めた徳川智人は主人公ではありません。

 次回1-1から主人公の物語が始まります。

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