表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/32

智人-1・転移~俺の求めた世界

 第0話でメインを務める徳川智人は主人公ではありません。

 このジャンルは初挑戦なので、慣れないなりに「あるある」っぽい展開をイメージしてベースにしながら、「異世界をすんなりと受け入れられるキャラの視点」で、世界観の説明をするストーリーになるように心掛けました。

 俺は真っ暗な空間に浮かんでいた。


「俺・・・死んだのかな?」


 授業中に窓の外を眺めたら、教室全体を潰すくらいの大きな隕石が突っ込んできた。そこまでの記憶しか無いってことは、隕石の直撃を喰らって死んだんだろうな。


「まぁ・・・いいか。

 どうせ、たいして面白くもない毎日を送っていただけだし・・・」


 中学時代の俺は「陰キャ」ってヤツだった。それが嫌で、高校に入学をしてから存在感を発揮するように頑張った。おかげで1年生の1学期~2学期は周りからはチヤホヤされた。だけど、3学期になると上手く行かなくなって・・・2年生でクラス替えをしてからは、スクールカーストの頂点に立つ為に、もう一度、頑張るつもりだった。だけど、腕っ節の強い嫌な奴と同じクラスに成ってしまった。奴は1年生の時に、俺をスクールカーストの底辺に突き落とした張本人だ。

 奴さえいなければ、俺はもっと評価されたはず。環境が悪かったせいで、俺の高校デビューは失敗に終わった。奴の影響で、クラス内の9割が俺を見下していた。

 だから、「学校が爆発して、みんな居なくなればいいのにな」「俺を底辺に貶めた奴等、死んでくんないかな」と思ったこともあった。・・・だけどさ、まさか俺ごと死ぬとは思ってなかった。


「・・・ん?」


 背後から光に照らされたので振り返る。


〈ボクにアクセスしたのはキミだね〉


 声は光から発せられていた。


「アクセス?なんのことだ?」

〈キミは我がメッセージに応じてくれたんだ〉


 そう言えば、昨日、オンラインゲームをやってる途中で、妙なメッセージが入った。


「あのメッセージが?」


 ちょっと薄気味悪いと思ったけど、所詮はゲームだから気楽に考えてメッセージの要求に応えた。


「まさか、俺が記した奴等は・・・?

〈全員がキミと同じ状況になっている。

 記されていない数名が道連れになったが、それは誤差の範囲内〉

「・・・マジかよ?」

〈ただし、キミと他の連中には、大きな違いがある。

 今からキミ達全員が転移する世界は、キミには優しい世界だ〉


 現代とは違う世界=【モーソーワールド】に転移をする。

 モーソーワールドは、中世ヨーロッパに似ている。

 言葉と文字は通訳された状態で脳が認識をする。

 モーソーワールドは、モンスターが存在する剣と魔法の世界。

 学べば剣や魔法を使えるようになるが、転移をした時点では熟練度はゼロ。幼少時から剣や魔法が身近にあったモーソーワールドの住人には適わないので、代わりに特殊能力=【富醒フセイ】を与えられる。


「転生ではなく転移?」

〈今現在、キミ達は死んだのではなく仮死状態に成っている。

 現実世界リアルワールドに戻ることも可能だ〉


 同時期に転移をした者は誤差を含めて【計51人】。全員が3日分の生命力をBETする。

 リアルワールドに戻る場合は、同時に転移をした者のうち、生き残っている全員の多数決により「帰りたい」が多数派になる必要がある。

 モーソーワールドで死んだ者は、多数決を棄権した扱いになる。

 同時期転移者の残数が4割以下以下になった時点で、多数決の多数派意見ではなく、全員の意見一致が必要になる。

 多数決の状況は「オープン」と叫べば把握できる。ただし、転移者全員ではなく、転移者のうちモーソーワールドで出会えた数値のみ。


「モーソーワールドで死んだらどうなる?

 リアルワールドでの仮死状態の維持は変わらないのか?」

〈仮死には変わりないが“静かに眠るような仮死”ではなく“瀕死”になる〉


 モーソーワールドで200日が経過した時点で、リアルワールドで停止をしていた時間が動き出す。その時点で、モーソーワールドで脱落した者は、帰還する権利を失う(瀕死者の死が決定する)。


 転移の時間と場所には誤差がある。つまり、全員が同じ場所からスタートするわけではない。

 誤差として転移に巻き込まれた者達は、一定の優遇措置として、「○○に会いたい」という思いが転移場所に反映される。


〈リスクに巻き込む代わりに、相応の報酬は用意する〉


 多数決によるリアルワールドへの帰還を果たした場合、多数派の意見を纏めてた代表者は、1つ願いを叶えられる。知能、運動神経、金、容姿、権力、どんな願いでも可能。ただし、リアルワールドの常識の範囲内。つまり、「大統領になりたい」という願いは叶えられるが、「世界を征服する」という世界常識を覆す願いは叶えられない。


「多数決で願いか・・・。

 それも悪くないけど、帰還を望むかどうかは、

 モーソーワールドってところの居心地を体験してから決めるよ。

 ところで、転移時にもらえられる特殊才能・・・富醒フセイだっけ?

 それは、魔法を使えるとか、剣の一振りで山を割るとか、そ~ゆ~ヤツか?」

〈転移者それぞれ、その性格や才能に適合した富醒フセイを持つ。

 キミの富醒フセイは、想像を攻撃力に変える【イメージ】だ〉


 特殊才能・富醒は熟練度が上げるほど高い効果を発揮できるようになる。


「モンスターと戦ってレベルアップすれば強くなるって感じか?」

〈熟練度は熟練度だ。数値で表現をする概念は無い〉

「レベルの数値化が無いなら、どうやって自分の強さが解るんだ?

 まぁ、いいや。モーソーワールドに行って色々試してみれば解るか」

〈一通りの説明は終わった。さぁ、行きたまえ。

 キミが降り立つのは、帝都テーレベールと西の都市・セイの中間、

 西の宿場町・ミドオチスの西側だ。

 日の出と日没、方角の概念はキミの常識で解釈して良い〉

「えっ!?町に送ってくれるんじゃないのか?」

〈住人達の目の前に、急にキミが出現したら、皆驚いてしまうだろう?〉


 背後に光が注してきた。振り返ると、真っ暗な空間に穴が空いて、その先には鬱蒼とした木々が見える。


「あの・・・君はいったい?何の為にこんな・・・」


 それなりに状況は把握できたが、この世界を用意した奴が何者なのか知らないままだ。振り返って声を発する光を見たが、もうその場に彼はいなかった。

 背後から景色のある空間が迫り、真っ暗闇を消し去って、俺は森の中に立っていた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 周囲を見廻す。どっちを向いても樹木しか無い。一応、幅4~5m土の一本道はあって、それが人工物ってことは解る。


「ここを歩いて行けば、町に行けるのかな?」


 格好は学校のブレザー姿のまま。声は「帝都テーレベール」とか「西の都市・セイ」などと、人が住む場所の存在を示していたが、城や町はどこにも見えない。本当にモーソーワールドって異世界なのだろうか?「日本の何処かの樹海に置き去りにされただけじゃね?」と疑いたくなる。


「とりあえず、東に行けば宿場と帝都・・・西に行けば町が在るってことか?」


 声の主からのプレゼントだろうか?足元には「如何にも初期装備」って感じの鞘に収められた質素な剣と、食料の入った袋が置いてある。


「やれやれ・・・『ここからは自力で何とかしろ』ってか」


 この世界の状況を確認するなら、帝都に向かうべきだろうか?お約束の冒険者ギルドがあって、冒険者が集まってるのだろうか?剣と食料袋を持って一歩目を踏み出そうとして、重要なことに気付く。


「あれ?・・・東ってどっちだ?」


 空は明るいが、木々が邪魔で陽が何処にあるのか解らない。仮に陽が見えたとしても、今が何時なのかも解らないので、陽の位置から方角を推測することもできない。もう少し詳しく聞いておくべきだった。


「さっきので全部説明したつもりかよ?

 神かゲームマスターかは知らないけど、随分といい加減だな」


 食料袋にコンパスは入ってないのだろうか?中を確認したら、八つ折りになったA2サイズの紙があった。開いたら地図が表示されて、一点が点滅している。


「魔法の地図・・・か?」


 この世界がどの程度の大きさなのか解らないけど、仮に日本と同じ大きさだったとして、A2サイズの日本地図を見て「最寄りの町が何処に在るか?」を確認するなんて不可能だ。困惑しながら点滅を触れたら、その付近が拡大される。


「すげえ!これ、ただの印刷物と違うっ!魔法の地図だっ!」


 点滅は現在地。拡大された地図を開きながら土の道を100歩くらい歩いたら、点滅が移動した。地図上でピンチインをしたら地図が広域になって、歩いた方向に帝都テーレベールが在ることを確認する。・・・とは言え、100歩進んだ程度では地図上の距離が全く縮まっていない。


「2~3時間歩いたくらいじゃ着かないぞ。

 使えない神だな。ムカ付く。

 もう少し、町が近いところからスタートさせるか、自転車くらい支給しろよ」


 適当に地図のピンチイン&ピンチアウトやスワイプをしていたら、近くに小さな村があることが解った。西宿場だろうか?


「行ってみるか」


 ここで突っ立っていても何も始まらない。とりあえず、帝都テーレベール方向にある小さな村に歩くことにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ