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5-3・木の上の真田さん

 僕達が滞在するペイイスの村の南東にある森。僕は力石先生を失い、今川くん達の亡骸に遭遇した場所。柴田くんは今川くん達を見捨てた場所。小川を遡れば“あの小屋”がある。今川くん達の所持品は、きっとあのまま放置されている。

 嫌なことを沢山思い出しちゃうから、この森に来たくなかった。だけど、今日はここにしか、僕達のできる仕事が無い。


「行こう、源」


 この世界に「黙祷という行為」が有るのかは解らない。でも僕と柴田くんは、森の前で黙祷をしてから、指定された薬草探しを開始する。


「うん」


 柴田くんが小川の方向を避けているのが解る。僕も同じ気持ち。


「ぶっひゃっひゃっひゃ!」


 変な鳴き声がした。視線を向けたら、武器を持って、裸に汚い腰布を巻いた二足歩行の豚5人が襲いかかってくるのが見えた!


「えっ?人?豚?モンスター?」

「解らんが、とりあえず友好的ではないことは確実だ!」


 この遭遇で「村の外では黙祷なんてしてちゃいけません」ってのがよく解った。モンスターの生息域で、索敵を怠って感傷に浸るなんて、初級冒険者すらやらないミスなのだ。

 鈍足だし、裸だし、武器も見窄らしいので、「多分、弱い」と判断して戦った!いつも通りに僕がシールドに身を隠しながら、先生の剣を振り回して突っ込む!


「ぶひひぃっ!」


 僕のへっぴり腰な剣さばきだけで、3匹の豚人間が弾き飛ばされた!


「コイツ等、メッチャ弱い!

 柴田くん、お願いっ!」


 豚人間が怯んだところで、柴田くんが特殊能力で加速して突っ込んで、豚人間達を叩き切る!


 スッゲー弱かった。楽勝だった。楽勝すぎて、弱い者いじめみたいな気がして、ちょっと可哀想だった。


「攻めてこなければ良かったのにね」

「・・だよな

 コイツ等、なんで俺達を“コイツ等以下”って判断したんだろう?」


 装備品も見窄らしいのばっかりで強盗するアイテムも無し。


「焼いて食ったら豚肉の味すんのかな?」

「えぇっ?食べる気なの?」

「食う気は無い。ちょっと疑問に思っただけだ」

「食肉になるなら、食堂や肉屋の依頼で『狩ってこい』ってのがあるんじゃない?

 そんな依頼が無いってことは、食べる人がいないってことだよね」

「なるほど、一理あるな」

「なんて名前のモンスターなんだろ?

 ・・・てか、モンスターだったのかな?豚に似たただの人間?」

「解らん」

「安藤さんにお願いして、植物の本だけじゃなくて、

 モンスターの本を買ってもらおうよ」

「そんな本が有るのか解らんが、探してみよう」


 まだ、1枚も薬草を集めていない。本を見ながら指定された薬草を探す。


「お~~~~いっ!」


 また変な鳴き声がした。二足歩行の豚の仲間?剣を構えて警戒をしながら、声のした方向を睨み付ける!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 大木の枝の上で、僕達より少し年下っぽい女の子・・・じゃなかった、同い年だけど童顔で中学生に見える真田さんが、枝葉の間から顔を覗かせて手を振っている。変な鳴き声じゃなくて、真田さんが僕達を呼ぶ声だった。


「お~~~~いっ!」


 僕達は木の根元に駆け寄っていって、3mくらい上の枝に跨がってる真田さんを見上げる。元気そうな顔をしてるので安心をした。


「オマエ・・・そんなところで何やってんだ?」


 先ずは柴田くんが質問をする。


「見て解んないの?木に登ってるの」

「それは見れば解る。『なんで木に登ってるのか』と聞いてるんだ」

「あたしが聞きたいくらいだよ~!

 隕石が飛んできて吹っ飛ばされたと思ったら、

 いきなり訳のわかんないところにいて、変な怪物がいっぱいいて、

 洞窟の中に隠れて2日間過ごしたんだけど、食料と水が無くなっちゃって、

 仕方なく洞窟の外に出たら、豚顔で裸の変質者達に追い回されて、

 怖いから木に登って隠れてたら源達を発見して・・・・・」


 僕は、モンスターに追い回されて、木に登ろうとして失敗した。真田さんの方が木登りが上手いらしい。


「あ・・・あの、真田さん・・・木を降りてから話そうよ」

「豚顔の変質者なら、俺達が倒したぞ。多分、同一人物(?)だ」

「へぇ、凄いじゃん!」


 豚人間が僕達を「自分たちより弱い」と判断して襲ってきた理由が解った。ビビって逃げ回った真田さんと同レベルって判断したからだ。


「こ~ゆ~のって、胸の大きい美少女がモンスターに追われていて、

 偶然通りかかった俺達が格好良く助けるってのが普通のパターンだよな?

 なんで、『たまたまモンスターを倒した』ついで扱いで真田が付いてくるんだ?

 一個も“お約束”と合っていないぞ」

「・・・お約束?」


 柴田くんが言ったことのうち、「偶然通りかかってモンスターに追われてる人を助ける」のが「パターン」ってのは特撮ヒーローとかで見たことあるから何となく解る。

 だけど、なんで「胸の大きい美少女」限定?「胸の小さい人」や「男子」は助ける価値が無いってこと?それとも「胸の大きい美少女」以外は襲われないの?


「じゃ、飛び降りるから受け止めてね、源っ!」

「はぁ?」

「夢中になって木に登ったから、降り方が解んないの」


 真田さんがマゴマゴと降りるのを待ってて、モンスターに発見されるのは拙い。僕は真田さんの真下に行って、とりあえず「僕の胸に飛び込んでこい」みたいな感じに、真田さんに向かって両手を広げた。この対応が正しいのか間違ってるのかは解らない。


「いいよぉ~!」

「いくよっ!それっ!」


 真田さんが枝から飛び降りて、制服のスカートがなびく!真田さんは、この世界の服に着替えた僕達とは違って、ブレザー姿のままだ!

 その瞬間、僕は思い出した!リターンで現実世界に戻った時、仮死状態の真田さんのスカートが捲れ上がって、黒いパンツが丸見えになっていたことを!

 このままでは、黒いパンツが丸出しになった真田さんのお尻が、僕の目の前に落ちてくる!


「真田さんっ!パンツっっ!!」

「えっ!?きゃっ!!」


 僕は慌てて俯いて目を閉じた!


「源っ!死ぬ気かっっ!!」


 柴田くんの叫び声が聞こえた次の瞬間!


「うぐぅっっ!!」


 僕の脳天に「頭蓋骨が割れて、首の骨が折れたんじゃね?」ってくらいの衝撃が突き刺さり、目の前が真っ暗になる!


 あとで聞いた話だけど、僕の頂頭部と真田さんの膝がぶつかって、僕は意識を失い、柴田くんに背負われて村まで戻ってきたらしい。

 この世界での僕の初ダメージは、真田さんの膝蹴りってことになりました。


 真田早璃さなだ さり。出席番号11番。陸上部(長距離)に所属。校内マラソン大会では1年次から女子の部でトップ。容姿はクラス内トップ3の一角。ただし、背が低く、やや幼児体型で、女子力は低め。学業成績は全般的に優秀だが、数学だけは源尊人(主人公)に劣る。



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