智人-7・英雄の背負う宿命
道中、俺は親友の尊人のことを考えていた。
光のガイドは「この世界に転移したのは51人」と言っていた。俺と、俺が生贄に指定した30人、そして誤差で巻き込まれた20人。
尊人のことは指定していない。だけど、隕石衝突の状況を考えれば、ほぼ間違いなく「誤差」として巻き込まれている。
「要領の悪いミコが、この世界でちゃんと生きていけるとは思えない。
アイツだけは俺が守ってやらなきゃ・・・」
2年生になった直後は、同じ趣味を持つ目黒と仲良くなった。一緒にゲームをして楽しんだ。だけど、オンラインゲームのノーロピアンワールド・アクションをやるようになってから、目黒の身勝手ぶりが苛立つようになった。俺が丁寧にアドバイスをしてやるのに、アイツは我流を崩さない。その所為で、パーティーを組んでいると足を引っ張られる。目黒の所為で思うようにランキングを上げられない。我慢の限界が来て「アドバイスを無視するなら組めない」と言ったら「それで良い」と言われた。
その後は、クラス内で孤立をした。多分、目黒が俺の悪口を言いふらしたのだろう。クラスの連中は全てが「ツマラナイ奴」と思えた。
そんなある日、グループを作って課外授業をする機会があった。俺は誰とも組みたくなかったけど、力石(先生)と周りの下らない奴等に押し付けられる形で、尊人のグループが俺を受け入れた。
それまで、尊人のことは「生真面目で融通が利かない根暗」と思っていたので、あまり話したことが無かった。だけど、話したら良い奴だった。尊人は俺がクラスで孤立していることを、全く気にしなかった。俺の話を笑顔で聞いてくれた。頼りないところがあって、生真面目すぎて、変なところで頑固。ちょっと険悪になることはあったけど、目黒の時とは違って、俺が許すと、尊人も直ぐに受け入れた。「本当の友達ってこういう奴なんだな」と思えた。
「尊人・・・オマエだけは俺が助けてやる。
俺と会うまでは絶対に生き残ってくれ。
一緒に、モーソーワールドを楽しもうぜ」
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馬を休ませながら3時間ほど進行した頃、事前に派遣していた斥候が合流してきた。
「チート様!野党達は、この森の奥の洞窟を隠れ家にしているようです!」
ホワイ騎士長が、地図を広げて指で示す。
「近くに開けた一角があります。
我らで誘き出しますので、チート様はその地で待機をお願いします!」
「了解!任せるぞ、ホワイ!」
ホワイ騎士長は、騎士2人と歩兵20人を選抜し、残りを俺に預けて森の中に踏み込んでいった。俺は数人の歩兵にチャリオットと馬番を任せて、護衛の騎士7人&歩兵70人と共に指定された地へと向かう。
「おっ!ここだな。」
3000㎡くらいの平原に出た。何故、森の中にこんな都合の良い平原が有るのかは不明。おそらく神が、俺の戦いやすい戦地に導いてくれたのだろう。平原手前の木の陰に身を隠して、次の動きを待つ。
やがて戦いの気勢が上がり、しばらくしたら20人くらいの野党が、ホワイ騎士長達に追われて平原に誘き出されてきた。
「うへへっ!しめたっ!ここなら無双できるぜ!!」
野党のリーダー格が勝ち誇り、正面に手の平を翳す。
「富醒発動・ライダー!」
リーダーが発揮した富醒で、3台のオフロードバイクが出現!1台にリーダーが、残る2台にサブリーダー格の2人が乗り、白騎士達に突っ込む!
「何だあの乗り物は!?」
「あれが鉄の騎馬かっ!」
「怯むな、かかれっ!」
ホワイ騎士長達が剣を振り上げ、バイクに向かって果敢に突進!
「ひゃっはぁ~~~!」
「ぐわぁっっ!!」
だが、ホワイ騎士長の剣はバイクの搭乗者に届かず、ホワイ騎士長はバイクに弾き飛ばされて地面を転がる!
「百戦錬磨の騎士団でも、さすがにバイクが相手じゃ対応できない・・・か」
俺は木陰から出て、戦場全体を睨み付けた!
「先ずは、バイク乗り以外を沈黙させる!
セイ兵よ!平地から退避しろっっ!!」
俺の号令で、西都市軍は一斉に退避をする!ダメージを追ったホワイ騎士長は、部下2人が肩を貸して連れていった!タイミングを見計らった俺は、腕を上げて手の平を天に向ける!
「富醒・イメージ!刃の雨!!」
次の瞬間、野党だけが残った平原に、無数の剣や槍が降り注いだ!
野党達は、バイクに乗ったリーダーを残し、刃に貫かれて全滅する!
「なにぃ!?」
俺は盗賊のリーダーを知っている。
「やぁ、加藤」
リアルワールドでは「加藤君」としか呼べなかった。だが挑発を込めて呼び捨てにして、加藤の前に進み出る。
「・・・てめぇ!」
野党のリーダー・加藤が、俺の存在に気付く。
「智人・・・テメーがやりやがったのか?」
俺は人差し指を立てて、天を突いた!
「富醒・イメージ!神炎!!」
加藤の頭上に巨大な炎の玉を出現させる!
「君がモーソーワールドで息を潜めて生きるなら、見逃すつもりだった。
だけど君は、この世界でも、人に迷惑ばかりかけている」
「はぁ?何言ってんだオマエ!?」
加藤奏太。出席番号6番。クラスのカースト1軍・藤原グループのメンバー。つまり、俺のことを率先して小バカにする連中の1人だ。
「物の力を自分の力と錯覚して調子に乗る勘違いっぷり
・・・リアルワールドにいた頃と、全然変わらないな」
「何が言いたいんだよ!?」
威勢良く悪態を付いている割に、加藤の表情が引き攣っているのが解る。
「神炎が怖くて仕方が無いようだな」
「・・・くっ」
「力で虐げられる気持ち・・・少しは理解できたか?」
「何様のつもりだよっ!調子にのってんなぁっっ!!」
安心した。やはりコイツは、裁かなければならないカスだ。
「君や遠藤、それから安藤あたりは、藤原グループに群がってる賑やかし!
実力や実績も無いクズのクセしてイキっている勘違い野郎!
後ろ盾が無ければ何もできない下らない奴だ!」
「ふざけんなっ!そう言うテメーはどうだってんだよ!」
加藤が俺を轢く気満々でバイクをスタートさせて突っ込んできた!俺が神炎を落としても、バイクの加速力なら回避できる・・・奴はそう考えたのだろう。
「甘い!既に神判は下っている!!」
「テメーこそ1年の時は、藤原の威を借りて・・・・・
ひぃぃ・・・・・・・うわっぁぁっっっ!!」
炎の玉は、地面への着弾と同時にクレーターを穿ちながら拡散!加藤をバイクごと飲み込んで灼熱で消滅させた!
「謝罪の1つもあれば俺だって・・・・いや、もう何も言うまい 」
野党討伐を終えた俺の元に、白騎士達が集まってくる。
「友であろうと、世を乱すなら断罪をする。
平穏という大義の為に、心を殺して手を血で染める。・・・重い十字架だな」
俺は「英雄の称号」に押し潰されそうになる。だがそれでもやらなければならない。それが、モーソーワールドの民達が、俺に望んでいることならば。
出席番号6番【加藤奏太】・・・脱落
ライダー
使用者:加藤奏太
バイクを召喚できる。使用者の熟練度が上がれば数十台を召喚してバイク軍団を組める。
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智人の物語は、身勝手な自己弁護を並べた奴を、何も考えずに描けば良いだけなので、凄まじく楽。まぁ・・・描くのは楽だけど、描いていて面白いかどうかは別。どちらかといえば、御都合主義すぎて面白くない。




