3-5・魔法剣
ブラークには「主人公が越えるべき恩人」の役割を充てたい。
「トロールだ」
僕が持っていた「トロール」のイメージと全然違う。映画で見た「トロール」は、もっと可愛かった。智人がオンラインゲームを見せてもらった時、あんな姿のモンスターを乱獲してた。でも、名前は知らない。僕のキャラは遭遇したことが無い。
「見た目は怖くて走るのが趣味だけど、実はおとなしい・・・とか?」
「内地では最強クラスのモンスターだ。
馬を狙って寄って来たのだろう」
「食べるため・・・ですか?」
「それ以外に理由は無い。
しばらく馬を預けるぞ」
ブラークさんは馬から軽やかに飛び降りた。
「・・・え?あのっ!」
馬が狙われてるから守れってこと?ブラークさんがモンスターを引きつけてる間に、乗って安全圏まで逃げるってこと?馬に触るのも初めてなので、どうすれば良いのか解らない。
「忠実な馬だ。手綱を持ってジッとしていれば暴れることは無い」
「はいっ!」
慌てて、言われた通りに手綱を握る。
「諸侯の勧誘を退けるなら、これくらいの力は必要になる!」
ブラークさんが、腰に帯刀した細身の剣を抜いて構えた!迫り来るトロールが、僕と同じ大きさくらいの棍棒を振り上げる!
「グオォォッッ!!」
トロールが棍棒を振り下ろすが、ブラークさんは楽々と回避!空振りをした棍棒が地面を抉る!人間が直撃を喰らったら、一発で原型が無くなるような破壊力だ!
「マジックソード・炎!」
ブラークさんの剣の刃が燃えたように見えた!次の瞬間には、ゾウと同じくらい太そうなトロールが、燃えながら真っ二つにされて転がる!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今、ブラークさんは何をした?「マジックソード・炎」と叫んだ以外は、一瞬すぎて「どう強いのか?」すら解らなかった。叫ぶだけでモンスターが自動的に燃えて切れるってことはないから、ブラークさんが僕には見えない早さで切って燃やしたんだよね?
トロールって、本当にこの辺で一番強いモンスターなの?見た目は怖いけど「メチャクチャ弱いモンスターなんじゃね?」とすら思えてしまう。
「これが騎士の戦闘力だ」
ブラークさんが腰に下げた鞘に剣を納刀する。
「あ・・・あの・・・熱くないんですか?」
「ん?」
「剣、燃えてましたよね?剣を直ぐに鞘に入れて大丈夫ですか?」
戦い方については、「凄い」以外のことが解らなすぎて、何がどう解らないのも解らないので、こんな質問しかできない。
「剣を燃やしたわけではない。剣の周りに魔力の炎を召喚したのだ」
「魔法・・・ですか」
「オマエの剣を貸してみろ」
言われるまま、背中に縛り付けた先生の剣を鞘から抜いた。こ~ゆ~のって、ハサミや包丁を渡す時と同じように、刃を自分の方に向けて渡すんだろうか。刃で手が切れそうで怖いんだけど、恐る恐る持ち替えて、両手の平で真剣白刃取りっぽく刃の平たい部分を挟んで、柄の方をブラークさんに向けて渡す。
「普通に渡せば良い」
「ごめんなさい。普通の渡し方が解りません」
ブラークさんは苦笑いをしながら先生の剣を受け取る。渡した後で気付いたんだけど、剣の渡し方云々以前に、目上の人に対して、馬に乗ったまま物を渡すことの方が失礼だったかな?
ブラークさんは片手で持って刀身を眺め、空中で軽く一振りした。素早い切落が風音を鳴らす。
「重すぎず、軽すぎず・・・初心者でも扱いやすい剣だ。ミコトが選んだのか?」
「いえ、先生の形見です」
ブラークさんが、剣を水平にして、切っ先を5mくらい離れた大木に向けて構える。
「マジックソード・旋!」
火の時とは違って、剣の周りには何も無い。だけど、空中に剣を突き出した途端に、5m離れた大木の葉が渦を巻いて吹き飛ばされた。
「凄い・・・今のも魔法ですか?」
「俺の剣は魔力精製をされた剣ゆえに、魔法干渉で高い攻撃力を発揮するが、
普通の剣でもこの程度は可能だ」
「・・・ああ、なるほど」
結局は意味が解らない。今ので「普通」とか「この程度」なら、僕は普通以下ってことなんだろうけど、とりあえずブラークさんが凄いってことだけは解った。あと、騎士と喧嘩しちゃダメってことは解った。
「市販品だが悪い剣ではない・・・大事に使えよ」
柄の鍔付近を持って、刃を自分側に向けて返してくれたので、柄の頭柄を握って受け取る。
「さぁ、行くぞ」
「はい」
ブラークさんが馬に跨がり(僕は乗ったまま)、黒焦げになったトロールの脇を通過して先に進む。
しばらくしたら、小川脇の小道から、比較的広い平坦な道に出た。
「此処が街道だ。直に村に着く」
促され、半身を横に出して進行方向を見る。5㎞くらい先かな?高い柵に囲まれた広くて大きな人工物が見える。
出席番号2番【今川勇】・・・脱落
出席番号9番【毛馬内景子】・・・脱落
隣のクラス【鰐淵鰐太郞】・・・脱落




