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5-4・モンスターの本

 大きな笑い声をアラームにして目を覚ました。僕は、宿屋の自室で仰向けになっている。


「ぎゃ~~~~っはっはっはっはっはっは!!」


 僕のベッドの隅に腰を降ろしている真田さんと、自分のベッドに腰掛けている柴田くんは、僕の顔を見て安堵の表情をしてくれた。だけど、椅子に座ってる安藤さんは爆笑している。


「面白すぎて腹痛ぇ!生き返った源にも解るように、もう一回説明してくれ!」


 柴田くんは呆れつつ、僕の為に何が起きたのか説明をしてくれた。

 真田さんが木の枝から飛び降りた直後に、僕は「パンツ」と叫んで落ちてきた真田さんから目を逸らした。一方の真田さんは僕が「パンツ」と叫んだのを聞いて、「パンツが汚れている」と勘違いして、慌てて足を閉じた。


「・・・・・で、真田ローティーンのニードロップが、

 源の脳天にクリティカルヒットってか。

 ぎゃ~~~~っはっはっはっはっはっは!両方バカだ!

 純情で助かったな源。

 ローティーンの尻をガン見してたら、顔面潰れていたぞ!」

「あたしは、ハイティーン!笑いごとじゃないでしょ、安藤あんちゃん

「いやいや、笑いごとだろ。だってさぁ・・・」


 真田さんがフォローをしてくれるが、安藤さんは即座に否定して、座ったまま手を伸ばし、真田さんのスカートを跳ね上げた。


「あんちゃんっ!」

「わっ!なにを!?」 


 真田さんのスカートが捲れ上がって、黒いパンツが見える。


「生パンじゃなくてショートスパッツだろ。

 今どきの高校生が、これ見てビビるか?

 どう思う、柴田ぁ~?」

「まぁ・・・ガン見はしないが、慌てて目を逸らすほどでもないな」

「え?すぱっつ??」

「ローティーンもローティーンだ。

 生パンじゃねーのに、何で急に恥じらうんだよ?」

「いきなり源が動揺したから、つられて焦っちゃって・・・」

「・・・・・で、慌てて足を閉じて、源にニードロップを喰らわせたってか。

 ぎゃ~~~~っはっはっはっはっはっは!」

「話が堂々巡りしてるぞ、安藤」

「おもしれーから、堂々巡りでいいんだ。

 夜、また今の話を聞かせろよな」


 今はまだ昼過ぎ。薬草集めの依頼はキャンセルしたけど、安藤さんの仕事は残っている。


「源の看病してた所為で仕事が熟せてねー!

 真田ローティーン、手伝え!」

「あたしは、もうすぐ17歳!

 安藤あんちゃんは話を聞いて笑ってただけじゃん」

「柴田は馬糞掃除な!」

「何故、俺が!?」

「オマエ、鬼だな。死にかけた源にやらせる気か?」

「安藤の仕事だろ?自分でやるって発想は?」

「無いっ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 


 今日の僕達の稼ぎはゼロ。安藤さんに養ってもらう立場で文句は言いにくい。馬糞掃除は、僕と柴田くんでやることにした。



 安藤さん1人分の仕事を4人がかりでやったので、夕食時の給仕以外の仕事は直ぐに終わった。僕と柴田くんは、安藤さんにお願いしてお金をもらい、モンスターの本を探しに行くことにした。


「ゲームの攻略本みたいな感じかな?」

「攻略本?・・・僕は動物図鑑みたいなのを想像してた。

 ・・・てか、この世界に本屋ってあるのかな?」

「本屋くらいあるだろ」


 本屋はあった。でも、活版印刷の動物図鑑はあったけど、モンスター図鑑は無かった。そのあと、道具屋や雑貨屋にも行ってみたけど、欲しい本は無かった。


「そもそも、当然のように見てるけど、薬草図鑑はどうやって手に入れたの?」

「あれは、宿屋の主から借りてるんだ。

 泊まってた冒険者が『もう要らなくなった』と言って置いていったらしい」

「・・・へぇ~。なら、もしかしたらモンスター図鑑のあるんじゃない?」

「聞いてみよう」


 モンスター図鑑は、宿のオーナーの手元にあった。外地に旅立った冒険者が「もう内地のモンスター情報は要らない」と言って置いていったらしい。


「灯台もと暗し・・・時間の無駄だったな」

「全く無意味ってわけでもないよ」


 今日のウィンドウショッピング(?)で、ちょっと疑問に感じたことがあった。夜、みんなが集まったら説明して、みんなの意見も聞いてみたい。



 夕食を終え、僕と柴田くんと綿本さんは僕達の部屋で待つ。

 しばらくしたら、真田さんが入ってきた。綿本さんと会うなり「わた~!」「さり~!」と名を呼び合って、再会を喜んでハイタッチをして、綿本さんの隣(僕のベッド)に座った。


真田さり、なんでそんな服着てんの?」


 真田さんが着ているのは、僕や柴田くんが着ているのと同じ、質素なローブとゆったりしたズボン。まだチョッピリ幼児体型なので、一見すると男の子に見えてしまう(ちゃんと見ると美少女って解るけど)。


安藤あんちゃんのドレス借りたけどサイズ合わなかったし(身長差15㎝)、

 動きにくくて嫌だったから、あたし用を買ってもらったの」

「でもそれ、男物でしょ?」

「ジェンダーレスの時代に、それ言っちゃう?

 源はどう思う?あたしに似合ってるでしょ?」

「う、うん・・・まぁ・・・」

「この世界に、ジェンダーレスという言葉は無いと思うのだがな」


 続けて安藤さんが入って来て、椅子に腰を降ろした。


「服はおごってやったわけじゃない。働いて返してもらうからな」

「安藤さんのお金じゃなくて、みんなで貯めてるお金じゃん。

 自分の物みたいに言わないでよ」


 途端に、それまでテンションが上がっていた綿本さんが、そっぽを向いて小声で文句を言う。


「あ゛ぁ゛!?言いたいことあんなら、ハッキリと言え」


 ヤバい、この2人、まだ仲が悪いままだ。誰も仲裁していないんだから当たり前なんだろうけど・・・。


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