7-2・転移日の差
恥(バレンタインの生涯獲得数ゼロ)を晒したからかな?それとも、僕は真田さんを女子として認識していない?なんか、真田さんは話しやすい。
「真田さんって、僕達と合流したのは、この世界に来て2日目だったんだよね?」
「あっ!バタバタしてて聞けなかったけど、それ、あたしも聞きたかった。
尊人くんや安藤、もう、この世界に慣れてたよね?
たった2日間で、あんなに馴染んでバイトしてたの?」
僕、まだこの世界に馴染んでいません。
「転移の日、みんなバラバラっぽいんだよね。
僕は、真田さんと合流した日で5日目、
今日で、え~っと・・・9日目・・・かな」
真田さんは僕の3日後、綿本さんは3日前で、柴田くんと力石先生は7日前の同日。安藤さんに至っては僕よりも8日も早く転移している。
「へぇ・・・だから、安藤は、我が物顔してたんだ?」
「安藤さんの態度が大きいのは、普段(現実世界)と変わらない・・・かな」
「どーゆー順番だろうね?名簿順ではなさそう・・・」
「席順でもないよね」
「目黒くんは?」
「聞いてないから解んない。
今川くんと毛馬内さんと二宮くんと橋本くんと隣のクラスの鰐淵くんは、
僕と同日か、僕よりも前だね(5人は脱落済み)」
「全部で51人が転移したんだっけ?」
「僕達のクラスは多分全員で、綿本さんみたく隣のクラスの人が数名・・・かな」
50人以上が転移してる状況で、たった11人のサンプリングでは転移順の法則なんて解るわけがない・・・が、
「ぬあ(沼田さん)!」
「え~~と、真田さんと仲良いから真田さんと同じ日!」 「あたしの翌日!」
「吉見くん!」
「1週間前!」 「僕と同じ日!」
「ゆいゆい(由井さん)!」
「真田さんと身長が同じくらいだから、真田さんと同じ日!」
「あたしと同じ日ばっかりじゃん。ゆいゆいは3日前!」
僕達は、真田さんが発案した「クラスの皆の転移日当てゲーム」をしながら歩く。もちろん、本人に会わなければ正解は解らない。
「藤原くん!」
「安藤と同じ日!」 「あっ!被った!」
「あんちゃんて、絶対に藤原のこと好きだよね」
「僕と会って直ぐに『藤原くんの居場所知らないか?』って聞いたよ」
もの凄くどうでも良い会話なんだけど、黙々と歩くよりは楽しい。クラスメイトの名をピックアップすることで、「みんなに会いたい」と思える。
「おうかっち(織田櫻花)!」
「えぇっっ!!?・・・・あのっ・・・そのっ・・・
おーちゃん・・・・オダサンは・・・」
ヤバい。「僕と同じ日(希望)」って言ったら、僕が「櫻花ちゃんを好き」ってことがバレるかな?
「なんでそこで“どもる”かなぁ~?」
「え~~~~~と、真田さんと同じ日(理由はクラスのスリートップだから)!」
「あたしと安藤の転移日の差が12日間もあるのに、
転移する女子、あたしと同じ日ばっかりじゃん」
ちょっと膨れっ面になった真田さんの軽いローキックが、僕の裏腿に入る。
・
・
・
3時間くらい経過。「そろそろノスの町までの半分を歩いた!」と思いたいけど、まだ2/5くらいだろうか?
「疲れてない?」
「まだ大丈夫。尊人くんは?」
「僕も全然平気。真田さん、女の子なのに凄いね。
陸上部の長距離やってるから体力あるんだね」
「ずっと走ってるからね。運動不足の男子よりは体力に自身あるよ。
でも、尊人くんだって体力あるでしょ。
バスケ部で、いつも汗ダクになって走り込んでるじゃん」
陸上競技部は、基本的には学校ではなく陸上競技場に行って練習をしている。だから、僕の学校での練習風景を知っていることに少し驚いた。
「まぁ・・・体力だけは・・・ね」
中学1年からバスケをやってる。バスケのマンガに影響を受けて、「僕も主人公みたくなりたい」なんて思いながら入部をした。練習が苦しいと思うことは沢山あるけど充実はしているし、バスケは楽しい。でも、「上手くなる」は別の話で、少しずつは上手くなるんだけど、スタメンに選ばれる人達は僕の倍以上の早さで上手くなっていく。僕の定位置は応援要員だった。
中学時代の櫻花ちゃんはテニス部で部長をやっていた。すごく差を付けられてしまった気がして、あんまり話さなくなった。高校になった櫻花ちゃんは、大活躍が約束されてるはずのテニスをあっさりと捨てて弓道部に入っていた。しかもシッカリと好成績を獲得して、秋からは副部長をやっている。
アニメやゲームだと「平凡で優柔不断な主人公が可愛いヒロインに一途に好かれる」みたいなラブコメが当たり前のようにあって、ちょっとは期待してしまうけど、現実ではそんな御都合主義は起こらない。おーちゃんは、どんどんと遠くに行っちゃう。
「好きなんでしょ?」
「えっ!?」
「バスケ」
「ああ・・・うん」
真田さんの声で我に返る。櫻花ちゃんが好きなのがバレたのかと思って、焦ってしまったよ。
「真田さんは、結構速いんだよね?」
「県内の大会レベルならね。あれ?何で知ってるの?」
「柴田くんが言ってた。
それに、修学旅行の時に沼田さんが言ってたよね」
「ああ・・・あの時ね。
そう言えば、縫愛(沼田)が言ってたっけ?」
あの時とは、修学旅行で、僕達の部屋に真田さんと沼田さんが遊びに来た時のこと。
「尊人くん、眠そうにしてたね。正座に巻き込んじゃってゴメンね」
「ああ・・・まぁ・・・大丈夫」
当時は「そりゃないよ」と思ったけど、今となっては良き思い出です。
「布団取られたのは驚いちゃったけどね」
先生が部屋に入ってきたので、布団を被って寝たふりをしようと思ったのに、真田さんと沼田さんが隠れる為に奪い取られちゃった。仕方が無いので布団を被らずに寝たふりをしたけど、冬なのに何もかけずに寝るのは無理があって、直ぐにバレてしまった。
「真田さん達も先生に頭叩かれてたね。痛くなかった?」
「もちろん痛かったよ。あたしが主犯だから仕方ないんだけどさ」
「あのあと正座させられてたの?」
「うん、させられてた。15分くらいだけどね。
部屋に押しかけて尊人くん達に迷惑かけちゃったこと、
次の日、俊一くんに怒られちゃったよ」
修学旅行で、真田さんと柴田くんは同じ班だった(僕やトモは別の班)。連帯責任で、翌日の観光を返上してホテルで勉強させられていた可能性があるんだから、柴田くんが怒るのは当然だろうな。
「俊一くんは、綿本とコッソリ会ってたのにね」
「えっ!そうだったの!?」
「あたしが『俊一くんにコクれ』って綿本を焚き付けちゃったの」
超今更だけど、僕達の正座中に戻ってきた柴田くんが嬉しそうな顔をしてた理由が解った。
「柴田くん、違反したの見付からなかったのに、一緒に正座してくれたんだよ」
「へぇ・・・いいとこあるじゃん」
「上手に寝たふりをして正座しないで済んだのは、智人だけ」
「徳川くん、正座逃げたんだ?」
「うん。正座終わったあと、誤魔化すのが下手すぎるって笑われちゃった」
「尊人くんなら、部屋のみんなが怒られてれば、逃げたりはしないよね?」
「うん・・・まぁ・・・そうだね」
上手く逃げた智人を見て「僕って要領が悪いなぁ」って思ってたけど、真田さんの評価は真逆だった。確かに、正座する必要無いのに付き合ってくれた柴田くんのことは、「要領が悪い」じゃなくて「ちょっと格好良い」って思えたかな。
「巻き込まれただけなのに皆と一緒に正座した尊人くんや、
見付かってないのに正座に付き合った俊一くんと、
巻き込んだ側なのに逃げた徳川くん。
多分、そ~ゆ~ところ・・・かな?
みんなが徳川くんを嫌がってる理由・・・。」
「・・・う~~~~~ん」
「え?そこ、悩むところじゃないよ」
昨日は智人の悪口言われて頭に来たけど、こうやって落ち着いて話すと、柴田くん達の言ってたことが少しは納得できてしまう。




