7-5・異世界で僕の世界の品を売るチートで大金持ちになる
御殿みたいなお店に入って真田さんの制服を「売りたい」と鑑定してもらう。オーナーっぽい中年男性は、上着に触れ、裏側を見て触り、裾や袖を軽く引っ張り、ワイシャツの胸辺り(ポケット)を撫で、スカートの臭いを嗅ぐ。
「ただのヘンタイじゃん」
「ヘンタイ親父だね」
「売るのやめれば?」
「売値聞いて安かったらやめる」
「ふむ・・・非常に珍しい形、未経験で耐久性の高い生地、丈夫な作り・・・
汚れを落として仕立て直せば、衣装、美術品、どちらの名目にしても、
珍品好きの上級貴族に売れそうだ。
これくらいの金額で買い取らせてもらえるかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
目の前のカウンターに、見たことの無い大きな金貨が3枚並んだ。
「これいくら?」
「わかんない。3万円くらい?」
大きな金貨の価値は解らないけど、「高いだろうな」ってことは理解できる。あくまでも勘だけど、僕のブレザーも売れば、明日の宿泊費は何とかなりそうだ。
「あの・・・こっちも買ってもらって良いですか?」
早速、僕のブレザーも鞄から引っ張り出して鑑定を依頼する。
「ほぉ・・・先程の品より布地が多い。
痛んだ部分を直せば戦場でも着用できそうだな」
僕のブレザーは大きい金貨3枚と銀貨10枚に替わった。
「あ、ありがとうございました」
あとで「鑑定額を間違えたから金返せ」と言われたら困るので、ビビりながら硬化を握り締めて、そそくさと店を出る。
「全部でいくら?」
「よくわかんない。7万円くらい・・・かな?」
あちこちの店を見て廻って理解した。大きい金貨1枚で丈夫な馬が一頭買えるっぽい。
「ヤバくね?」
「ヤバい」
いきなり大金持ちになってしまった。ビビりすぎて震えが止まらない。この世界には無い生地だったから、凄まじい高値が付いたのだ。
「ど、どうしよう?
これだけお金があれば、お城みたい宿に泊まれるんじゃない?」
「余裕で泊まれると思うけど、今更・・・だよね。
今後、何が有るか解んないから、無駄遣いは止めようよ」
「そ、そうね。
でも、着替えが無くなっちゃったから、1着くらい服買っても良い?」
「それくらいは買おうよ。僕も、もう1着くらいは欲しい」
直ぐに服屋に行って物色をする。
「あたし、これにするぅ~」
「えっ?また男物?」
値段を確認せずに綺麗なドレスを希望しても、余裕で買えるだろう。だけど、真田さんが選んだのは、男性用のローブとズボンだった。ローブの色合いが鮮やかな黄色で、華やかな模様の刺繍が入ってるあたりが、一応は“女の子らしさ”になるのかな?
「ドレスはズルズルして動きにくくてイヤなの。
ハーフパンツやショートパンツがあれば買いたいけど、
そ~ゆ~の売ってないし」
初期装備(?)の制服を売っただけで数十万円レベルのお金を得られるなんてチートじゃん。今までの苦労は何だったんだろう?
「柴田くんや綿本さんもブレザー持ってるかな?全部売れば、馬車買えるよね?」
「買えるね」
「仲間を集める度に制服売れば、馬車いっぱい買えるよね」
「買えちゃうね」
「村で売るより町で売った方が高くなるかな?」
「多分ね」
今すぐにペイイスの村に戻って、皆に制服の下取りを勧めたい気分。西の英雄チートに会った後は、皆で所持金を気にせずに仲間探しの旅に出発できそうだ。僕達は興奮気味に宿へと帰る。
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団体部屋には、藁が敷かれた粗末なベッドが5×2列に並んでいる。ここまでは、まぁ、想定の範囲内なんだけど・・・同時に、とんでもない想定外が発生してる。
「うわぁ~・・・ここで御都合主義が発生しちゃうの?」
ボロい宿なので他に泊まる人がいない。つまり、10人くらいが泊まる狭い団体部屋には、僕と真田さんだけ。真田さんは「男子のフリしとけば何とかなる」と言ったけど、僕は「真田さんが男子ではない」と知ってる。この「不可抗力で美少女と一夜を共にする」って御都合主義は求めてない。
「どうしよう?お金有るから2部屋取る?」
「調子に乗って使っちゃうと後が大変だろうから倹約しよ」
「うん、わかった・・・
じゃあ・・・僕はこっちの端っこで・・・」
気を使って、「真田さんは通路側の端のベッドで寝る」を前提にして、一番窓側のベッドに荷物を置いて陣取る。
「なら、あたしはここね」
そしたら、真田さんは僕のベッドの隣の隣を選んで荷物を置いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕を健康的な男として認識していないのかな?それとも、一応、ベッド1個分を開けて気を遣ってるつもり?自分が年頃の美少女って自覚有る?
「そっち側(ベッド3つ分空けて、更に対面側)が良いんじゃない?」
「他にお客さん来るかもしれないし・・・」
「まぁ・・・そうだね」
「お風呂どうする?」
「ああ・・・僕が湧かすんだっけ。
湧いたら呼ぶから、しばらくノンビリしてて良いよ」
さっきまでは気軽に会話できていたけど、「部屋に二人っきり」って考えたら、意識してしまって一緒にいるのが苦しい。
「お風呂、覗かないから安心してね」
何の言い訳してんだろ?今、絶対に余計なこと言ったよね?僕は、そそくさと部屋を出て、庭で薪割りをして、風呂用の釜に火を入れる。
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どこで選択をミスした?宿を変えるべきだった?風呂焚きは返上するべきだった?
100%ミスった自覚しかない。だって、僕が火吹き棒でふーふーしてる場所から壁を1つ隔てて、真田さんがお風呂に入ってるんだよ。
ふーふーしてるのや釜の火に照らされてるのとは別の意味で顔が真っ赤になる。湯を被る音や浴槽に入る音を聞いてるだけで、色々と想像をしてしまって、僕は「僕の体が健康的な男子」ってことを自覚する。
「湯加減どうですかぁ~!」
「うん・・・だいじょぶ」
ちっちゃい声で真田さんの返答が帰ってきた。今の質問も、絶対にミスってるよね?
「色々とヤバい・・・」
結局、僕達以外に泊まる人は来なかった。「手を伸ばせば届くところ」ではないけど、「ベッドの上から飛び跳ねれば抱きつけるところ」で女子が眠っている。
「明日、絶対に寝不足になってる。40㎞も歩けるかなぁ?」
もちろん、その日は全然眠れませんでした。真田さんと1つのベッドで何かしたって意味じゃなくて、大金持ちになって興奮が冷めないからでもなくて、1人で悶々としちゃってね。隣の隣のベッドで真田さんが動く度に、僕は目を見開く。「寝たい」と思って焦れば焦るほど目がさえていく。
尊人は現時点では織田櫻花に一途。だけど、視野の外側にいた早璃が入り込んできて、かなり戸惑っている状況。




