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7-4・ノスの町

「わぁ~~・・・ペイイスの村と全然違う」


 外から眺めて一定の予想はできていたけど、門の内側は立派な石造りの建物がたくさん建って、商店が並んで人々で賑わっている。


「僕等の町(現実世界)より活気があるよね?」

綿本わた達にも見せてあげたいね」


 その後、乗せてもらったお礼で荷下ろしを手伝うことにした。僕が馭者さんに手を貸してたら、真田さんも文句を言わずに手伝ってくれる。


「尊人くん、やるじゃん。こ~ゆ~の大事だよね」

「うん」


 差し引きすると、徒歩でここに到着するより時間がかかっちゃうだろうけど、そう言う問題ではない。

 小っちゃくて華奢なので、真田さんが大きな荷物を運んでると、「足の生えた荷物がフラフラしながら歩いている」ように見えて、チョット笑いそうになった。

 何軒かのお店に荷下ろしをして、親切な馭者さんと別れる。


「華奢なボウズ、ちゃんと飯食えよ」

「ボーズは尊人くんだけだってば」 


 結局、真田さんは最後まで馭者さんから男の子だと思われていた。


「尊人くんさ」


 馭者さんが見えなくなったら、真田さんが跳ねるようにして僕の前に出て微笑む。


「ん?なに?」


 真田さんの笑顔が胸に突き刺さって、ドキドキしてしまう。


「あの馬車が目の前に止まった時、あたしを守ろうとしてくれたでしょ?」

「ああ・・・うん・・・まぁ・・・あの・・・

 あんなに良い人とは思わなくて・・・なんか警戒しちゃった」

「あの時の尊人くん、格好良かったよ」

「あ、ありがとう」


 恥ずかしさが半分で、褒められた嬉しさが半分。なんで咄嗟に出た言葉が「感謝」なのかは不明。こ~ゆ~時、柴田くんなら、もっと気の利いた格好良いこと言えるんだろうな。



 ・・・で、問題発生。


「高っ!」


 お城みたいな宿に入ったら、宿泊料金がメチャクチャ高かった。今日はノスで一泊して、明日は南西にあるミナーシャの村でもう一泊する予定だったのに、手持ちだけでは一泊すらできない。


「・・・と、泊まるのやめます」


 受付の人から「帰れ貧乏人」的な目で見られながら、お城みたいな宿から退場する。


「どうする?次の村まで行っちゃう?」

「到着する前に夜になっちゃうよ。もう少し安い宿が無いか探そう」


 商店街の賑わいを楽しんでいる余裕が無くなった。偶然、この世界で一財産気付いたクラスメイトに遭遇する・・・とか、途方に暮れてたらブラークさん登場・・・なんて御都合主義は起こりそうに無い。下手すりゃ町中でホームレスだ。僕1人ならともかく、真田さんにそれはさせたくない。


「事情を説明して、どっかのおうちに泊めてもらう?」

「どんな事情?

 見知らぬ僕等を泊めてくれるような『立派な事情』なんて思い付かないよ」

「・・・だよね」


 真田さんなら「立派な事情」が無くても、もしくは「美少女なのに泊まる場所が無い」という「立派な事情」で民家に押し込めるかもしれない。最悪の場合、「僕はホームレスをする」って選択肢は考えておく。


「あっ!あの宿屋さんは?」

「あれは・・・宿なのかな?」


 幾つもの宿を廻って、繁華街からだいぶ外れた場所に建つオバケ屋敷みたいな宿に辿り着く。

 受付の人(兼オーナー)はお爺ちゃんで、建物の見た目は、ペイイスの村で家替わりにしていた宿の倍くらいボロい。でも宿泊料は高かった。


「部屋を2つ借りたら、明日の宿泊費が足りなくなっちゃうね」


 少しでも早く【西の英雄チート】に会いたい。つまり、バイトを見付けて生活費を稼いでいる余裕なんて無い。


「団体部屋でベッド2つかぁ~。

 真田さん、申し訳ないけど我慢してもらって良い?」

「仕方無いよね。男子のフリしとけば何とかなるでしょ」


 高いのにボロくて、しかも団体部屋で、納得できないことは沢山あったけど、背に腹は替えられないので泊めてもらうことにした。


「2名1泊じゃな。

 夕食と朝食は?その辺で食うよりは安くしとくぞ」

「あっ!・・・ならお願いします」


 オーナーのお爺ちゃん、僕達が貧乏って察してくれたみたい。


「風呂の湯を自分達で湧かすなら宿泊代は少し安くしてやる」

「あっ!・・・僕が湧かします」


 風呂番は経験してる・・・てか、まさか、安藤さんに押し付けられた風呂番が、ここで役に立つとは思わなかった。


「明日の宿泊費・・・多分ヤバいよね?

 尊人くん、どう思う?」

「だいぶヤバいね」


 風呂番で少しは値切ったけど、食事代込みにしたら残金が寂しくなった。次の村の物価は解らないけど、ペイイスの村と同程度なら宿泊は不可能だ。


「馬糞の片付けを手伝えば、もう少し安くしてくれるかな?」

「尊人くんが馬糞を好きなのは解るけどさ、

 馬屋に馬がいないから、馬糞は無いんじゃない?」

「好きでやってたんじゃなくて、安藤さんに馬糞ばっかり押し付けられてたの」


 とりあえず泊まる場所は確保できたので、脱貧乏の打開策を求めて街に繰り出してみる。


「バイトするわけにはいかないから、所持品を売るしかないね」

「なんかある?」


 先生の剣を売るつもりは無い。僕の所持品で売れそうなのは、革の盾と大きなナイフと小さい斧くらい。売って所持金に足せば、明日の宿代くらいにはなるかな?


「売れるか解んないけど・・・これ」


 真田さんが鞄から引っ張り出したのは学校の制服だった。それなら僕も持ってるけど秘境ヒキョー者狩りが怖いから着る気は無い。


「えっ?売るの?」

「一応、着替え用に捨てずに持ってたけど、着る機会は無さそうだし・・・」


 現実世界で「可愛い女の子の制服が高値で売買される」って都市伝説を聞いたことあるけど、異世界でも通用するのだろうか?


「あ・・・あの・・・真田さんってそ~ゆ~子なの?」

「あっ!尊人くん、今、変なこと考えた?そんなわけ無いでしょ」


 真田さんの軽いローキックが、僕の裏腿に入る。



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